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欧州(ゲルマン系諸国)のフィットネストレンドFitness Trends in Europe(Germany,Switzerland) ドイツの最大手チェーン「キーザートレーニング」は、マシンジムのみの小規模業態で、黙々とマシントレーニングを行うことが特徴。1966年にスイスのチューリッヒに1号店をオープンして以来、これまでの40年間で、欧州8ヶ国140以上の施設をフランチャイズ展開するほどの支持を得ている。その背景には、入会時はもちろん、クラブ通いを継続している間も、徹底して筋肉や骨の問題を解決するうえでの筋力トレーニングの必要性を科学的根拠に基づいてメンバーに説明することにある。また、オリジナルで開発するマシンは、特に腰痛の原因となる部位の筋肉に的確にアプローチできるようにつくられており、特に痛みを抱えている人に対しては、医師と理学療法士のもとで筋力測定とトレーニングメニューが組まれ、「治療のためのトレーニング」として、高度にパーソナライズされた指導が提供される。 キーザートレーニングのフランチャイジーに、医師や理学療法士などが多いことも、同チェーンの信頼性と成長を支えている。医師や理学療法士にとっては、保険報酬で提供できる患者のリハビリ期間の終了後にも、継続して民間サービスとしてトレーニングが提供できることで、患者の満足度とともに収益も高められるメリットがある。運営システムも非常にシンプルなことから、医師や理学療法士など専門家にとっても経営しやすいこともフランチャイズ展開が進んだ背景にある。 創始者のヴェルナー・キーザー氏は、現在74歳で会長職にあるが、熱心に腰痛に筋力トレーニングがなぜいいのかを説明してくれた。新たに骨盤底筋群の測定器や、足首の筋力強化ができるマシンを開発するなど、その強い情熱は健在だ。「エクササイズ・イズ・メディシン」としてのフィットネス市場を開拓した立役者と言える。 ドイツやスイスでは、運動が治療やリハビリとして処方されることが多いことから、理学療法士も、発想豊かにエクササイズプログラムやトレーニングギアを開発してきている。特に治療やリハビリで運動に取り組もうとする現場では、対象者が痛みを抱えていたり、高齢である場合が多く、運動へのモチベーションが持ちずらい場合が多い。そのため、運動の提供場面では、理学療法がフィットネス指導者以上に、参加者の気持ちに配慮したり、楽しく取り組める工夫を重ねてきている。 ドイツの南部に位置するプフォルツハイムにあるリハ・プラックスのライネルトさんは、そんな理学療法士の一人。これまでに関わった患者さんたちが、少しでも楽しく、無理なく運動に取り組めるようにと、アイデア豊富にトレーニングギアを開発。コンピュータゲームとリハビリを組み合わせたシステムまで開発した。 ここでのエクササイズに共通するのは、身体の機能(動き)を改善するだけでなく、身体の末端の感覚から得た情報を脳が適切に処理して、運動器に適切な信号を与える練習が含まれていることだ。痛めた部分を治療するだけで、身体の感覚やそれドイツを中心に、ゲルマン系の国々では医師や理学療法士をはじめメディカル分野の専門家たちが、エクササイズを含む自然療法に目を向け始めており、そこに新たなフィットネスの市場が生まれつつある。2014年10月に編集部がヘルスケアやメディカルといった分野で先行するドイツ・スイスを視察。現地の最新動向をレポートする。Trend.10「エクササイズ・イズ・メディシン」としてのフィットネスTrend.11楽しいリハビリトレーニング20December,2014 www.fitnessjob.jp
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