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渡會さんは、スポーツ整形の臨床経験から、スポーツ振興が進められる今、日本の遊びの良さを見直し、子どもたちに伝えていくことも勧めている。 「小中学生で多いスポーツ障害の一つに、『野球肘』がありますが、これは身体全体を使えずに手投げをする身体の使い方を間違えていることが原因。その予防には実はメンコ遊びが有効です。昔『釘差し』やメンコ遊びは男の子なら誰でもやったものです。土の地面に5寸釘を刺したりメンコをたたきつけるシンプルな遊び。地面に強く投げる時の肘や足などの身体の使い方を覚えることが、野球肘の予防や改善に直結するんです」 その他にも、「おすもうさんごっこ」「木登り」「竹馬・缶うま」「ゴムとび」などなど、様々な体勢でバランスをとったり、どこに重心をかければいいかを学べる遊びが、日本の外あそびには豊富に含まれているという。 こうした遊びを子どもの頃に楽しんだ世代はまだ健在だ。昔の遊びを今の子どもたちに伝える機会を増やすことで、子どもたちも怪我や障害なく運動やスポーツを楽しめることに繋がりそうだ。昔の遊びが、ファンクショナルトレーニングとして復権21予測ースが多く、身体の基盤をつくる機会がないために怪我や障害が増えているのです」 子どもを対象としたスポーツ教室などで教える指導者にとっては、こうした基礎体力づくりや身体の使い方を、子どもの成長段階に応じて身につけるためのトレーニングを提供することの重要性が高まることになる。さらに、こうした基礎トレーニングは地味なものも多いため、楽しく続けさせる指導力も求められる。 パーソナルトレーナーの育成に定評のあるNESTA理事齊藤邦秀さんは、2020年に東京五輪が決まったことで、今後トレーナーがかかわる領域が確実に広がると断言する。特に広がる領域として、五輪を目指す選手をサポートする分野に注目する。そこでこれまで以上に重要性を高めるのが、トレーナーが自分の“ハコ”を持っていることだと話す。 「今日本にもマイクロジムが増えてきていますが、規模の大小は問わず、自分の強みを活かせる環境を常に備えておくことが重要です。一つには、自分のハコを持つことで、選手たちを包括的に、一貫した環境でトレーニングを提供できること。もう一つに、自分の拠点を持つことで、各分野の専 これまでも、ウェアメーカーや飲料メーカーなどの販売促進やブ 齊藤さんは「2020年までに確実に一般生活者の健康意識が高まり、行動に移す人も増える」とも予測する。特に注目される分野として、ジュニア世代のトレーニング指導と、シニア世代のトレーニング指導を挙げる。この分野で指導力を発揮していくことで、トレーナーがさまざまなコミュニティのリーダーになれるチャンスも増え、そのことがさらに地域の人々や自分がいるコミュニティにいる人々のトレーニングやフィットネスへの意識を高め、実際の行動に移すことをサポートできることになる。門家ともネットワークが築きやすくなることがあります。ストレングスに強いトレーナーであれば、理学療法士やケアやコンディショニング分野に強いトレーナーとコラボレーションしたり、栄養士とのコラボもしやすくなります。2020年に向けてトレーナー業界にとって追い風が吹くのは明らか。トライするなら今だと思います」 確かにマイクロジムには、トレーナーの思いや強みが反映された個性的なジムが多い。また個性を出すことで、そうしたケアや指導を必要とする選手やクライアントが口コミで集まってくる。「腕があれば、必ず聞きつけて人が集まります」と齊藤さんはチャレンジを応援する。ランディング、商品開発にトレーナーやインストラクターが関わる 齊藤さんも、自身の長女が通った幼児園の父親たちとランニングチームをつくり、長女が卒園した今でも週1回指導にあたっている。そうした活動は、父親たちに正しいトレーニングや健康づくりの啓発ができるだけでなく、そこでトレーナーの価値を知って貰うことができる。日本では従来そうした父親たちが子どもたちのスポーツチーム指導に関わることも多く、父親たちにトレーニングを啓発することで、子どもたちがアスリートを目指すことになったときに適切なトレーニング環境を整備できることに繋がる。自分の“ハコ”を持っていることのメリット広がる22予測メーカーの仕事に関われる可能性が広がる23予測トレーナーがコミュニティのリーダーに24予測機会も多くあったが、こうしたチャンスがさらに周辺分野にも広がると齊藤さんは予測する。 フィットネス業界では、トレーニングマシンメーカーのテクノジムが過去5回の五輪でオフィシャルサプライヤーとして選手村のトレーニングルームを運営してきている。また、それ以外でも“五輪”という強力なブランドネームを活用したマーケティング活動が、公式スポンサーに限らず今後活発化することは確実だ。 齊藤さんは、メーカーの活動にかかわるチャンスを得るには、まずスポーツやフィットネスを通じて販促やブランディングを図ろうとしているメーカーが主催するイベントに参加すること、また、トレーナー仲間や知人にそうした会社とのネットワークを持つ人がいるなら、その人を通じて、メーカー側のキーマンと会う機会を得て、自身ができることを伝えることが第一歩になる。 メーカーにとっては、トレーナー・インストラクターが持つ知識や、選手・一般生活者とのコネクションや影響力を必要としている。その資源を活用しない手はない。飲料メーカー、スポーツアパレルをはじめとしたアパレル・シューズ、化粧品、日用雑貨、通信会社をはじめ広くその動きは広がっていくことが予想される。身近な存在のメーカーに自分をアピールしていくことが新たなチャンスを掴むことに繋がる。08NESTA JAPAN副代表、有限会社Wellness Sports代表取締役、メディカルフィットネスフォーラム理事。パーソナルトレーナーとして業界屈指の実績をもち、組織の経営、様々なプロジェクトのマネジメントも行う「マルチプルトレーナー」。各種トレーナー資格認定のカリキュラム開発や指導にも携わる。パーソナルトレーナー育成齊藤邦秀さん 予測November,2013 www.fitnessjob.jp17

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