NEXT84
9/60

ようと思い、アルミパイプ職人さんを紹介したんです」 荒川区は古くから工場が多くあるエリアで、代々受け継がれる技術を持つ町工場が多く存在する。長谷川さんが地元のネットワークから、アルミのパイプを自由自在に曲げてはアイデア商品を生み出してきている板垣製作所の板垣隆さんを紹介してくれた。牧さんは早速相談に出向くもアルミの性格上、ウェーブのように断続的にパイプを曲げることが難しいことが分かる。ここでも「それはムリ」という板垣さんに「じゃ、こうしてみては」というやりとりが繰り返され、板垣さんの不屈なモノづくり精神のもとで、ミリ単位で直線と曲線を組み合わせたアルミ製ウェーブリングが完成した。 ただ、この方法も板垣さんの職人技に加えて、アルミを切ったり繋げたりという複雑な工程を加える必要があり、量産が難しい。最終的に300本程度までアルミ製ウェーブストレッチリングを制作しグループ指導をスタートさせるにこぎつけたものの、量産体制づくりへの模索は続いていた。 量産に向けて初めて明るい希望が見えたのが、新潟つばめ三条にある、木工工場との出会いだった。ここでは、木を整形する専用のコンピュータと、専用の木工治具が用意できば量産が可能だという。専用の機材に300~400万円がかかるものの、コンピュータ制御で形を調整できることから、金型のようなリスクはない。そうして、ようやく2005年10月「ウェーブストレッチリングけやき」が完成、ウェブサイトで販売をスタートさせた。 だが、ここで牧さんは改めてウェーブストレッチリングを世の中に送り出し、一つの市場を作り上げようという気持ちを強くすることになる体験をする。牧さんはこう話す。 「量産が実現できることになったけやき工場がある新潟は、父の故郷なんです。父の見えない力のおかげで商品化が実現できたと心強く思いました。ただその一方で、新潟県のグッドデザイン賞に応募したのですが、まったく見向きもされなかったんです。その時気づかされました。商品そのものの価値が知られていて初めて、デザインが評価されるんだと。ウェーブストレッチリングは当時使い方も価値も知られていないただの曲がったリングでしかなかった。それがすごく悔しくて、スキーをしまくって東京に戻ったことを覚えています(笑)」支持者が増える中、先行投資も増え続ける それでも、ここまで来る頃には、指導者の中にウェーブストレッチリングをみて「これ、いいですよね!」と自身で40本を購入して、レッスンに導入してくれたり、知り合いの指導者やお客さまに紹介してくれる人が増え始めていた。商品の使い方や価値を伝えることの重要性を感じた牧さんは、指導者養成コースも本格的に始動させた。 将来市場が拡大したときに、競合商品が出ないようにと特許の手配も急ピッチで進めていった。当初から海外展開も視野に入れていた牧さんしたプラスチック製品は『射出成形』といって、専用の金型に素材を流し込んで固める工程を踏むのですが、この金型を作るのに数百万円~数千万円かかります。さらに一度金型をつくってしまったら、修正がきかない。これまで失敗事例もたくさん見て来ていますしね。でも、だからといって牧さんの情熱がひしひしと伝わってきて『やめたほうがいいよ』とは言えませんでした。運動器具などの商品のことは説明を聞いてもよく分からなかったものの協力しウェーブストレッチリング「工場で最終形の商品がつくれるのは嬉しい」と話す株式会社総プラスチックの長谷川社長(中央)170トンの圧力でゆっくりと成型されるリング長い道のりを経て出来上がった金型牧さんの情熱と、数々の職人の技で進化してきた歴代のウェーブストレッチリングMarch,2014 www.fitnessjob.jp9

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer9以上が必要です