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August,2012 www.fitnessjob.jp99強制的な運動は逆効果に 幼少期の運動が知育に効果があると聞けば、親は強制的にでも運動をさせたくなるもの。だが、柳澤教授は「強制的に運動をさせることは逆効果になる」と注意も促す。スポーツで活躍する人が、必ずしも頭が良くなかったり、人間性があるとは限らない要因がここにある。 脳のシナプスは、繋がっているようで接触してはおらず、一方の脳神経細胞から出される脳内ホルモンを、相手側の脳神経細胞の受容器が受け取ることで、情報がやりとりされている。この受容器が形成されるのも10歳までと言われており、それまでにどんな脳内ホルモンを多くやりとりしているかが、この受容器の形状にも影響を与えるという。 「『できた!』という体験や、褒められて『嬉しい』体験をすると、ドーパミンやセロトニンという、物事に興味を持ってチャレンジしようという前向きのホルモンが出ます。その一方で、無理やりやらされるとストレスホルモンであるノルアドレナリンが出ます。そして、シナプスの受容器もそれぞれのホルモンを受取りやすいように形を変えていきます。10歳までの時期に前向きなホルモンを中心にやりとりしている脳は、その後も前向きホルモンが出やすいシナプスとそのホルモンを受け取るシナプス形状が維持されるのに対して、10歳までにストレスホルモンを多く出していると、受容器もストレスホルモンを受けやすい形状になってしまうのです。すると、その後も少しの刺激にもストレスホルモンを授受しやすい脳になってしまい、ストレス耐性が弱い人になってしまいます」 前向きホルモンいっぱいに脳を育てることも、知育の効果を高めるうえでは欠かせない。そのためにも、子どもには運動を楽しい遊びとして位置づけ、運動が好きになるように導くことが、何より重要であることが分かる。お話を聞いた方柳澤秋孝さん松本短期大学幼児教保育学科教授。専門は幼児運動学。35年間継続研究を行い、15000名以上の幼児期の子どもに運動遊びを直接指導。主な著書に『「生きる力」を育む幼児のための柳沢運動プログラム』(オフィスエム)など。『こどもちゃれんじ』(ベネッセコーポレーション)、『ポピー』(新学社)運動遊び全ライン監修指導・執筆などを行なっている。知育としてのフィットネス
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