『月刊NEXT』 No.46
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命施設の設置、運動療法の実施にかかる料金体系を設定してあることなど高い基準が設けられている。「指定運動療法施設に認定されれば、医療費控除の適用を受けることができます。多くの会員さまの健康維持増進に寄与するために、お客さまが出来るだけ少ない負担で生活習慣病や整形外科疾患の運動療法を受けられる専門的かつ総合的なメディカルフィットネスクラブとして特化したいと思いました」 安田さんは、「結果を出す」ということをビジョンとして掲げている。身体に不調を抱える会員さまの症状を改善することやスポーツ選手の障害予防と競技パフォーマンスの向上、生活習慣病に対する運動療法による症状改善や数値改善などが、同クラブの役割であると考え、その目的を達成するために独立以降試行錯誤を重ねている。新しいことを学び続けている背景には、「会員さまと笑顔を共有したい」「人の役に立ちたい」という強い思いがある。「私は小学生ぐらいから『論語』や『五輪書』を読んでいて、人生の目的とは何か、自分自身の使命や役割は何かを模索していました。そして、何か人の役に立つことがしたいと漠然と思っていました。また、過去の自分より少しでも成長していくことが“向上”だと思うので、常に少し高いハードルを目の前に設定して、未来進行形で自分の能力の向上を目指しています。お客さまと接しながら新たな課題に直面したときに、勉強することが楽しいですし、それでお客さまの結果が出るととてもうれしいです」 そんな安田さんのやりがいは、「お客さまに明確な機能の向上や改善が見られ、感謝されること」。結果を出すためにはお客さま自身の努力も必要になることから、運動生理学、機能解剖学とともに心理学の勉強もしている。 また、自分自身が努力するだけではなく、「今できなくても、努力していればできるようになる」という考え方をスタッフにも伝えている。そのため、同クラブで働くスタッフは意識が高く、安田さんの指導を見て自ら学んでいる。 お客さまのことを第一に考えてクラブ運営している安田さんだが、一方で、経営については難しさも感じることが多い。「私は現場第一主義ですので、経営的な部分では足りないことも多々あると思います。経理のことは専門家に任せていますが、正直にいえば今もまだ自転車操業で、いつも厳しい現実的なアドバイスを受けています。ただ、運転資金を調達してスタッフに還元したり設備投資したりすることは経営者の責任だと思っていますので、足りなければ自分の分から持ち出すこともあります。経営については、私利私欲に走らず、出会った人に誠実に接するようにしています。そうすれば、ついてきてくれる人が必ずいますし、助けてくれる人に恵まれると思うのです」 立ち上げからこれまでについて、「特に大きな苦労はなかった」と話す安田さんだが、それはビジョンを達成するために努力を惜しまず、周りの人に誠意を持って接してきたことによる結果であり、おそらくほかの人なら苦労と感じることも「自分の力を伸ばすためのチャンス」と前向きに捉えているのだろう。「毎日『今日も1日やりきった』と思えるよう、目の前のことに手を抜かず、一生懸命取り組むことです。その積み重ねが人間修業にもなり、未来につながっていくと考えています」 今後の目標についてそう語る安田さんは、先のことを考えるよりも、今やるべきことにひたむきに取り組むことを第一としている。そのうえで、「社会全体のなかで、フィットネスの社会的地位や収入の向上に少しでも貢献したい」と話す。 しかしながら、フィットネスの今後を危ぶむべきことも予想されると、警鐘を鳴らす。「理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が来年で10万人を超え、医療に近い知識や経験を持つ方がどんどんフィットネス業界に参入してくることが予想されます。そのときに、日々の勉強を怠るトレーナーは今まで持っていたお客さまが減少する可能性が多いにあるのです。そのような状況のなかでも共存・共栄できるだけの知識や技術を、トレーナーは身につける必要があります」 医療系の専門知識を持つ人々がフィットネス業界に参入することは、健康の大切さが浸透しているなかで当然のことであり一般消費者にとってはプラス要素だが、トレーナーは今後さらに厳しい目で選ばれることになり、より深い知識や経験とお客さまからの信頼が求められる。これをチャンスと捉え、技術を向上させていくことができるトレーナーが、今後も残って活躍するだろう。安田さんは、今後も必要とされる人材を育成しながら、トレーナーの社会的地位の向上に貢献すべく、自分自身も日々新たなことに挑戦している。エルグ・フィットネスクラブでトレーナーを務める松下さん(右)と星さん(左)。「当クラブで働きたいというトレーナーは皆勉強熱心です」(安田さん)。03素直に人に接することで経営を支えられている04「さらなる質の向上が必要」トレーナーへの警鐘お客さまの要望を聞きながら、身体の構造を確認し、適切なトレーニングを提供することも安田さんの仕事。人体模型などを使って論理的に説明し、お客さまの身体への意識を高めることも。Products02お客さまが結果を出せる笑顔を共有できるクラブ会社名の由来 もともとあった、「フィットネスクラブ・エルグ」より所在地 神奈川県横浜市港南区下永谷6-1-1 大津スイミング内Tel 045-823-0480 webサイト http://erg-japan.com/11.html 設立 1999年4月資本金 300万円組織 30名収支構造 【売上】スポーツクラブの企画・運営、 スポーツインストラクターの育成・指導、物販事業、 スポーツコンディショニング系・徒手医学系セミナー開催、 各団体・学会・協会講師 【経費】施設運営費、人件費January,2011 www.fitnessjob.jp25Organization Data有限会社エルグ・ジャパン

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