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New Market 04時、これまでにない感動がありました。運動指導という仕事の可能性や貴重さも改めて感じました」 障がい者施設での運動指導は、30〜45分で、内容はウォーミングアップから始まり、感覚刺激、有酸素運動、筋力トレーニングという流れが基本となっている。特に大切なのが感覚刺激のエクササイズだという。 「自分で身体の各部分を触る、さする、軽くたたくなどのエクササイズは必ず入れるようにしています。普段あまり身体を動かす機会がないので、ご本人に改めて身体の各部位の動きや感覚を確認していただくのはもちろん、指導者としても、その動きや反応を見ながら、それぞれの方の認知力や、身体の柔軟性などを確認する時間としても重視しています。また、お互いの手を握ったり、叩いたりすることで、人とのコミュニケーションもとれます。普段個室で生活していることに加えて、中には知能の発達に遅れがある方もいます。子どもと同じ心で、1人きりの部屋で寂しい気持ちを抱えている方も多く、人とのコミュニケーションを欲している方も多いんです。視覚や聴覚の機能が制限されている分、触覚やその他の感覚に十分アプローチしながらコミュニケーションを楽しめるように配慮しています」運動の効果と価値を本人はもちろん職員にも伝える とはいえ、こうした特別な環境での指導には当然難しさも伴う。感覚が制限されるため、同じことを伝えるにも健常者に伝える何倍もの工夫が必要になる。さらに、運動の時間を施設側が設定して提供していることから、入居者はもちろん、職員の間でも参加へのモチベーションに大きな差がある。各個人でも気持ちや体調に波があり、積み重ねが難しい。そうした環境の中、安全性には完璧な配慮が必要で、かつ、運動を続けることの大切さを知って貰うためには、効果を感じていただくことも必要となる。そのため、どんなに小さなことでも変化を見つけて、それを本人はもちろん職員にも伝えることが何より大切だという。その違いを言葉にして伝え、その変化を一緒に喜ぶ。そこに笑顔が出て、その笑顔から心からの「ありがとう」の気持ちが伝わってくると話す。 障がい者の健康支援の市場は、予算的に厳しい状況にあるという。介護保険が高齢者の支援にシフトしたため、障がい者の現場では、これまで補助金で賄えていた部分を自己負担で対応してきている。その分、運動の価値を伝えることの必要性は以前より高まっている状況にある。障がい者の保護者のサークルなどからボランティアの要請も多いが、生涯体育学習振興機構ではあくまで仕事としての運動指導にこだわることで、長期にわたって価値ある運動指導が提供できると考えている。 担当する2人のインストラクターは、お話を聞いた方旭智子さんフリーインストラクター指導歴8年。障がい者の指導の他、自治体の介護予防事業や民間フィットネスクラブの仕事など多数。青年海外協力隊としてトンガという健康づくりの認識が全くない国で運動指導に携わったことが今の仕事に生きていると話す。言葉を覚え、食事を一緒にするなど生活に入り込む重要性を学んだ。健康運動指導士。感覚刺激とコミュニケーションで身体も心も健康に 福井県にある光道園は、障がい者・高齢者を対象にした総合福祉施設で、日本で初めての盲重複障がい者のための入所型専門施設も運営している。また、足羽更生園では、重度の障害がある方が生活する入所支援施設を中心に、地域の活動拠点を活用しながら支援プログラムを提供している。そこで月数回の運動指導に携わっている旭智子さんと清水厚子さん。障がい者への運動指導に携わるようになったきっかけは、所属するNPO法人生涯体育学習振興機構の理事長である漆崎由美さんの指導に同行したこと。そこでの体験が今の活動を支えている。 「障がい者施設では、それぞれの方が個室で生活していて、聾唖や視覚障害を持つことで、どうしても身体活動が制限されてしまいます。そのため関節可動域が狭くなりがちで、他者とのコミュニケーションの機会も少なくなってしまいます。普段個室に閉じこもりがちな方が、だんだん打ち解けて、楽しそうな笑顔で身体を動かす姿を見た障がい者の指導を始めて3〜7年。やりがいを感じる分、さらに指導力を高めたいと話す。視聴覚の制限や障がいにより、日常の身体活動が制限され、そのことが身体の介護にも繋がってしまう。障がい者施設でも入居者の健康維持は大きな課題であり、今後運動指導のニーズが高まることが予想されている。へのアプローチ新市場開拓のポイント!身体をさする、軽くたたくなど感覚を確かめるエクササイズが安全と効果に繋がる。小さな変化を参加者はもちろん職員とも共有して、関係者にも運動の価値と効果を理解してもらう。お話を聞いた方清水厚子さんフリーインストラクター指導歴6年。障がい者の指導の他、自治体の親子体操や健康体操、民間フィットネスクラブの仕事まで幅広く担当。3人の子育経験が仕事にも役立っていると話す。障がい者November,2012 www.fitnessjob.jp19

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