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をもとにした身体の使い方が変わらなければ、同じ部位を痛める可能性がある。そのため、様々なツールを駆使して、適切な身体の使い方や反応を習得することに重点が置かれている。 楽しいながらも、本質的なトレーニングが提供されている。 ドイツとスイスは、社会の仕組みは違うものの、ともにフィットネスに保険が適用されるようになってきている。 スイスでは、フィットネスクラブの認証機関があり、一定の条件を備えたクラブは、保険適用クラブとして認定される。スイスの国民は保険加入が義務づけられているが、複数の保険会社から選べるようになっている。フィットネスクラブの利用を助成する保険を選び、保険適用クラブに入会して保険会社に申請すれば、年間500~800フラン(約6万円~10万円)の補助が得られる仕組みとなっている。クラブが備えるべき条件の一つに、「営業時間中トレーナーが常駐していること」という項目があり、スイスではトレーナーの常駐が難しい24時間営業クラブは事業ニーズが少ない環境にある。 ドイツでは、スイスのように特定の民間保険に加入することで補助が得られる仕組みに加えて、法定保険でもフィットネス参加が補助される仕組みが活用され始めている。 ドイツでは、法定保険と民間保険から加入する保険を選ぶことができ、民間保険は法定保険に比べて月々支払う保険料が高いものの、リハビリにかかる費用を1時間当たり65ユーロ補助して貰えるものもある。法定保険でのリハビリの補助額は3人の患者への指導で1時間42ユーロとなっており、病院や理学療法士にとっては経営効率が低い。民間施設を付設してサービスを提供する施設では、民間保険加入者に絞ってリハビリサービスを提供する施設も出てきている。 その一方で、ドイツ人の89%が加入しているという法定保険の仕組みを活用して注目されているフィットネスサービスが「リハ・スポーツ」である。 リハ・スポーツは、法定保険制度の条項の中にある、戦後の身障者に対してスポーツ参加を促す条項を、現代の身体に痛みを抱える人向けに転用するように開発された仕組みで、長期的自立的に自己責任で行う運動への参加を促そうとするもの。腰痛などで医師の診断を受けた際に、医師から専用の用紙に処方箋を書いて貰えば、リハ・スポーツ認定トレーナーによるレッスンに自己負担なく50回参加することができる。リハ・スポーツを提供する施設は、その処方箋をもとに法定保険に申請をすることで、患者1人あたり1回4ユーロが保険から支払われる。リハ・スポーツは15人程度のグループレッスンとして提供されることから、施設にとっては1時間60ユーロ(約8,500円)が得られることになる。この仕組みの魅力は、患者が18ヶ月の間に50回通うことができることで、フィットネスサービスの利用に慣れたり、仲間ができることでフィットネス継続のモチベーションが生まれることにある。また、この仕組みを地域に根づかせる段階で、周辺の家庭医たちに運動の価値を啓発することができたり、保険でカバーされるサービスを活用することで病院にも経営的なメリットも提供できることで医師とも良好な関係が築けることになる。 何より生活者にとっては、医師からリハ・スポーツを処方されることで、フィットネスに取り組む必要性を感じやすく、トレーニングの価値も感じやすい。このことは将来民間クラブに通い続けて貰える可能性を高めることに繋がる。 リハ・スポーツの指導者は、ドイツ身障者スポーツ協会の指導者講習会を受け、認定試験に合格すれば、理学療法士などの国家資格がなくても教えられる。民間フィットネス施設でも提供しやすい。ドイツでは、民間クラブがリハ・スポーツを提供するのための運営コンサルティングを専門に行うリハ・ヴィタリスプラス協会があり、ここに加盟することで、施設認可のためのアドバイスや保険請求を代行して貰える。現在380社が加盟している。 ドイツは世界でも日本に次いで高齢化が進んでいることから、介護予防の観点からもリハ・スポーツのサービスは今後注目が高まってくることが予想されている。Trend.12保険が適用されるフィットネスDecember,2014 www.fitnessjob.jp21
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