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アスリートを支える仕事のこれまでとこれからトレーナーの育成環境、整う 日本でトレーニング指導者やアスレティックトレーナーの取り巻く環境を開拓してきている一人、東海大学スポーツ医科学研究所の有賀誠司教授は、トレーニングコーチやアスレティックトレーナーの存在意義が日本のスポーツ界にも浸透しつつあり、役割分担も進んできていると話す。 「日本でスポーツチームにトレーナーの配置が進み始めたのは、1990年代頃からです。その契機になったのは、日本でもトレーナー教育が本格化し、トレーナーとしての知識や技術を持った人が増えたことがあります。それ以前は、アスレティックトレーナーとして活動していた人は米国のNATAーATCを取得したひとにぎりのトレーナーたちでした。その後少しずつ同様の役割を持つトレーナーを配置するチームが日本でも増えましたが、そこで働く人の多くは、鍼灸マッサージ師や柔道整復師といった日本の国家資格を持ち、治療にもあたれる人でした。1994年から日本体育協会がアスレティックトレーナー認定をスタートし、1998年にはアスレティックトレーナーを目指す学生を中心とした「学生トレーナーの集い」が企画され第1回目が開催されました。それ以来、アスレティックトレーナー認定者やそれを目指す人が情報交換をしながら、この職種が仕事として確立されるように活動が進められてきています。今では、アスリートの体力強化の指導を行うトレーニング指導者の育成や浸透も進んでおり、東海大学では『スポーツサポートシステム』として、学生時代にインターンとしてスポーツチームや選手のトレーニングの現場でサポート活動を行う環境ができています。大学2年までにJATI認定トレーニング指導者などの認定資格をとれば、有資格者として活動をスタートさせることができ、卒業までに実地経験も積んで、卒業後には即戦力としてトレーニングコーチの仕事ができる力をつけることができるようになっています」細分化するトレーナーの役割分担 JOC情報医科学専門部会委員としてトレーナーの活躍の場を開拓している一人である株式会社R-body project代表取締役鈴木岳さんは、アスレティックトレーナーでありながら、ストレングス&コンディショニングコーチ、パーソナルトレーナーの活躍の場を広げる活動にも尽力している。 鈴木さんはJISS設立当初よりアスレティックトレーナーとして主に選手のアスレティックリハビリテーションから競技復帰をサポートしてきており、数々のオリンピックで選手たちの活躍をサポートしてきた。 「アスレティックトレーナーの重要性に加えて、パフォーマンスを高めるストレングス&コンディショニングトレーナーの必要性に対する認識も高まっていて、予算のある競技団体を中心に、『ストレングス&コンディショニングトレーナー』や『パフォーマンスコーチ』といった名称と役割のトレーナーを置く場合も増えています。オリンピックでも通常はアスレティックトレーナーや治療家が選手村に入りますが、2010年のバンクーバーオリンピックでは、私はアスレティックトレーナーを兼務していたものの、パフォーマンスコーチとしての役割を担い選手村に入りました。海外に目を向けると、選手たちも本番直前まで、かなり本格的なトレーニングをしています。今後、アスレティックトレーナーやパフォーマンスコーチの活動の場も広がっていくと考えられます」トレーナーの仕事を「サービス業」として位置づける 日本でアスレティックトレーナーとして活躍できる道の整備は、この20年間でかなり進んだ。とはいえ、"仕事"として相応の報酬を得て働き続けられる環境整備はこれからの課題となっている。日体協の調査では、無報酬でアスレティックトレーナー活動を行なっている人が2006年の時点で25%いた。その一方で、ここ数年で日本でもパーソナルトレーナーの活用が、スポーツ界でも一般生活者の間でも浸透し、相応の報酬を得てトレーナー活動ができる環境が整ってきている。トレーナーにとっては、アスリートをサポートする仕事の報酬は競技団体やチームに依存していたが、今後は自身で選手やチームと契約できる相応の実力と営業力を備えることで、さらにトレーニングのプロとして活躍の場を広げることができる可能性が広がっている。 鈴木さんは今後さらに活躍の場を広げるうえで、アスレティックトレーナーの仕事を「サービス業」として位置づけ、フィットネスクラブなどでパーソナルトレーナーとして一般生活者の指導にも携わることの優位性をこう話す。 「アスリートをサポートするトレーナーとして活躍し続けるには、そのアスリートが結果を出す、つまり本番で勝てることがすべてです。アスリートは明確な目的のもと高いモチベーションを持っていますが、それでも、トレーニングでその選手の課題を克服していくことは容易ではありません。選手をクライアントと位置づけ、いかにモチベーションを高く持って取り組んで貰えるかが非常に重要になります。フィットネスクラブや一般生活者の方々への指導では、目的意識がアスリートほど明確でなく、トレーニングの優先順位も下がりがち。そこで結果を出せるトレーナーは、トップアスリートにも選ばれる存在になるでしょう。トップアスリートは、そのトレーナーやトレーニングが自分の勝利にプラスになる人かどうか、研ぎ澄まされた感覚で、1回のトレーニングで評価します。選手との出会いが訪れたとき、そのチャンスをモノにするためにも、トレーナーという仕事をサービス業として位置づけ、多くの一般生活者や一般アスリートの活躍を支えることが、自身やこれから出会うトップアスリートを支えることに繋がるはずです。そのことが同時に、トレーナーの活躍の場を広げることに繋がるのです」2010年第13回学生トレーナーの集い12July,2012 www.fitnessjob.jp

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