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「トレーニングの原点に戻り、地力を鍛える」 伊藤良彦さんが大切にするのは「基本の徹底」。米国と日本で、ストレングスコーチとして学んできたことを融合させながら様々な競技選手を見る中で、究極のパフォーマンスアップを追い求めた末にたどり着いたのは、「いにしえの壁画にも残っているような、トレーニングの原点」だと話す。伊藤良彦さんのファンクショナルトレーニングマーケティング 「オリンピックアスリートは、金メダルを目指して、どんな環境でも、どんな相手でも、どんな体調でも最善を尽くし、その時に出せるベストパフォーマンスを発揮することが求められます。そこで最も大切になるのが、動きの原点。つまり、効率よく効果的に力を発揮できる身体の使い方だったり、どんな方向から身体に負荷が加わっても、軸を失わない力です。JISSで目指すのは選手のパフォーマンスアップと怪我のリスクの減少ですが、そのために最も優先的に獲得すべきは、いろいろな状況において(動いている時でも、止まっている時でも)、適切な姿勢や体位が維持できること。それこそがファンクショナルトレーニングが目指す効率的な動作を実現する基盤になると思います」 伊藤さんは基本的なトレーニングをきっちりと組んでいく。スクワットやデッドリフト、懸垂、ベンチプレス、ショルダープレスといった多関節運動を中心としたベーシックストレングストレーニングに加えて、スナッチ、クリーン、ジャークといったクイックリフトや基本的なジャンプ動作を中心としたプライオメトリクスのトレーニングでパワーを高める。 JISSのハイパフォーマンスジムは、プラットフォームの下に床反力計が埋め込まれ、その周囲に縦横上から同時に撮影できる特殊なカメラが設置されており、そうした機能を通してリアルタイムに動きがモニタリングできる最新設備が備わっている。トレーニング科学に基づいた最新のトレーニングが行える環境だが、伊藤さんは原点を強くすることでこそ、そうした様々な専門的で特異的なトレーニングや、スキル練習が活きていくと考える。 伊藤さんは、今後トップアスリートの世界で研究開発されていることを一般生活者のスポーツやフィットネスにも還元していきたいと考えている。その点でも、JISSのような特別な環境でなくフィットネスクラブやジムでも行えるトレーニングやリアルタイムモニタリングは有効だと感じているという。 「オリンピックアスリートは金メダルという目的が明確なため、基本中の基本のトレーニングにも高いモチベーションで臨めますが、一般生活者の場合、それが退屈と感じられてしまう場合もあります。フィットネスクラブ等で展開されているファンクショナルトレーニングは、パフォーマンスが高まる楽しさを比較的わ2013年4月、国立スポーツ科学センター(JISS)にハイパフォーマンスジムが新設され、スポーツ医科学のエビデンスに基づいたパフォーマンス向上のトレーニングやその研究がより効率よく効果的に行えるようになった。オリンピック選手たちの究極のパフォーマンス発揮を支える現場でのトレーニングについて、JISSハイパフォーマンスジムトレーニング指導員の伊藤良彦氏に訊いた。オリンピックアスリートのファンクショナルトレーニング国立スポーツ科学センター スポーツ科学研究部 専任トレーニング指導員米国オハイオ州立トリド大学教育学部運動科学科卒業。99年同大学大学院教育学部体育学修士課程修了(体育学修士)。2003年同大学大学院ヘルス&ヒューマンサービス学部運動科学修士課程修了(運動科学修士)。トリド大学アシスタントS&Cコーチ、鹿島建設アメリカンフットボール部ヘッドS&Cコーチなどを経て現職。実業団や社会人チームのトレーニング指導経験も豊富に持つ。 NSCA-CSCS、JATI上級トレーニング指導者(JATI-AATI)お話を聞いた方伊藤良彦さんかりやすく伝えられる利点があるように感じていますので、その利点を上手く利用して、基本のトレーニングをその中に上手く取り込み、提供していくことで、トレーニングやフィットネスを継続できる人が増えることを期待しています」July,2014 www.fitnessjob.jp27
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