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October,2012 www.fitnessjob.jp31 他には、デイケアセンターでの介護予防の仕事も精力的に行っているという。これも縁が縁を繋いだ仕事らしい。更には、大手フィットネスクラブでのエアロビクスレッスンを週に五本、そして、全国展開されているプレコリオエクササイズのマスタートレーナーとしての研修業務、最後に専門学校と短大の非常勤講師という顔も持っている。専門学校は週に三日、短大は週に一日勤務しており、専門学校ではゼミも受け持つほどの力の入れようだが、ここ最近の学生の言動には戸惑う事も多々あるという。 「最近の学生は、やたらと『感謝』という言葉を口にするんです。でも、その言葉を使うだけの資格が本当にあるのかと私はいつも学生達に説いています」 その資格とは何だろう? 「『感謝』という言葉はとても重い言葉だと思っています。もちろん、言って頂いた側は悪い気持ちにはなりません。ただ、使う側の人間は日頃からそのような気持ちを持っているか問うてみなさいと伝えています。例えば、些細な事に対してでも有難うという言葉を発しているか、常に礼節を重んじ謙虚に生きているか、物事を目先の損得だけで判断していないか、自己の欲求の解消が思考の中心になっていないかなど、うるさい先生と思われようが、これからも言い続けようと思っています」 彼は若者の将来を案じながらも、いつものように終始穏やかに話してくれた。私自身も彼の言葉やアドバイスに幾度となく気づかされ、救われた経験を持っているだけに、心に響く内容であった。平塚君は今、「心の勉強をしたい」との事だが、それはスキルとして理的な問題がない場合には、基本的には声を掛けて頂いたお仕事は全て受けるようにしています」 なるほど、この話を聞いて、先日当社のマネージャーが平塚君にお仕事のご依頼をさせて頂いた際、心配そうに私に相談をしてきた事を思い出した。 「平塚さん、お盆の帰省期間を短くしてまで、お仕事を受けて頂けそうなんですが、ご依頼しても良いのでしょうか」 彼の仕事に対するポリシー、〝縁を大切にする〟という一片を見せて頂いた。 では、ここで、縁を大切にしてきた彼の幅広い仕事の内容を紹介したいと思う。まず、彼を語る上で絶対に外す事はできない、行政関連のお仕事から。活動拠点である福岡市からの委託を受け、既に15年ほど様々な運動指導を行っているという。先に書いた、0歳児を含む乳幼児の発育を促す運動から、年長者は105歳にまでなる高齢者の身体測定や運動指導、更には小学生の跳び箱や縄跳びなどの体育の授業のような事までと、指導範囲は幅広い。しかし、本当に凄いのは、行政のお仕事全てが福岡市から平塚君個人への直接の業務委託という事だ。数回コースを年何回というものではなく、年間を通して、それも15年も継続しての依頼だというのだから、彼の指導力と人間的信頼度の高さを証明している。当社も、度々彼にはお仕事を依頼させて頂く事があり、平塚君からはかなりの確率で、「行政の仕事を調整してみます」と言うお返事を聞いていたのだが、その回答が今回の取材で納得できた。実は社内では彼の事を「ミスター行政」と呼んでいる事は平塚君には内緒にしておこう(笑)。い年齢層に運動指導を行うようになったきっかけは、仕事に対する一つのポリシーが大きく起因している。そのポリシーとはどのようなものなのか、平塚くんに聞いてみた。 「仕事でもなんでも、〝人との縁〟というものを一番大切に考えています。どんなお仕事であっても、声を掛けて頂けるという事は、必ず理由があり、それが〝縁〟なんです。その縁がどのような縁なのかは実際に触れて、聞いて、そしてやってみなければ分からないものですし、どんなに小さくとも必ず何か実になるものはあるはずなので、物ではなく、本質的な部分での「心の勉強」を指していることは、今回、彼と数時間お話をさせて頂いて感じ取れた。昨今のフィットネス業界は表面的なテイストに走るケースが多いと懸念する平塚君だが、彼の仕事に対する考え方は業界の流れに逆行するかのように、一貫して「健康体力づくり」、「シンプルに体に良い事を指導する」と少しもぶれていない。 そんな平塚君に生き方というものを聞いてみた。恐縮しながらも、語ってくれた内容は、本当に深いものだった。 「人の考える事、行動には全て意味があります。でも、その意味が何かなんてすぐには誰にも分からない。だから、とにかく毎日を一生懸命、全力で生きる。無駄な事などこの世の中には一つもないんです。与えられた縁を一生懸命繋ぐ努力をし、私はまだまだこの世界であがいていきたいと思っています」 最後に、このページの読者に対しメッセージをお願いしたところ、これもまた心に響くものだった。 「日常生活でも仕事上でも良い時もあれば悪い時もある。悪い状態、いわゆるマイナスのエネルギーが優位の時に、慌ててその状況を打開しようと無暗に動く事は得策ではない。マイナスをプラスに変える考え方やエネルギーが湧き起こってくるその時を待つ努力も大切。絶対に本質から目を逸らさないで欲しいと思います」 今回の取材では、個人的にも色々と言葉をもらい、自身の思考を改める部分、または変えるべきではない部分が整理できた。今を生き抜くためには流行やテイストを追い、時代に応じたスキルを身に付ける事も一つの方法なのかもしれない。しかし、平塚君の生き方のように、大地に強固な根をはり、揺るぎない大木のようにぶれない思考を持つ事の方が、人が道を切り開く上で、最も大切な事だという事を改めて確認できた。社会を生き抜く思考法として、ほんの少しだけでもフィットネスインストラクターの方々のヒントになって頂けることを期待し、今回の章を終わりたいと思う。有限会社スポーツゲイト代表取締役社長有限会社スポーツゲイトホームページURL:http://www.sportsgate.co.jp個人BLOG:http://ameblo.jp/sportsgate2001/取材後記今回の平塚くんの取材。期待通り奥深いお話をたくさん聞く事ができた。どうしても表面的な事に左右されがちな私のような人間は、時には生き方や考え方の本質についてじっくりと語り合える人との時間は本当に大切だとつくづく感じた。自分のキャリアをどう切り開いていくか、漠然と不安を感じているフィットネスインストラクターの方も少なくないはず。そんな方には、是非とも、生き方の本質を説いてくれる人や場所、書物などに触れる努力をし、凝り固まった観点をリセット、そしてブラッシュアップする事をお勧めしたい。INTERVIEWER 丸山 寛

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