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ンディングやプロモーションに活きることになり、相応のリターンが得られることに繋がる。 このようにある意味戦略的に職場環境を整えておくことで、トップアスリートに関われるチャンスが得られた時に、十分な時間とエネルギーを投じて貢献できることになる。 また、“五輪選手のトレーナー”というキャリアを目指す場合にも、戦略的な方法があるとアドバイスする。その一つが、トレーナーとしての相応の資格をとってから、スポーツに強い大学の大学院や、科学的トレーニングが研究・実施できる施設を持つ大学院に進むことだ。既に、早稲田大学や筑波大学、東海大学、日本体育大学などでは、大学生選手のケアやトレーニングを、同じ大学や大学院に所属する学生トレーナーが担当するという自給自足体制に入りつつあるという。予め資格を取得してから大学院に進むことで、実践的なトレーナー業の実績も積みやすく、論文を書いたり高い学位を持つことで、その後も活躍の場も広がっていく。学生時代に築ける選手やコーチとのネットワークもそれを後押しする。 また、JATIではトレーニング指導者の育成のために2008年からトレーニング指導者を志す学生のための研修・交流会を毎年実施している。学生時代から勉強して現在現役のトレーニング指導者として活躍している先輩たちから、実技や講義のほかに様々な体験談を聞き、そして学生同士も交流して情報交換や人脈を広げる機会を提供している。 このように戦略的に資格取得と進学、研修参加などを組み合わせることで、自身のキャリアを戦略的に創る環境が整ってきている。いくと予測する。 「これまでフィットネスを楽しむ人とスポーツを楽しむ人は、似て非なるものでした。フィットネス業界が提供するトレーニングと、トレーナー業界が提供するトレーニングも一部融合する部分があるとはいえ総じて言うと別物でした。ですが、五輪開催が決まったことを契機に、一般生活者の方もより本質的な情報に触れる機会が増え、より本質的なサービスを求めるようになる気がします。それによって、フィットネス業界もより本質的なサービスを提供しやすくなり、トレーナー業界が提供しようとしてきたトレーニングを、フィットネスクラブでも提供しやすい環境が整うことになるのではないでしょうか。運営効率を追求してきたフィットネスクラブのビジネスモデルをすぐに変えるのは難しい中で、注目しているのが『コンディショニングセンター』というスタイルです。『スポーツクリニック』とも言える形で、リハビリからパフォーマンス向上のトレーニングを一貫した体制で提供できる場。欧米では理学療法士が民間施設として経営運営しているケースが多いですが、日本でもマイクロジムや小規模のファンクショナルジムが増える中、フィットネスクラブやスポーツ施設の一角などにも設置されるようになっていくと思います」 アスレティックトレーナーの立場からトレーナーの地位や社会的認知の向上に尽力する鈴木岳さん。これまでフィットネス業界などとのコラボレーションによりアスレ これまで五輪の強化選手たちが専門的なトレーニングを行う場といえば、国立スポーツ科学センターなど、最高の施設と指導者が準備された限られた場だった。だが、東京五輪開催が決まったことで、今後選手たちのサポート体制にかける予算も増え、その分多くの選手が、さまざまな場所で専門的なトレーニングを行う環境が整えられるようになる。それにより、一般生活者にとっても、身近にアスリートたちが行っているトレーニングに触れる機会が増えることになる。特にこれまで一般生活者にとっては馴染みのないパフォーマンストレーニングに関する情報もティックトレーナーの活躍の場を広げることを模索してきたが、東京五輪開催が決まったことで、フィットネス業界とアスレティックトレーナー業界がさらに融合して増え、一般アスリートや一般生活者でさえ、そうしたトレーニングを採り入れようという意識が高まる。 そうした動きを見据えて、施設としても、指導者としても、パフォーマンストレーニングへのニーズに応えられるようにしておく準備が必要となる。施設や指導者がタイムリーに的確にそのニーズに応えることで、より専門性の高いトレーニングが一般生活者にも届くようになる。フィットネスクラブのジムスペースの運用や、公共施設を運営する指定管理者はハード面、ソフト面で柔軟に対応していくことが求められる。「コンディショニングセンター」が増える16予測パフォーマンストレーニングが一般生活者にも浸透17予測06JOC情報医科学専門部会員鈴木岳さん 予測株式会社R-body project代表取締役。ワシントン州立大学にて全米公認アスレティックトレーナー(ATC)の資格を、その後、筑波大学にてスポーツ医学の博士号を取得。98年から全日本スキー連盟フリースタイルチーム専属トレーナーをはじめ、数々の五輪でアスリートたちをサポート。10年バンクーバー五輪では日本チームで初めてパフォーマンスコーチとして帯同した。現在も日本五輪委員会(JOC)情報医科学専門部会にトレーナーとして参加している。R-body projectでは、一般生活者も含めたパフォーマンス向上のトレーニングを提供している。JATI学生研修・交流会の模様 ⓒJATINovember,2013 www.fitnessjob.jp15
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