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鈴木岳さんR-body project代表ワシントン州立大学にて全米公認アスレティックトレーナー (ATC)の資格を取得。その後、筑波大学大学院にてスポーツ医学の博士号を取得。数々の五輪をサポートし、ロンドン五輪では、日本選手団の公式トレーナーを務めた。03年株式会社R-body projectを設立。フィットネスの分野にアスレティックトレーナーの活躍の場を広げる活動も進めている。現在は健康・フィットネス産業に従事する方を対象に、同社施設内、及び全国各地に同社トレーナーが赴き、「短期アカデミー」を数多く開催している。(www.r-body.com)お話を訊いた方けれども、それが本当に自分に合っているのか、そして選んだものが正しくできているかもわからない。ですから、一般の人にもアスリートと同じように、矢印を自分に向けることが求められていると思います。それぞれの目的に対して、我々専門家が『最適なトレーニングメニュー』、『そのトレーニングの正しいフォーム』をお教えする。ですから、どんなトレーニング方法をやっているかという枝葉も大事ですが、まずは一般の人にどう提供するかというサービスの在り方が非常に大事だと思うのです」HIITの本質を外さないために アスリートが採り入れているトレーニングは理にかなっており、しかもエビデンスがある。これを一般の人のフィジカルレベルやコストに合わせてオーダーメイドしていく。 「そういうサービススタイルならHIITも提供する価値があり、たいへん効果もあると思います。しかし、枝葉の部分だけが独り歩きして、いろいろな名前をつけて、体力も目的も違う人を集めてグループレッスンにしてしまうのは、リスクがあると思います。プロのトレーナーなら、対象者に応じたメニューを組むのが当たり前です。どんないいトレーニングも、提供方法によっては、よくないトレーニングになってしまいます。ビジネスの視点は大事ですが、多売を優先してしまうことで、本質を見失いがちになる。HIITについても、本質をはずさないで提供することが何より重要だと思います」HIITも、身体づくり、動きづくりから 鈴木さん自身もクライアントのトレーニングメニューとしてHIITを積極的に取り入れている。 「30秒ダッシュ、30秒ジョグを20セットや、プロトコルを1分ダッシュ、2分ジョグにするなど、いろいろです。アスリートの場合は、競技種目に合わせたり、その人の目的に合わせてメニューを組みますが、一般の方にもいいメニューです。心肺機能をアップしたり、脂肪燃焼効果もあり、とくにスポーツ愛好家であれば、その種目にあわせて、HIITを活用すればパフォーマンス向上に役立ちます。テニスやゴルフ、スキーなど生涯スポーツを長く楽しむことにも繋がります。また、フィットネスにも有効であると言われます」 但し、その大前提として、基本的な身体づくり、動きづくりがあることの重要性を説く。正しいフォームで、痛みなくできること。グループでのHIITの導入においても、それをきちんと見ることができる環境設定が必要だ。 鈴木さんもHIITを取り入れる時には、HIITができる体作りから始めるという。 「まず走れるか、です。どんなアスリートでも、シーズン初めにいきなりHIITをやることはありません。体幹を安定させて走れる状態になってから。それも低強度から始め、徐々に高強度にあげていく。そういうことをして初めてHIITを効果的にトレーニングに採り入れることができるのです」ブームの背景を分析・評価する目を 鈴木さんは、現在のアメリカのHIITブームをこう分析する。 「大人版の部活動的ですね。学生時代に運動で追い込んだことのない人が、体育会系の部活を想像して、その達成感を楽しんでいるように感じます。学生時代にHIITをさんざんやった人は、このブームに飛びつかないでしょう。恐らく、彼らは痩せる目的よりも、こうした達成感を味わいたいことが目的なのかもしれません。日本でHIITを導入する場合も、売りがダイエットだとしたら、このブームでアメリカ人たちの何割が痩せたのかを調べるべきです。また、ブームになる社会背景もあるでしょう。欧米では『きついことをやることが格好いい』という意識がありますが、日本では『ラク痩せ』が話題になりやすい。HIITは本来キツいトレーニングですので、こうした背景も理解した上で提供する必要があると思います」 それでも、トレーナーの立場としては「いい時代になってきた」と加える鈴木さん。 「いろいろなトレーニングメニューが注目されること自体はいいことです。ここで大事なのは、トレーナーたちが本質を見失わず、正しく、的確に提供すること。現場と研究者の連携の中で、誰からも指摘されないエビデンスをきちんと出すことで、確かなトレーニングがお客さまに提供されるようになる。今、お客さまの知的レベルはものすごく高くなっています。それだけに確かな情報価値は益々高まっていくでしょう。つまり、トレーナーの真価が問われる時代になってきたのだと思います」14July,2013 www.fitnessjob.jp
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