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ジナリティー溢れるジム作りを考えた時、さらに深い知識や知見が必要だと感じました。大学院は自分がより掘り下げたい物を研究材料として学ぶ事が出来、最短で得たい物を得られると判断したので進学を決めました」 竹下さんは明確にその目的を持ち、研究をすぐに形として出すべく取り組んだ。ジムの立ち上げ準備をしながらだったことから、大学院の履修科目も、履修数も、卒業できる最小限に抑えた。だが、竹下さんはこのコースで学ぶことで、知識や知見にも勝る大きな財産を得ることができたと話す。それは同期生とのネットワークである。 「同期生は11人いたのですが、既にスポーツビジネスで何らかの実績を持つ方ばかりで、分野や強みもそれぞれ。自分にないものをお互いにサポートできる関係が築けたことが何よりの財産になっています。実際に、現在代表理事を務めさせて頂いている一般社団法人スポイクもこのネットワークを通して生まれました。同じ志を持った一生の仲間や、いつでも相談できる先生がいてくれることは今後事業をしていく上でも本当に心強く思います」 将来は、ジムに来て頂いている方々にとどまらずデジタルとアナログを融合し多くの方々に健康になってもらえるように、ヘルスケアの世界で社会に貢献していきたいという夢を膨らませる。竹下さんは、一生の仲間というバックアップを得て、その夢に向けて大きな一歩を踏み出した。お話を聞いた方竹下雄真さんYuma Takeshita早稲田大学スポーツ科学研究科スポーツマネジメントコース2010年修了株式会社ポジティブ代表取締役 同大学修士課程を修了した竹下雄真さんが、大学院進学を決めたのは、起業してから2年目の事。すでに株式会社ポジティブの経営を順調に進めていたが、よりスポーツ、健康に特化した事業をしたいと考え、スポーツの中心にある同大学においてスポーツマネジメントを学び直そうと考えたのがそもそものきっかけである。そして、そこから生まれたのが西麻布にあるプライベートジム、デポルターレクラブであり、これが現在の事業の根幹になっている。 「私はこれまで専門学校でトレーナーとしての知識を身につけ、海外研修を経てフリーパーソナルトレーナー活動、そこからパーソナルトレーニングジムの立ち上げに関わりました。その経験から、現場サイドから見たジム運営については力を付ける事が出来ましたが、ジムオーナーとしてその時々の時流を見極め、オリ先生や同期生とのネットワークが何よりの財産に03STUDY衝撃的でした」 油谷さんにとって、もう一つ検証したいことがあったという。それは科学者の視点とアプローチである。スポーツ経験者は、往々にして経験値を重視しがちで、科学者たちの研究に興味を持たない人も少なくない。だが、油谷さんは、その研究者たちの血の滲むような研究成果があってこそ、トレーニング指導者も前進できると考える。 「科学を本気で学ぶことで、科学の奥深さも知ることができましたし、逆に科学の限界にも触れられた気がします。私が師事する長谷川裕先生が『トレーニング指導は科学を使った芸術』だと話されていたことが印象に強く残っています。科学は後づけであるものの、それを使って新たな価値を作っていくのがトレーナーの仕事だと思うんです」 大学院で研究しているのは「高齢者の体力分析と、自立に関わる正常歩行にどうアプローチするか」。その他に、下河内洋平准教授(写真)との共同研究として「スポーツパフォーマンスに関わる体幹の研究」も行っている。現在はトレーニング指導の仕事や、JATIのメンバーと一緒に進めているスポーツやトレーニングの継続を啓発する活動などに追われ、大学院での研究が遅れがちだが、研究への思いは強くなる一方だ。 「高齢者の問題は、将来国を挙げての問題になるのは必至です。トレーニングの科学と現場を繋ぐことで、トレーナーがその大きな問題解決の一翼を担えるのは確実です。その環境の実現を目指して邁進したいと思います」お話を聞いた方油谷浩之さんHiroyuki Abutani大阪体育大学大学院スポーツ科学研究科在学中。任意団体スマートストレングス主宰、JATI理事近畿支部支部長、JATI上級トレーニング指導者 名門関西学院大学アメリカンフットボール部で主将として活躍した後、17年間にわたりトレーニング指導者として、数多くのチーム指導に携わってきた油谷浩之さん。現在は、子どもの体力アップや、デイサービスなどでの高齢者の運動プログラムの開発やアドバイスなど幅広く活動している。 油谷さんの大学院進学への興味は、トレーナー歴が長くなるにつれて強まってきたという。自身がアスリートとして活動してきたことから経験値は抱負に持っていた。だが、トレーニングの現場に深く入り込むほど、科学的な裏付けの必要性を感じるようになったと話す。 「自分も選手時代にトレーニング理論を知っておきたかったと思うことから始まり、子どもの指導では、例えば高校野球で活躍するうえでどの程度の体力が必要なのか、高齢者の指導では生活を快適にするトレーニングの方法や強度はと考えると、そこには科学的なエビデンスが必要になります。そんな中、大阪体育大学が『スポーツ科学とスポーツ医学』とのタイトルで市民講座を開いていて、そのタイトルに惹かれてこの講座に参加したことが進学への直接のきっかけになりました。特に伊藤章先生のバイオメカニクスの講座は目からウロコな話ばかりで、科学者のアプローチを知ることで経験値がさらに活かせる04STUDY24December,2012 www.fitnessjob.jp
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