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摩訶不思議?摩訶不思議?常識?トレーナー業界の常識?非常識?力は2つの効果で分散されるそうです。ひとつは椎間板によって髄核に75%、線維輪に25%分散され、更にバルサルバ効果によって「呼吸筋群、腹筋群の収縮で胸腹腔を閉鎖された腔にする。このようにして胸腹腔の内圧が著明に上昇すると、脊柱の前面は堅い梁に変わり、骨盤や会陰に力を伝達させる。この膨張構造の存在によって椎間板に作用する長軸方向の圧迫力を著明に減少させている」とのことです。 最近の文献では、「バルサルバ効果のためにはバルサルバ呼吸もやむを得ない」というような記述も増えてきているようですが、やむを得ないというよりバルサルバ呼吸をしない方が危険です。 かと言って、初めてウエートトレーニングする人の中には、呼吸を忘れたがごとく、呼吸を止めて行う人がいます。こういった方の場合の、初期の導入時には、「息を止めない」呼吸法も必要になってきますが、基本あくまで“バルサルバ”なのです。S.Dream有限会社代表、NESTA JAPAN理事、太田情報専門学校講師。「Drive your HEART&BODY」をテーマにパーソナルトレーナー、チームコーチ、クラブスーパーバイザー、メーカーコンサルタント活動中。雑誌、DVD、TVCM出演多数。Profi le 木内周史 今回のテーマは、皆さん良くご存じの「バルサルバ呼吸」です。重たいものを持った時の息みのことですね。以前よりバルサルバ現象に対する間違った理解とそのことによる現場における指導には、目に余るところがあり今回のテーマにしました。 本来は、筋の出力に伴う息みによる、血圧上昇のこと「バルサルバ現象」、普段より筋力が発揮できることを『バルサルバ効果』といい、その際の息み(呼吸の停止)のことを「バルサルバ呼吸」と言います。因みにバルサルバとは、この効果を発見したイタリアの解剖学者、アントニオ・マリア・バルサルバ (Antonio Maria Valsalva, 1666 ~ 1723) から名付けられたものです。 息を止めて、力むと、腹部の筋群、骨盤底筋群、声帯、口唇などが緊張を起こし、息まない時以上に重たい物が持てます。スティッキングポイント(エクササイズ中に最も大きな力が必要な部分)の通過や火事場の馬鹿力にも、バルサルバ呼吸によるバルサルバ効果は欠かせません。 しかし、現場での『バルサルバ効果』に対する認識は、事実とは相当異なるためおのずと実際の指導は、不思議(奇妙?…)な感じになってしまっています。例えば、レッグプレスの際の「息を吸いながらゆっくり引いて、吐きながら押します」。珍しくないフレーズだと思いますが、明らかに変です。高重量でなくても10RMの後半で吸い続けながら伸張性収縮を行うことは困難ですし、万が一できたとしても危険です。息を止めるからこそ体幹の筋群(特に骨盤底筋群や腹部の筋群)は、固定・安定し、筋力の発揮が容易になるからです。 『カパンディ 関節の生理学』という本の中では「膝を屈曲し体幹を垂直にして10㎏の重量を持つと、力S1(仙骨にかかる力―引用者)は傍背柱筋に141kgの負荷を及ぼす。」と述べられています。たった、10㎏で141kgです。さらに「椎間板を破壊するのに必要な力」は「(若年者で800kg、年配者で450kg)」と怖いことが書いてあります。しかし同書によると、このvol.8危険?バルサルバ呼吸RefineBody代表、動きを通して洗練されたココロとカラダ創りを提唱。北海道体育大学校非常勤講師、一人でも多くの方に運動を通して幸せを提供するために活動中!ブログ【札幌 田中宏明】で検索田中宏明Hiroaki Tanaka道産子がゆく!ピラティスパーソナルトレーニングと32January,2013 www.fitnessjob.jpので、ここではピラティスで用いられる強制呼気・吸気として捉えます)【強制吸気に関わる筋肉】横隔膜・斜角筋・(外)肋間筋(以下、補完筋)・上後鋸筋・長・短肋骨挙筋胸鎖乳突筋・広背筋・胸腸肋筋・頸腸肋筋・小胸筋・大胸筋・前鋸筋・腰方形筋【強制呼気に関わる筋肉】腹直筋・外腹斜筋・内腹斜筋・腹横筋・胸横筋・下後鋸筋、(内)肋間筋 以前調べた時に自分でも驚きましたが、呼吸に関わる筋肉ってこんなにあるのです! 最近見た、2年前の写真と比べて胴体がほっそりした自分にも納得出来ます(笑) さらに、呼吸では筋肉の作用によって肋骨・脊柱・鎖骨が連動し、肩甲骨・上腕骨・骨盤の動かしやすさも変わってきます。 これを、パーソナルトレーニングの中で考えると、腹筋(カールアップ)・背筋(バックエクステンション)腕立て伏せ(チェストプレス)懸垂(ラットプルやローイング)スクワット(レッグプレス)などの動作時に、吸いながらの方が良いのか、吐きながらの方が良いのか変わってきますよね。 もちろん、強制呼息の場合は、動員される筋群が多いですから適切な呼吸タイミングはトレーニング効果、ウエストや胴回りのシェイプアップ効果も高まってきます。 ピラティスと出会うまでは、「力を入れる際に息を吐く」と指導させて頂いておりましたが、ピラティス呼吸を知ってからは、「脊柱や肋骨の動き、ターゲットの動作や筋肉」を考慮した上で呼吸の取り方を指導させて頂くようになりました。今回の連載が、普段の指導で呼吸法を活用して頂けるきっかけとなれば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました!※次号はピラティスを使った機能評価法をお伝えさせて頂きますね。 NEXTをご覧の皆様、こんにちは!気づけば北海道は一年で最も長い冬が始まり、札幌も一面真っ白です。 この連載では、道産子トレーナー&インストラクターの活動ぶりをレポートするとともに、私の指導を根本から変えるきっかけとなった「ピラティス」をトレーナーとしてどう捉え、どのようにパーソナルトレーニングセッションで活用し、お客様から喜びの声を頂いているのかをご紹介させて頂きます。 今回は「ピラティス呼吸の活用法その②」についてご紹介させて頂きます。 前回、ピラティス呼吸の位置付けを「コアを安定させたままの胸式呼吸」とご紹介させて頂きました。まず、呼吸に関わる筋肉を整理してみましょう!※安静時の吸息は横隔膜(斜角筋・肋間筋)の作用が多く、安静時の呼息は随意的に筋肉が働くというよりも胸腔や肺の弾力性、横隔膜の弛緩によっておこるものとして考えられています~第4回 呼吸の活用法②~

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