NEXT96
37/64
ンをやってみたいという人と彼らをマッチングしたんです」 だが、これがうまくいかなかった。参加者は一度トライしても継続しない。教える側も指導する技術がない。スポーツビジネスの難しさを知った。そんななか、某企業のトップから「出資するからクラブを立ち上げないか」と声がかかった。普通なら願ってもない話だが、「人のお金で始めるのは嫌だったんです。やるなら自分の力でやりたい。だけど、銀行は相手にしてくれないから、仕方なく父に頭を下げて実家を担保に2,000万円借り入れました」 広告代理店に勤めていた時から、西麻布に目をつけていた外国人向けの一軒家があった。偶然、レントの状態だったので、早々に契約。「開業メンバーは自分と、以前、都内のトレーニングジムにいたときの後輩だけ。やれることを精一杯やってみようという気持ちでした」 開業予定は2011年春。東日本大震災の影響により、シッピングが遅れたが、なんとか4月にプレオープン。クチコミや紹介により、たちまち会員数が増大し、翌年10月、現在地へ拡大移転を決めた。「この世界で成功しなかったら、もう自分は何もできない。本気でそう思いました。だから実家を担保に入れても大丈夫だと思ったんです」 デポールターレクラブのコンセプトは明解だ。One Client, One Trainer, Perfect Approach, Perfect Goal. クライアント一人ひとりに最適なトレーニングを提供し、完全に目標を達成する。そこに、1つとして同じアプローチは存在しない。「トレーニングメソッドを教えてといわれるんですが、そんなもの、ないんです。目の前のクライアントに最適なアプローチを、いつも全力で考える。だから確実に効果が出るし、会員様の継続につながるんです」 現在、会員数は200名。これ以上増やすと、一人ひとりに目が行き届かなくなるため、基本的に新規募集はしていない。月間の客単価は4万5,000円〜5万円。会員の過半数が企業経営者であり、スポーツ選手、芸能人、著名人など、錚々たるメンバーが名を連ねる。「大事なのは、“いいお客様”をつくること」と、竹下さんは話す。「トップアスリートは、トレーニングの内容に対して、よい意味でうるさいですよ(笑)これはどんな意味があるのかと逐一、聞いてきます」 だが、それに答えるのも当然仕事。むしろ、どんな質問にも答えられなければ意味がない。良いレストランが、舌の肥えた客に鍛えられるように、良いクラブは、厳しい客に磨かれるのだ。「トレーナーは、クライアントがどんなトレーニングをして、どんな食事を続けたら、何ヶ月後には身体がどう変わっているか、正しくイメージできなければいけません。そういう想像力を養うには、自身のなかにデータベースを蓄積することが大切。毎週1回、全会員をスクリーニングするのですが、それもデータベースの蓄積に役立っているのではと思います」 竹下さんが決めているのは、多店舗展開しないということ。1ヵ所に精鋭部隊が集まっていたほうが絶対に良い。その一方で、スタッフにはいつも、「トレーナーで終わるな、社長になれ」と言っている。「会員数の上限が200だから、多店舗展開しない限り、給料も頭打ちになる。それなら企業内起業でビジネスを立ち上げ、そのオーナーになるしかない。黒字化したらスピンアウトすればいいんです」 現在、スタッフは8名だが、開業以来、一人も退職していない。竹下さんのもとで学ぶべきものをがっつり学び、やがて独立してみせる。スタッフから、そんな意思と野望がうかがえる。 2014年6月、広尾にヨガスタジオ「デポルターレヨガ」をオープンした。科学をベースに体を変えることを目的としたヨガは、坐禅や歌舞伎、相撲、空手などの要素を取り入れたオリジナルプログラム。最新のホットナノミストと竹のフローリングで最高の環境を用意する。「デポルターレクラブとデポルターレヨガでは、動と静、西洋と東洋、最新と伝統というように、まったく性質が異なります。僕は、その真ん中に健康があると思うんですよ。ハイブリッドであることが、心身どちらにも、大切なことだと思うんです」 僕自身、中庸が大事だと思っているんです、と竹下さんは付け足した。ものすごい勢いで業界での成功をおさめ、常にトップを激走してきた竹下さんが、「中庸」をキーにすることに一瞬驚く。だがそれは、彼の暮らしを知れば納得だ。働く場所としての東京と、住む場所としての茅ヶ崎。二つを長く往来してきた彼だからこそ、中庸の大切さを知っているのだ。「これから始めたいのは、食のこと。食糧自給率や食の安全などの問題が注目されていますが、生活全体で健康を考えていくには、食は欠かせない問題。周りに自然とそんな情報が集まってきて、そろそろ機が熟してきたなと思っています」 感覚に対して忠実に、おもしろそうなことやワクワクすることには積極的に取り組んでいく。そして、湘南の海を走って、アイデアを温める。「たぶん、東京に埋もれていたらアイデアは浮かばないでしょうね」と、笑う竹下さん。その目には、すでに一歩先のフィットネスが見えている。03「中庸」を大事にするバランスの良さDeportare Clubデポルターレクラブクラブ名の「デポルターレ」とは、スポーツの語源となった「解放」という意味を持つラテン語。社会から離れ、改めて自分を見つめる時間を持つことにより、心、体、栄養のバランスを整えていくことを目指すProduct02良いお客様が良いクラブをつくる所在地 〒106-0031 東京都港区西麻布3-17-34 Deportare Buildingwebサイト http://www.deportareclub.com設立 2009年6月組織 8名(ヨガスタジオ含め12名)収支構造 【売上】パーソナルトレーニングジムの経営、コンサルタント、 健康・スポーツ関連商品のプロデュース、イベント、物販 【経費】人件費、家賃、外注費、減価償却費「ここへ通うことがステイタスとなるクラブにしたい」と竹下さんMarch,2015 www.fitnessjob.jp37Organization Data株式会社ポジティブ
元のページ