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February,2013 www.fitnessjob.jp31優になりたい!と思ったんです」 現在、俳優を目指しダンスや演技のレッスンを受けている彼だが、既にダンスとカラオケを融合したエクササイズDVD“カラフィット”でメジャーデビューを果たしている。カラフィットとは、カラオケで唄を歌いながら振り付けを行う今までにない新感覚なエクササイズ。運動生理学的なエビデンスもしっかりしているとの事。今後このエクササイズの普及にも力を入れて行きたいと意気込む隈川君だが、とにかく、興味がある事には何でも触れ、チャレンジしてみないと気が済まないという好奇心、探究心旺盛な性格だ。現在の隈川君の性格、行動力は、ある時母親から掛けられた言葉で、より一層貪欲になったという。 「自分の将来のことについて母親と話をする機会があったんです。その時に、煮え切らない返事ばかりをする自分に対し母親が、『夢が先、お金はあと』と大きな声で強く言われました。何だかんだ言い訳をしながら、夢と本気で向き合おうとしていない自分がいたことにその言葉で気が付いたんです」 お母様の言う、『夢が先、お金はあと』とは、〝夢を叶える事にまずは集中すること。お金は後からついてくるから”という意味なのだろう。人は前に進もうとするとき、時としてネガティブ思考が立ちはだかり、前に進みたいのになぜだか前に進めない理由ばかりを考えてしまう。そんな経験皆さんにもないだろうか。時間、環境、お金、見栄、体裁、人間関係…、言い訳を探せばきりがなく、夢や目標を考える事さえ億劫になってしまう。隈川君のお母様のこの言葉は、私の心にもかなり響いた。現在、隈川君はフィットネスクラブでまうと、周りへの配慮や感謝の気持ちが薄れ、自己中心的な発言が目立ち始める。100回受けた恩もたった一回の思うようにいかない事実で反抗し、結果“干され”、気付いた時にはあとの祭り。そして、そのまま消えてしまうインストラクターも少なくない中で、彼は本当に命拾いをしたと言っても言い過ぎではないだろう。更に驚いたのは、その事実に、26歳という年齢、キャリアに至ってはたったの6年にも関わらず、気づき改めた事だ。では、彼はどうやって自分の間違いに気づいたのだろう。 「現在、インストラクター業を行う傍ら俳優の勉強をしているのですが、その世界で出会った人達の凄みや、半端じゃないモチベーションの高さに衝撃を受け、自分の小ささ、浅はかさを思い知らされ目が覚めました」 なるほど、どおりで写真撮影時のポーズの決め方、目線の送り方、外し方など堂に入っているはずだ。芸能界という浮き沈みの激しい業界で、何万分の一の確率の目標に向かい、日々、自己研磨に全てを注ぐ。その世界で生きている人間に触れる機会が、彼を現実の世界に引き戻し、本当の成功とは周囲への配慮、感謝の想い、そして謙虚さ無くしては掴めないという事に気付かされたに違いない。そんな隈川君だが、将来的にはアクション俳優を目指しているという。 「小学生の時からとにかく目立つことが大好きで、小中は応援団長、学芸会や文化祭でもとにかく一番目立つ役を自ら立候補して演じていたんです。その小学生の時に見たジャッキーチェンの映画に衝撃を受け、自分もあんな風にコミカルにアクションをこなせる俳の中で文頭に書きたくなるほど何がそんなに印象的だったのか。この発言、一時間ほど取材が進んだ頃唐突に彼が話し始めたのだが、『調子にのっている』ような部分は微塵も感じないばかりか、どちらかと言えば礼儀正しい好青年というイメージだったからだ。 〝調子に乗る…”。人気が出てくるとある程度は仕方がない気もする。しかし、このスパイラルに一度はまってしのレッスンを週に16本指導しているというが、レッスンだけの収入ではアクション俳優になるための勉強に掛かる費用は賄えず、さらに家族の生活の面倒もみてあげたいという思いから、深夜のアルバイトもしているという。 「深夜、土木関係のアルバイトをしていますが、自分的には全くきつくないんです。以前の自分だったら、おそらくできない理由を考えて一日で辞めてしまったと思うのですが、母親からの言葉のお陰で、どんな仕事も夢を叶えるために必要な事と考える事ができるようになりました。最近では、最終電車が行った後の駅校内で、盲目の方のための点字ブロックを張り替える仕事をしたんですが、盲目の方のために!という使命感に駆られ、一つ一つの作業工程を意味深く捉えた仕事ができました」 レッスン指導、俳優になるための勉強、そして深夜のアルバイト。睡眠時間以外、フルに動いているというが、隈川君の表情や話口調に疲れた素振りは全くなく、なぜか楽しそうだ。 「きついとか辛いとか以上に、毎日が充実していて楽しくて仕方ないんです。色々な仕事や勉強の現場でその道のプロを間近で見れ、学べるんですから!」 土木関係のアルバイト中に自分よりも体の小さい人が倍以上もの土嚢を持つ姿に感動したと嬉しそうに話してくれた。最後に、彼の今後のビジョンについて聞いてみた。 「インストラクターとしてのビジョンは明確には描けないんですが、とにかく勉強し続けたいという思いがあります。やり続ければ何か見えてくると思いますし、お客様と共に汗を流し、そして笑顔の絶えないクラスをこれからも提供できれば嬉しいです。そして俳優業の方は、厳しい世界であることは十分承知しています。でも、子供の頃からの夢であるアクション俳優を目指し、日々自分を磨いていきたいと思います」 インストラクター業と俳優業。似て非なる二つの職業。両立する事は大変だと思うが、今回の取材で二時間ほど話を聞かせてもらい、隈川君ならやってくれそうな気配を多分に感じた。陰ながら私も応援させて頂き、今回の章を終わりたいと思う。有限会社スポーツゲイト代表取締役社長有限会社スポーツゲイトホームページURL:http://www.sportsgate.co.jp個人BLOG:http://ameblo.jp/sportsgate2001/取材後記中国の思想家孔子は論語の中で、「君子は義にさと喩り、小人は利にさと喩る」という言葉を残している。いわゆる本質を理解できている人間は事の正しさや人の義を優先し、凡人は自分の利益を優先させるという意味なのだが、この言葉、隈川君のお母様の教えに近いものがある。人は時として目先のお金や上手い話に左右される。しかし、本質を見極める目、思考がその後の幸せな生活を形作る上で重要だという事に早い段階で気付いた隈川くん。彼にはいろんな意味で期待したい。先達の言葉は本当に心に沁みる。真っ当な生き方とは何か?考えさせられた取材であった。INTERVIEWER 丸山 寛

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