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August,2012 www.fitnessjob.jp1515知育としてのフィットネス フィットネス先進国である米国でも、もちろん知育フィットネスは盛んだ。米国では、子どもたちの肥満が社会問題になる中、1990年代前半頃からフィットネスと栄養について楽しく学べるフランチャイズが誕生し始め、約10年後の2004年には、フランチャイズビジネスの中でも、子ども向けのフィットネス&ジムコンセプトのクラブは最も成長率の高い分野として注目された。プログラムも進化し、年齢別に楽しめる遊びや学びの要素を採り入れたり、アート(お絵かきなど)やドラマ(演劇)をはじめ感性を磨くプログラムなども加えた子ども向けジムブランドが登場している。2004年前後の2年間で合計1,200店以上が誕生している。先行大手チェーンは世界展開も始めており、「Gymboree」や「MyGym」などは既に日本でも店舗展開をスタートさせている。 その後、脳科学の研究が進み、現在最新の知育フィットネスとして注目されているのがBOKSプログラムだ。2009年にマサチューセッツ州の学校で採り入れられたこのエクササイズプログラムは、2011年までに70校に広がり、導入後、学力の面でも有意な差が見られ始めている。 このプログラムのベースにある考え方が、ハーバード大学医学部准教授のジョン・J・レイティ氏の著書『脳を鍛えるには運動しかない!』で明らかにされた脳と運動の関係だ。レイティ氏は、運動がなぜ脳を発達させるのかについて、最近の研究をもとに次のように説明する。 「運動をすると脳由来神経栄養因子(BDNF)と呼ばれる物質が盛んに分泌されます。それによって、ニューロン(神経細胞)やその周りの脳血管が形成されることで脳の働きが活性化されます。かつては、人間の脳のニューロンは赤ん坊のころから減りこそすれ増えはしないと考えられていましたが、最新の研究でニューロンが脳内で新たに作られることが分かったのです。運動はBDNFの分泌を増やしてニューロンの新生を促すほか、神経結合を増やしたり、神経伝達物質の分泌を促す効果もあります。全体としてはとても複雑なプロセスなのですが、体を動かすというシンプルなことでそのプロセスを起動できるのです」 同氏は、脳を活性化するには心拍数を最大心拍数の75%以上に上げる、やや強めの運動をさせることが重要とし、さらに運動後に筋肉から脳に血流が戻るときこそが、思考力や集中力が飛躍的に高まるとして、子どもたちに、学校の授業が始まる前の「0時間目」にこうした運動を採り入れることを推奨している。 米国では運動はもはや肥満解消の手段というだけでなく、BOKSプログラムの流れ学力向上にも活用され始めており、これまで知育の観点から見れば3歳までの脳が急速に発達する幼少期の運動が注目されてきたが、小学校以降にも「知育フィットネス」が有効であることを示している。1. 楽しいウォームアップゲーム又は運動訓練 例えば、カードや音楽を使ったゲーム等2. ランニングアクティビティ、リレーレース、 障害物コースリレーや高強度の運動 他にもスクワット、腹筋、エアロビックエクササイズ、 縄とび等 →種目ごとに、なぜその運動をするか、どこを鍛えるの かなどの簡単な講義あり3.グループゲーム4. クールダウンとBOKS Bit (食事などの栄養に関するレクチャー)ハーバード大学医学部准教授のジョン・J・レイティ氏の著書『脳を鍛えるには運動しかない!』NHK出版ハーバード大学医学部のジョン J. レイティ准教授が書いた、タイトルそのままに運動すれば脳が鍛えられるというサイエンス書。脳のシナプス(神経細胞)は長らく再生(=分裂)しないとされてきたが、21世紀のいま、それは間違いだと分かった。有酸素運動によってシナプスは新生する。運動によって、まず脳内にドーパミンやノルアドレナリン、セロトニンなどたくさんの物質が分泌されて気持ちがよくなり、頭もすっきりし、注意力が高まり、やる気が出てくる。新しい情報を記録すべくニューロンどうしの結びつきを促進し、結果、海馬の幹細胞から新しいニューロンが成長するのを促すことから、運動が様々な脳の問題解決に有効であることを解説した書。米国で脳科学研究をもとに生まれたエクササイズプログラムで、始業前に身体を動かすことによる学業成績向上の関連性を提唱したプログラム。キャスリーン・トゥーリー(設立者)が中心となり、米国東海岸で勢い良く伸びている。2010年から同じボストンに本社を構えるリーボック社の支援を受け、現在は世界中に広がりを見せている。楽しくて競争性のない遊びを、1週間に2~3クラス、1回40分程度行うことを特に小学校に勧めている。日本ではリーボックジャパンがスポーツ量販店のゼビオの協力のもと、非営利団体で活動を展開している。現在は主に引退アスリートがインストラクター資格を取得している。とは米国の知育フィットネス最新情報
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