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院の経営も上向きになったんです」 やがて、管理職に昇進。ボーナスも出て、経済的にも安定した。だが、そんな順調な生活もあまり長くは続かなかった。院内の人間関係にストレスを感じるようになったのだ。和を乱す人と、それに振り回される人達。愚痴を言うヒマはない、自分はベストを尽くすだけだと思っても、どうしても引きずられることも少なくなかった。不安定な環境は、人の心にも影響する。やがて山村さんも、心がどんどん元気を無くしていくのを感じた。「患者さんの前では元気でいなければならない。でも、陰ではグッタリと疲れている。このままではダメだ、何のために仕事をしているのかわからなくなる。そう思い、4年目に退職を決意。27歳のことでした」 頭にあったのは、ビジネスを起こすこと。そのとき、考えの基軸になったのが、「どんなビジネスをするか」ではなく、「どんなふうに生きるか」ということだ。「素晴らしい理念を掲げ、価値ある仕事をしても、自分が心身ともに健康でなければ目的を達成することはできない。僕にできるのは、運動を通じた健康づくりを広めること。誰もが心身共に健康で幸せな人生を手にできるよう、お手伝いをすること。そんな想いで起業を決めたんです」 2009年、故郷の山口県下関市に株式会社グローバルヘルスプロモーションを設立。当初は健康教室や介護予防教室の開催、パーソナルトレーナーや各種講師の派遣サービスなどを中心に展開した。「地元にコネはありませんし、すべてが手探りの状態。チラシを作り、草の根的に広報活動を行いました。反響はゆっくりと、でも、確実に大きくなり、1年後にはパーソナルトレーナーや講師の派遣依頼が引きも切らない状態になったんです」 3年後には市内の歴史あるエリアにジムを出店。ますますビジネスは順調に進むかに見えた。しかし…。「由緒正しい町というだけあって、良くも悪くも保守的な土地柄だったんです。徐々に評判も上がってきたけれど、目標の会員数にはほど遠く、スタート時は10人弱。税理士さんに『このままだと、2ヵ月後には倒産します』と宣言されたほどでした」 しかし、ここでも山村さんはガッツと情熱の人。とにかく、目の前のお客さまに自分が信じることを提供し続けるしかないと、誠心誠意、心をこめて指導した。そんな熱意が認められ、少しずつ会員数も増加。倒産するどころか、会員数は順調に伸び、翌年には2店舗目、さらに二年後には3店舗目を出店した。「経営がうまくいっていなかったとき、怖かったのはお金が無くなることよりも、自分が拠り所としていた信念さえも、お金の力によって荒んでしまうことでした。私にとって、志がなければビジネス自体が根底から揺らいでしまう。そういう意味で、お金の大切さを思い知ったんです」 かつて、専門学校を卒業して就職した会社でも、経営難により給料が激減、転職を余儀なくされた。その後に務めた病院では、金銭的な余裕はできても、働く環境の悪化によって仕事への意欲や志が薄れ、心が健康でなくなった。金銭的な安定と、仕事への志。どちらが欠けてもビジネスはうまくいかないのだ。 「現在、会社のスタッフは11名。いつも自分が彼らの見本になれるように意識していますね。誰にだって、エゴはある。仕事に対する考え方だって、モチベーションだって違います。でも、共通の理念として『健康づくりを通じて人を幸せにする』という考えを持っていれば、チームとして、最高のパフォーマンスを発揮できるのではと思うんです」 起業して5年。ストレスが無いわけではないし、困難にぶつかることだってある。だが、そんなときでも自分を認め、受け入れ、肯定する。そうすることで志が折れたり、働く目的がぶれたりすることもなくなるという。「まずは、自分自身が心身ともに健康であること。同じように、家族やスタッフの健康も、自分ごととして考える。そんなふうに企業、社会、国家、地球と、少しずつ規模を拡大しながら、あらゆる人の健康づくりに貢献する。これが私達の使命。そうした想いを込めて、『グローバルヘルスプロモーション』と名付けたんです」 下関で展開するひとつのクラブが、そんな大それた使命を掲げていることに、不思議な感じを抱く人もいるかもしれない。だが、その理由は山村さんが育った環境を聞けば納得する。「父は社会福祉の仕事に従事し、母は保育士でした。家は本当に貧しかった(笑)。おやつはいつも小麦粉をこねて丸めたようなものとか、母の手作り。でも、狭い我が家に世界中からいろいろな人がホームステイに来たんです。お金はなくても、両親は精一杯のもてなしを考えた。国境も貧富の差も飛び越えて、誰もが健康を享受し、笑顔でいられる生活こそ価値があるということを、子供心に知ったんです。そんな環境で育ったことが、今に活きているのかもしれませんね」 現在、32歳。近々、新たな健康教育プログラムを開発し、広く社会に展開していく予定だと言う。「信念に反することはやらないし、誰にでも好かれようと思っていない。その代わり、志を同じくする人や、ご縁があってつながりを持てた人との関係は大事にしたい。そうやって頑張ることが、両親や先祖への恩返しになると思いますし、子ども達への責任でもあるのかなと思っています」03社名の「グローバル」に込めた熱い想いフィットネススタジオサンテココアクラブ名は、「サンテ=健康」「コ=共に」「コア=軸・中心」のフランス語や英語を組み合わせたもの。美しく体を引き締める「コア・コンディショニングベーシック」や、ビジネスパーソン向けに仕事でバテない体づくりを指導する「ビジネスボディ」などのコースを展開Product02健康づくりを通してしあわせな人生に貢献所在地 〒752-0998 山口県下関市長府浜浦西町8-18 tel.083-242-9121webサイト http://www.grobal-hp.co.jp設立 2009年4月組織 11名収支構造 【売上】トレーニング、セミナー講師など 【経費】人件費、施設運営費などスタジオ指導風景January,2015 www.fitnessjob.jp33Organization Data株式会社グローバルヘルスプロモーション

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