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現役で活躍できる期間を長くするうえでも、引退後もその分野の仕事に携わり続けられるように、自分の身体だけでなく、人の動きを見て動きの質が分かるようになるような授業をしています。アスリートやダンサー、パフォーマーが、自分の動きだけでなく、人の動きも評価・改善できることは、現役中はもちろん、指導者として、また趣味として続けるうえでも有効です。ピラティスは、スポーツ振興や文化・芸能の継承にも寄与できるものと捉えています」一生スポーツやダンスが楽しめるようになるピラティス柔道整復師として活動している中、患者さんが受動的な治療だけでなく能動的に取り組めるエクササイズがないかと調べる中、米国のセラピスト仲間に紹介されたのがピラティス。トロントでのピラティスインストラクター養成コースに参加。ピラティスのトレーニングを始めて3ヶ月ほどした時に、いつも行なっていたジムでのトレーニングが驚くほど楽に行えることに効果を実感。当初は柔道整復師の仕事にピラティスを活かそうと考えていたが、その効果の高さに、帰国後はピラティスインストラクターとしての活動に専念。現在は、ストットピラティスリードインストラクタートレーナーとしてインストラクターの育成に携わる。少ない反復回数で、一生の効果 大阪心斎橋にあるスタジオビーキューブでは、ピラティスもヨガもプライベートセッションが人気を集めている。ピラティスインストラクターであり、施設代表でもある上泉渉さんはその要因をこう分析する。 「ピラティスを始める方の多くが、以前はキレイに引き締めるシェイプアップのためのエクササイズとしてピラティスを位置付けていたのに対して、最近は痛みや歪みなど身体の不調を調整して、快適な生活や趣味のスポーツを楽しみたいという方が多くなっています。身体を単に動かすだけでなく、自分の目的に合う自分のためのエクササイズをプライベートな安心できる環境で続けたいという方が多くなっていると感じます」 ビーキューブでは初めてピラティスを始める人には、必ずプライベートセッションで姿勢と動きの評価を行い、自分の身体を知ることからスタートして貰っている。そのこともプライベートセッションの人気に繋がっているようだ。 「ウェイトトレーニングやその他のスポーツと、ピラティスの大きな違いの一つに、反復回数が少ないことがあります。一つの動きを10回以上反復するエクササイズは数種類しかなく、基本的には5~8回が1セット。それは、集中して1回1回正しい身体の動かし方を行うことで、“動き”を身体に覚え込ませることを目的としているからです。また、ウェイトトレーニングともう一つ違うことは、筋力トレーニングはやめてしまうと筋肉が落ちてしまいますが、動きは一度身体が覚えてしまえば、忘れることがないということです。つまり一度正しい動き方を習得してしまえば、その効果が継続し、正しく身体を動かす筋肉が使われ続けることで、長い効果に繋げることができるのです」スポーツやダンスと一生かかわれる 上泉さんが提供するストットピラティスの考え方に基づいた指導では、5つのことに着目して動きを観察し改善していくというアプローチをとる。その5つとは、①呼吸、②骨盤の配置、③胸郭の配置、④肩甲骨の動きと安定、⑤首と頭の配置。特に肩甲骨の動きに注目することで、この①~⑤の全ての状態と動きが改善できるとも話す。 「肩甲骨は胸郭の上で縦・横・前後と3次元に動いていますが、この位置や動きは骨盤から脊柱、首、頭へ続く体幹部の状態からの影響を大きく受けています。ストットピラティスが重視する5つのポイントに着目しながら、アイソレーション(1ヶ所ずつ状態を良くしていくこと)と、インテグレーション(全体を連動させて動かすこと)を繰り返し行なっていくことで、身体が効率的・効果的な動きを見つけることができるのです」 この「いい動きを身体に覚え込ませる」という考え方は、ここ数年、学校教育でも注目されはじめ、ピラティスは神戸女学院大学や宝塚音楽学校など、身体の動きについて高いレベルでの教育を行なっている学校にも導入されている。 また、この考え方がファンクショナルトレーニングに通じるものであるこCASE 03とから、ストットピラティスではヨガの動きを採り入れた「ZENGA」やアスレチックコンディショニング&パフォーマンストレーニングのための「CORE」など、ファンクショナルトレーニングを入口にしてピラティスを広く浸透させる取り組みもスタートしている。 「アスリートだけでなく、ダンサーやパフォーマーなど身体を使う職業の人にとって、ピラティスは動きの質が高まると同時に、ケガが減ることでも支持されています。特に学生さんには、PILATESStory上泉渉さんとピラティス12June,2012 www.fitnessjob.jp
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