NEXT71
13/52
る。以前は、インストラクターはこうした資質をクラブ内でしか発揮する機会を持てなかったが、今では、この資質をクラブ外でも発揮できる機会が増えている。梅村さんは、自身の収入の半分以上(理想は三分の一)をクラブ外で得られるようにバランスさせていくことを勧めている。 「2013年は改めて自身の将来の仕事をどう設計していくかを考え、それに向けて1日でも早く踏み出すことが必要になると思います。2012年は、クラブ外でのイベントを企画・運営したり、自分ブランドのTシャツを製造・販売する方も増えました。ですが、そうした活動も、将来設計の中に位置づけられていなければ自己満足で終わってしまいます。自分のイベントやTシャツをプロモーションする方法も、将来設計を考えたうえで進める必要があります。クラブのお客様ともいい関係を持ち続けたいのであれば、クラブから相応の許可や契約を貰っておくことはビジネスマナーとして当然のことです。イベントもTシャツ販売も、手段であって、そこで終わるわけではありません。その先にある将来の自分の仕事に繋げられる方法をとることが重要です」 イベントが急増したことで、各イベントの集客力が低下しつつあるという現実もある。2013年は、イベントのコンセプトや、ターゲットする顧客層、イベントの目的を明確にして取り組む必要があると梅村さんは強調する。「お客様に教える」から、「お客様が学べる場をつくる」へ 梅村さんは、インストラクターの仕事を、レッスンだけにとどめず、教育者としての視点やあり方を採り入れることを勧めている。 「インストラクターは、養成コースからワークショップに至るまで、仕事をするうえで膨大な時間とお金を投資しています。その投資からのリターンをレッスンだけにしてしまうのはもったいないことです。得てきた知識や経験は、レッスン以外の商品やサービスにもできるはずです。例えば、クラブでのレッスンで伝えきれないものを、独自のスクールやプログラムにしていけばいいのです。インストラクターの本間友暁さんが定期的に開催している『本間塾』は、一般の方を対象にエアロビクスでの正しい身体の使い方を伝える一つのいい事例です。お客さまも、普段学ぶ機会のない内容をこうしたコースで学ぶことで、クラブでのレッスンもさらに楽しめたり、同じエクササイズを効果的に行うことができるわけです。お客様にとっても、クラブにとっても、インストラクター自身に「脱フィットネスクラブ」を目指すと、クラブとウィンウィンの関係が見いだせる!自らの集客力を改めて見直す これまで15年間にわたり、特にグループインストラクターのキャリアやビジネスをサポートする活動を進めてきているフィットネスプログラムス メッツ代表の梅村隆さん。ここ数年でインストラクターとフィットネスクラブの関係は、大きく様変わりしたと話す。プレコリオプログラムの多様化により、クラブでのフリースタイルのレッスン本数が減少する一方、ソーシャルメディアの浸透で、フリーインストラクターが個人でも情報発信や自分のブランディング、集客活動さえできる時代。そうした時代の変遷の真っ只中にある2013年は、インストラクター自らが、いい意味での「脱フィットネスクラブ」を目指すことが、自身の成長にも繋がると提言する。 「10年前にあった、『インストラクターの仕事=フィットネスクラブでのレッスン』という構図は、既に成立しなくなっており、インストラクターはその環境変化に自分から主体的に対応すべき時に来ていると感じます。実際ここ数年、クラブのレッスン収入を維持することが難しくなったことで、インストラクター業をやめる選択をする人も増えています。ですが、インストラクターが持つ優れた資質が、多くの一般生活者に求められていることは昔も今も変わりません。クラブでの環境変化に対応するうえでの第一歩は、自身の活動の場所をフィットネスクラブに限定しないで再構築してみることだと思います」 梅村さんがインストラクター自身が改めて見直すべきと考える資質として、インストラクターが持つ集客力と、多くの人を一度に惹きつける魅力や指導力を挙げ梅村隆さんTakashi Umemura有限会社フィットネスプログラムスメッツ代表取締役社長フィットネスインストラクター&トレーナー暦15年・ダイビンングインストラクター暦10年の指導歴を持つ経営者。インストラクター現役中(29歳)に起業し、36歳で引退。以降、経営者として『独自路線をいく』をモットーに岐阜の地で全国のインストラクターのキャリアやビジネスをサポートしている梅村隆さんの動向予測とってもウィンウィンの関係が築ける理想的な方法の一つです。また、名古屋で毎年開催されている、名古屋フィットネスフェスタも、地域のインストラクターやトレーナーが力を合わせて、地元の生活者の方々を対象にフィットネスを啓発する優れた事例です。地域にフィットネスの価値が伝わることで、全者にとってウィンウィンの関係が築けます。2013年はこうしたお客様もインストラクターもクラブも地域もハッピーになれる新企画、新サービスに期待したいですね」 今後、フィットネスクラブとインストラクターの関係は、百貨店とテナントの関係に近くなると予測する梅村さん。フィットネスクラブの経営課題として、お客様の集客と定着がある以上、魅力的なコンテンツや商品を持つインストラクターの必要性は高まっていくに違いない。多くのお客様の心を数分で掴み、信頼を得続けるインストラクターは、将来も必ず必要とされる存在であり続ける。 2013年、改めてインストラクターとしての自身の強みを見つめ直し、フィットネスクラブ外に軸足を置いた仕事の設計をしてみる。そこに将来の大きな可能性が見えてくるはずだ。InstructorFebruary,2013 www.fitnessjob.jp13
元のページ