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栄養学で、グループエクササイズの集客・定着力を高める方法栄養相談は、迷いや悩みを打ち明ける窓口 フィットネスクラブやプロ野球球団での栄養相談を担当する傍ら、日本にネット環境が整い始めた頃にいち早くホームページを立ち上げ、ネット上での栄養相談にも携わってきている菊池真由子さんは、栄養相談を窓口に、様々な人々の悩みを受け付けてきた。 「食事は毎日、すべての人が行なっていることなので、運動に興味がない方とも接する機会が持てます。信頼関係ができると、本心を話してくれるようになりますが、実際解決したい問題は、食事とは別のところにあることがほとんどです。健康食品について質問に来た方が、実は糖尿病やガンなどの病気に悩んでいたり、摂食障害を持つ女性は心の問題を抱えているケースがほとんどです。より多くの方々の生活習慣の改善をサポートするうえで、栄養やカウンセリングの知識を持っておくことはとても有効で、それにより、力になれるお客様の数も格段に高められると感じています」ダイエット指導をきっかけに潜在的なニーズに応える フィットネスクラブでの栄養や食事に関する情報ニーズとして最も高いダイエット。こうした質問に現状ではサプリメントやプロテインの情報を提供するなど、直接的に対応する場合も多いが、菊池さんはその質問の先にある潜在的なニーズに応えることに配慮してサポートしていくほうが習慣を変えることの効果や定着に繋がると話す。 「サプリメントは多種多様な商品があり、配合もそれぞれなので、消費者としてどれが自分に合っているのか教えて貰いたいというニーズがあります。ですが、サプリメントは薬ではないので、栄養士でさえその種類や飲み方をアドバイスすることはできません。ですので、お客様に伝えられるのは、興味を持った方法が危険でなければ、まずやってみて身体の変化を見ること。様々なダイエット法についても同様です。キャッチーな健康情報が蔓延していて、消費者の方々は自分の都合のいいように解釈しつつ質問にきますが、その時は、食事に気を使っていることを肯定して認めつつその方の知識や行動を修正していくようにしています」 また、菊池さんは企業での栄養アドバイスも行なっているが、ダイエットの話を切り口に、メンタルヘルスについての知識も提供しているという。 「特に若い人を対象にした研修では、『三食しっかり食べる』といった食事の話から、『午前中に日光に当たること』『何かをなでたり、タッチするなど手のひらの感覚を刺激すること』『無理にでも笑うこと』など栄養とは関係ない話もします。企業にとっては、メタボよりメンタルヘルスのほうがむしろ大きな問題となっていますので、企業の担当者の方にも喜ばれます。健康は人々や、企業にとっても家族にとっても資産です。栄養指導をきっかけに、それを守るお手伝いができるのが、栄養指導の醍醐味だと思います」ネットカウンセリングの可能性と注意点 菊池さんは栄養指導に加えて、オンラインでのカウンセリング力を持つことで、さらに仕事の幅を広げてきた。だが、オンラインでは時に顧客の持つ心の問題が大き過ぎる場合もあるため、指導者自身が予め自分を守れる環境でそうしたサービスを提供する重要性も強調する。 「ネットでは、相手が見えませんし、心の問題が深い方ほど文章が長くなり、長い返答を期待します。そこで私はネット上ではツイッターのように文字制限がある場でのみ行うことで、この問題を回避しています。人気のあるフィットネス指導者ほど、相談も多く受けるはずです。フィットネス指導者ができることが多い分、自身の仕事の効率や健康状態を守れる環境を作っておくことも重要です」栄養の話がコミュニケーションの幅を広げる エアロビクスインストラクターとして指導歴15年の内藤絢さん。自身が30歳に差し掛かった頃、同じように仕事をしていても太ってきたと感じたことをきっかけに、食事を見直そうと專門学校で食育スペシャリストの資格を取得。続けてフードアナリストの資格を取得して、現在フィットネスクラブでの栄養セミナー講師なども始めている。 食事や栄養の情報を発信するようになり、お客様との会話が格段に増えたという。また、セミナーなどを実施すると、その後呼び止められて質問されることが多くなった。話す人の数も増え、話す内容も深いものになってきている。 「特に初心者の方にとってはトレーナーに質問したくても、運動について以外は何を聞いていいか分からないという声を聞きます。食事については身近な話題だけど、なかなか質問出来ないのが現状。そうした方がセミナーなどに参加して下さると『もやもやが晴れました』と言って喜ばれます。運動面ではカウンセリングなどで自分に合わせた情報が得られるのに対して、栄養面の情報は少ないのでもっと知りたいというニーズを強く感じます」栄養の話で集客力・定着力アップ 内藤さんは、グループレッスンでも、最後の数分を使って季節に合わせた食の話を織り込んでいる。この話を聞くことを楽しみにレッスンに参加するメンバーも多い。 「例えば夏の花火大会の日のレッスンであれば、ビールを飲み過ぎることで身体が冷え、むくみやすくなりますが、おつまみに枝豆や豆腐などの大豆の食品を選ぶ事でアルコールを分解してくれ、冷えやむくみを予防できるという話や、最近はフィットネスユーザーに逆流性食道炎の人が増えている話もします。食べたすぐ後に、激しい運動をしたり、すぐ寝てしまう事で胃が食べ物を消化しきれず、食道に負担がかかることが原因なので、その予防法をお伝えしています。フィットネスクラブのメンバーの方が提供した情報を生活に活かして日常生活が快適になる事で、フィットネスクラブに通う価値も高まり、クラブの定着率にも寄与できると思います」 その他、栄養の知識を得たことで、自身の体調管理が効果的に出来るようになり、レッスンに臨む体調も良くなり、指導のクオリティが高められたと感じているという。運動と栄養両方の指導が公共の仕事にも携わるチャンスが得られるなどキャリアにも好影響がもたらせるのも、栄養指導のいいところのようだ。お話を聞いた方菊池真由子さん管理栄養士。健康運動指導士。サプリメントアドバイザー。 日本オンラインカウンセリング協会認定上級オンラインカウンセラー 大阪大学健康体育部卒業後、阪神タイガース、 国立循環器病センター集団検診部(現予防検診部) 、厚生労働省認定健康増進施設のフィットネスクラブなどで栄養相談を担当。メールやツイッターを使った栄養相談など先駆的な取り組みも行い、栄養指導対象者はのべ一万人を超えるカリスマ管理栄養士。著書に『免疫力を上げるコツ』(同文書院)などお話を聞いた方内藤絢さん食育スペシャリスト、フードアナリスト4級フリーインストラクターとして東京近郊フィットネスクラブで活動のエアロビクス・ステップ・調整系・ヨガなどを担当。イベントでの栄養アドバイスをはじめ、公共施設での健康教室なども担当。大塚製薬フィットネスプロ契約インストラクター。日本医歯薬専門学校オープンキャンパス講師。「栄養」「カウンセリング」「ネット」で顧客層を広げるCOLUMN20September,2012 www.fitnessjob.jp

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