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は、日本に加えて、アメリカ、中国でも特許を申請。国内の特許申請が40万円程度に対して、海外の特許は1ヶ国100万円程度のコストがかかると言われている。そこで、牧さんは人口が多い国に絞り込んで特許を申請。それでも約300万円がかかった。特許は発売前に申請しないと新規奇性が認められないため、ここでも発売前の多大な投資がかかっている。 ウェーブストレッチリングけやきが量産体勢に入り、ウェーブの形状がほぼ固まったことから、当初から構想していたプラスチック製リングの製造準備にも再びとりかかった。前述の通り、プラスチック製品として量産するには、専用の金型が必要となる。ウェーブストレッチリングはプラスチック製品の中でも厚み(太さ)があるため、170トンもの圧力をゆっくりとかけていく機械を使う必要がある。その金型にも約300万円を投資した。こうしてプラスチック製商品の発売を開始する前に、あれよあれよと、1,000万円近い先行投資となっていた。 この間、牧さんの収入は1日5本、週合計30本のレッスンと、空き時間に整体師としての仕事。睡眠時間は5~6時間はとれていたものの、もちろん休日はない。先行投資の資金は「親戚から借りまくった」と話すが、当時の精神的プレッシャーは相当なものであることは想像に難くない。 そのプレッシャーの中、販売ルートの開拓に奔走し、中小企業振興公社のビジネスナビゲーターの支援も受けながら、東急ハンズなどにもルートを開拓していった。 2006年、総合プラスチック工場での量産がスタートした。赤、ピンク、黄色、ブルーの4色、各1,000本。最初は各地で厚く支持してくれる指導者からの紹介と、牧さん自身や東急ハンズや業界イベントでデモンストレーションをしながら、1本1本売っていく状況が続く。奇跡の15分 それから3年ほどが過ぎたある日、牧さんのところにテレビ局から1本の電話が来た。「井川遥さんが、番組収録中にウェーブストレッチリングのことを紹介していたので、専門家としてその解説をして欲しい」という内容である。当時井川遥さんは出産を終えてドラマの主演に復帰するところだった。その番宣をかねて出演するバラエティ番組で、井川遥さんが自分のお気に入りを紹介するコーナーだという。牧さんは言われるままに、ウェーブストレッチリングの解説動画を収録。番組は23時からとのことで、テレビの前で静かにそのコーナーが放映されるのを待った。 異変に気付いたのは、その放映が始まってから数分後。オンラインでの注文が入り始めた。テレビでは井川遥さんがトレーナーさながらに、TOKIOのメンバーにウェーブストレッチリングの姿勢改善の使い方を指導し、それに対してTOKIOメンバーが「(背中が)浮かない」とその変化に絶叫。数秒ごとにオンライン注文はうなぎのぼりに増えていった。サーバーの容量オーバーですぐにアクセスできなかった人もいたのだろう。深夜2時過ぎまで最大数の注文が入り続けた。当時ウェーブストレッチリングを販売していたオンラインショップ「フィットネス市場」でも、2日間で3,000本以上を販売。その後2ヶ月間にわたり、製造が追いつかない状況が続いた。牧さんはこう話す。 「井川遥さんは出産され、本当にキレイになって復帰された時でした。もともと都内のクラブでトレーナーからウェーブストレッチリングの使い方を教わって、気に入ってくださっていたのです。番組で紹介するリングも、ご自身で東急ハンズで購入されたと後から聞きました。番組で1本ではなく2本組み合わせた使い方を紹介してくださったことも、販売が倍増した要因です。感謝するにもし切れなくて、井川さんの事務所に挨拶にも行きましたが、リングをプレゼントするだけになってしまいました」 放映は15分。出演は井川遥さんとTOKIO。広告に換算すれば、何億円の価値に相当する。牧さんの苦労と先行投資が一気に報われた出来事となった。広がり続けるウェーブストレッチリングの輪 牧さんは2010年から海外へのマーケティングも積極的に進めてきている。2011年には、IDEAのコンベンションに出展、サンフランシスコで藤原敏江さんと米国市場にデビューさせた。 続いて、2012年からはイタリアリミニコンベンションにも出展、イタリアでインターナショナルプレゼンターたちにネットワークを持つ志賀理江さんの力も借りて、ウェーブストレッチリングは急速に浸透。レッスンに導入されたり、プロモーションビデオの制作に協力してくれてフェイスブックで情報を発信してくれるなど、世界にも確実に支持者が増えている。 2013年には、リングを愛用してくれている樫木裕実さんの提案もあり新商品となるソフトウェーブも開発した。ユーザー層が広がり、リハビリで活用してくれるユーザーから、身体にあたる部分が「少し痛い」との声があり、すぐに4段階の柔らかさでのリングを開発した。 商品開発とともに、プログラム開発も次々に進めている。現在人気の「ウェーブビクス」や金子智恵さんとのコラボで「ウェーブコンサルサ」、さらに「姿勢美人&美骨盤ウェーブ」「ウェーブゴルフフィットネス」など、業界の専門家とともにプログラム開発とワークショップを続けてきている。 牧さんは、今後の展望についてこう話している。 「好きなフィットネスが一生涯続けられ、心も体も健康でいていただけるように、ウェーブリングのプログラム開発をどんどん行っていきます。骨盤ベルトのラクナールとコラボしての介護予防や、太極拳を取り入れたウェーブタイチ。更に自分の大好きな音楽や、ミュージシャンとのウェーブダンス、日本の未来を背負う子供達のウェーブ身体能力開発など今後も夢はつきません」海外展示会への出展をはじめ新分野へのマーケティングも積極的に進める10March,2014 www.fitnessjob.jp
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