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June,2014 www.fitnessjob.jp27れていたのだろう。そして、ジムチーフから、「ジェフ、一緒にトレーニングしよう!」と声を掛けて貰うまでに信頼を得て、3ヶ月後にはそのクラブでプレコリオエクササイズのライセンスを取得するよう命じられたという。 「テコンドーをやっていたこともあり、格闘技系のプレコリオプログラムが大好きだったので、トレーナーとしてライセンスを取らせて頂けることは、本当に嬉しかったですね」 その後、ライセンスを取得し実際にレッスンを担当する事になるのだが、当時まだ17才だった彼は向上心の赴くまま、このプログラムのマスタートレーナーに質問をしたという。「どうやったらマスタートレーナーになれるのか」。普通であれば、数年間はオフィシャルトレーナーとして腕を磨く事がプレコリオトレーナーのスキルを高めるセオリーだが、この時回答をしてくれたラディカルフィットネスジャパンマスタートレーナーチームでリーダー的存在の三浦剛マスタートレーナーからは、意外なアドバイスを得たという。 「三浦さんから、『指導スキルを磨くために、エアロビクスの養成コースに行った方が良い』と言われました。それまでエアロビクスを鼻で笑っていたような部分があったので戸惑いましたが、アドバイス通り養成コースに入り、グループエクササイズの基本を学びました」 ここから彼のグループエクササイズインストラクターとしてのキャリアが加速的に前進することになる。今では、プレコリオ以外に、エアロ、ステップ、ZUMBAなどを指導しているが、この1年で仕事の環境が大きく変わったという。現在の拠点は静岡県の浜松受け止めているのだろう。 「初出場で2位に入れたことは本当に嬉しい思いでいっぱいだったのですが、今頃になって悔しさがこみ上げてきています」 西くんの目にぐっと力が入り、続けて話してくれた。 「昨年のルーキーでは緊張し過ぎて、ステージで行ったインストラクションを何も覚えていません。その後DVDを見たのですが、2位に入れるようなレベルではなかったと自分では分析しています。だからこそ今年こそはしっかり準備をして、優勝を取りにいきたいと思っています」 20歳の青年とは思えない力強い言葉であったが、その原動力は何なのだろう。 「数年前に世界を襲ったリーマンショックの影響で、母親、そして二人の兄が職を失ったんです。その時僕は中学3年生だったのですが、父と母が僕の高校進学に必要な費用の工面について話をしているのを偶然聞く事に…。その話を聞いて僕は両親に、『高校には行かず、家族のために働きたい』という話をし、ブラジル、日本でここまで育ててくれた家族に恩返しをしようと決めました」 この話を聞いたご両親は猛反対だったというが、彼の意志は固く、中学を卒業後幾つかのアルバイトを掛け持ちし、家計を助けたという。そのアルバイトの一つがフィットネスクラブでの仕事だった。とは言え、中学を卒業したばかりの彼がいきなりフィットネスクラブで職をもらえた訳ではない。最初の1~2ヶ月間はそのクラブでトレーニングをしたりレッスンに参加したりという日々が続いたという。おそらくフィットネスに関わる姿勢を試さ話教室に通わせてもらえたことは、本当に有難かったですね。特にそれを感じたのが今年のルーキーコンテストで2位に入ったときに、高田香代子さんから頂いたフィードバックの言葉でした」。その言葉とは、「あなたは世界に通用するプレゼンターになれるだけではなく、その英語力と身体能力を活かせれば世界のトップを取れる資質を持っている」と言って頂いたという。高田さん自身、ピラティスの教育機関を国内で展開するにあたり、海外との交渉や事務的なやり取りを自ら行っている事もあり、非常に説得力のある言葉である。西さん自身も英語を話せることで世界のプレゼンターと対等にコミュニケーションを取れることに、アドバンテージを感じる場面が増えてきたという。 「昨年5月にイタリアで行われたコンベンションに参加したのですが、多くのプレゼンターと知り合いになることができ、特にイタリア人インストラクターのサルバトーレには多くの刺激をもらいました」 この時の経験が、ルーキーコンテスト2位入賞に繋がったことは言うまでもないだろうが、この結果を彼はどう市だが、県外にもイベント講師として招聘されることも多くなった。しかし、劇的な環境変化に浮足立ったところは全くなく、レギュラーレッスンとイベントレッスンは明確に区別しているという。 「イベントレッスンとレギュラーレッスンでは、お客様が求めているものが違うはずです。ですから、インストラクターもプログラムやインストラクションを変えるべきだと思い、レギュラーレッスンでは、ファイナルソングにコリオをはめる事はせずに、エクササイズ本来の効果を感じてもらえるようなクラスを目指しています」 彼はレッスンの作り方にも哲学をもっているのだが、それ以上にビジネス感覚が際立っている。 「仕事を行う上で大切な事はたくさんあると思うのですが、その中でもコンセプトを明確化させる事が一番大事だと思っています」 コンセプトが明確ではない仕事は引き受けないし、行わないと言い切る西さんだが、インストラクターは過小評価されているのではないかと危惧している。 「一回のレッスンを行うための準備に、多くの時間とお金を使い、たくさんのお客様からの指示を頂いても、年齢や経験年数だけが評価の対象になるという悔しい思いをたくさんしてきました。これは僕だけではなく若いインストラクターは皆経験していることです」 プロセスや結果がそのまま報酬に繋がらないという事はどの社会にもしばしばある。特にこの時代だから尚更だ。そんな時代だからこそ西君のような若い世代に風穴を開けて欲しいと思う。しかし、西ジェフィーという、一有限会社スポーツゲイト代表取締役社長有限会社スポーツゲイトホームページURL:http://www.sportsgate.co.jp個人BLOG:http://ameblo.jp/sportsgate2001/取材後記この連載を書かせてもらうようになっておそらく6年以上は経っていると思うのだが、まさか年齢差が倍以上もあるインストラクターをゲストとして迎える日が来るとは思っていなかった。しかし、話していると彼の他者を敬う気持ちが随所に見られ、ついつい西君の年齢を忘れて話し込んでしまった。終始、「お世話になっている方々へ感謝している」と口にしていたことが印象的であったが、その感謝の思いを形にできるのはルーキーコンテスト優勝しかないだろう。そして、世界へと羽ばたいてもらいたい!INTERVIEWER 丸山 寛人のインストラクターとしての価値を下げないためにも、正論を盾に正面突破するような事だけはしないで欲しい。また、経営サイドも若さ故の言動や行動の揚げ足をとるような事はしないでもらいたい。 最後に、西君に今後の展望を聞いてみた。 「今まで、たくさんの方々から多くの事を学ばせてもらったように、将来的には僕も次世代に何かを伝えられるような存在になりたいと考えています」 西ジェフィー二十歳。彼が秘めている可能性はどれだけの大きさなのか。この目で見続けていくことを約束して今回の章を終わりたいと思う。
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