『月刊NEXT』 No.50
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感じた。そこで選んだのが、整形外科に併設されたメディカルフィットネス施設で働くことある。「当時の私には、知識も経験も圧倒的に足りませんでした。それを身につけるためにどうしたらよいかということを考えたとき、医療の現場で医者や理学療法士の話を聞きながらトレーニング指導をできるメディカルフィットネスのフィールドで働きたいと思ったのです」 ここで、フィットネスの医療的な側面を学ぶと同時にパーソナルトレーナーとしてのキャリアもスタートさせ、一歩ずつ順調に進んでいった。しかし、将来がみえるようになると、経済的な不安を感じるようになった。「将来的なことを考えると、一トレーナーのままではそれなりに安定した生活はできてもそれ以上は難しいと考えるようになりました。自分に何ができるかを考えたとき、師匠だった坂詰真二さんがメディアを通じてトレーニングの指導をしているのを見て興味をもちました。メディアやセミナーを通じて、多くの人に伝える仕事がしたいと。そう思い、再び上京することを決意しました」 澤木さんが多くの人に伝えたかったこととは、「健康づくりの大切さ」。2003年4月、再出発を誓い東京に向かった。 上京を決めた時点で、起業したいという思いはあった。しかし、実際に会社を設立したのは2010年1月。起業までに7年弱の歳月を費やしている。この理由について澤木さんは「知識と人脈、そして何よりも勇気がなかった」と語る。 東京へ出てきたものの、実際は起業する準備ができていなかった。そこで、まずはヒューマンアカデミーを基盤にして教育現場で健康について広め、それ以外の時間はフリーのトレーナーとして活動することにした。静岡在住のころから非常勤講師としてヒューマンアカデミーに勤めており、常勤になったことが上京のきっかけにもなっていた。 講師という立場で学生を教育するうえでは、さまざまな喜びと苦悩があった。「学生とは、後輩に教えるような気持ちで接していました。成長した教え子が業界に増えてきたのは嬉しいことです。しかし、教育に対する熱い想いが伝わらず、限界を感じることもありました」 とはいえ、ここでの仕事はやりがいもあり、収入源としても重要であった。それ故、上京したときに目標としていた起業までの一歩を踏み出すことができないままに時間が経っていった。しかし将来に目を向けると、このままではいけないという焦りが徐々に膨らんでいった。「教育の仕事も好きでしたし、大事なことだと思っていました。生活に困ることもなく、やりがいも感じられたので、その状況に甘えていました。そこから抜け出して自分で会社を興すのが怖かったのかもしれません。でも、不景気になって次第に生徒も減り、それに伴って収入も減りました。そこでピンチを感じてやっと起業に向けて行動できるようになったのです。NESTAの理事としてビジネスについて考えるようになったことも、それを後押ししてくれました」 決意を新たにした澤木さんは、上京してつながりを得た知人からのアドバイスにより、まずはホームページを作成することにした。「自分の専門外のことはプロに任せる」という考えのもと、制作は委託した。上京して約6年が過ぎた、2009年の5月であった。そして、「1年以内に必ず起業する」ことを目標として定め、会社設立のための勉強を本格的に始めた。 そして、目標通り2010年1月に株式会社SAWAKI GYMを設立した。同社はジムの運営やセミナーの開催などの教育事業、書籍の発行や雑誌への掲出などメディア事業を行っている。現在ジムはヒューマンアカデミーの一角で運営しているが、いつか自分のジムをつくることが澤木さんの次の目標である。「自分のハコがほしいと思ったのは、15年前にアメリカでゴールドジムの1号店を見たときからです。“これが本物のフィットネスクラブだ!”と」 このときに描いた理想を現実にすべく、様々な仕事に携わりながらも軸がぶれることなく進んできた。つくりたい理想のジムは「基本に忠実」であること。「基本に忠実というのは、所属トレーナーが筋トレ、有酸素、ストレッチといったフィットネスの基礎をきちんと理解し、お客さまにカスタマイズしたプログラム設計とモチベーションを高められるような指導を提供することです。今、マッサージやエステなどで受動的に身体に気を使っている人たちにも、能動的に使うことのよさを伝えたいと思っています」 今後の目標は「まずは組織を大きくし、事業を拡大すること」。組織力を高めることで、今以上にメディアを活用し、トレーニングのよさを多くの人に知ってほしいと考えている。 そのひとつとして、さまざまな業種の人と手を組んでイベントやメディアを通じたアプローチを行っていくことを計画している。旅行会社とタイアップした健康事業や美容業界と手を組んでイベントを行うなど、アイデアは尽きない。さまざまな業界とつながりがあることも、起業までに費やした時間のなかで得たものである。周囲の人とのつながりを大切にし、視野を広くもつ澤木さんは、フィットネス業界に留まることなく幅広い活動を行っていく。スタッフの意見を取り入れながら、イベントやセミナーを開催する。03起業を目指して上京一歩を踏み出せない日々04念願の会社設立業界活性化のために邁進SAWAKI GYMのスタッフは「どこから見てもトレーナーの雰囲気をもち、知識とホスピタリティあふれる接客ができるスペシャリスト」を目指す。Staff会社名の由来 2003年ヒューマンアカデミーで講師を始めたときに、 当時の学生とともに「澤木ゼミ」を「サワキジム」と名付けた。所在地 東京都千代田区内神田2-10-10 谷合ビル2階webサイト http://sawakigym.com/設立 2010年1月資本金 100万円組織 登録トレーナー13名収支構造 【売上】パーソナルトレーニング事業、イベント運営、教育事業、 サプリメントなどの物販、書籍執筆・監修など 【経費】施設運営費、人件費、web運営費などMay,2011 www.fitnessjob.jp25Organization Data株式会社SAWAKI GYM

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