Fitness Business65
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Fitness Business 65 ◎ March-April 2013132『なぜ、あの会社は顧客満足が高いのか』『価値創造の思考法』『イノベーション・オブ・ライフ』Recommend Books ヒントになる本Text by Takenori Furuya同友館刊黒岩健一郎・福冨 言・川又啓子・西村啓太・牧口松二著本体2,000円+税小阪裕司著東洋経済新報社刊本体1,600円+税クレイトン・M・クリステンセン著翔泳社刊本体1,800円+税同書は前号の特集記事や編集後記、私のフェイスブックなどで紹介しているので、既に読了している方が多いかもしれない。それでもあえて本項でまた紹介するのは、そうした方も含め、何度も読み返してほしいからである。著者は、自社または自クラブのバリューチェーンを整理して、どこに注力すれば事業成果を最大化できるかをたいへんわかりやすくまとめている。恐らく皆さんがこれまでもっていた経営や運営に関する「常識」は覆されるに違いない。例えば、「従業員満足を高めれば、顧客満足は向上するか?」「東京ディズニーランドの仕組みを真似すればうまくいくのか?」「都心型と郊外型のフィットネスクラブにおいて、それぞれの顧客層が求める価値は同じか?」といった問いに対して、著者は「No!」といい、その根拠を示したうえで、現実的なモデルを示している。ポイントは、自社、または自クラブの顧客価値は何かを明確化し、それを実現するために商品・接客・空間をどのようなバランスで整えればいいのかを決め、さらに従業員の当事者意識ともいうべきオーナーシップを、スタッフが身に付けられるように理念・社風、採用・育成、評価・報酬をどうするのかといったところにある。戦略的方向の再構築に大いにヒントを提供してくれる一冊である。著者は、今多くの企業が「価値創造」を実現できていないという。恐らく多くのフィットネスクラブもそうだろう。著者は続けてこういう。「実のところ、消費者は新しい商品を望んでいるのではない。今の消費者が求めているのは、心の豊かさであり、毎日の精神的充足感だ。そこにつながる新しい価値や新しい見方なのである」。では、新しい価値や新しい見方をクラブが消費者に提供するにはどうしたらよいのか? 著者は、そのためのカギが「『ヒト』を軸にしたビジネス」にあるといい、価値創造を実現するための3つのアプローチを本書のなかで紹介している。この3つは、フレームワークではなく、新しい思考ツールを活用するものである。1つ目のツールは「価値要素採掘マップ」。これはお客さまが「買いたい!」と思えるようになる商品の価値を発見し、概念化・言語化するためのものである。2つ目のツールは「感性消費行動デザイン」と「顧客の旅デザインマップ」。これらのツールを使い、お客さまが実際に買うという行動に移りやすいようにするための計画をつくる。そして3つ目のツールが「因果関係ループ」と「システムダイナミックスによるコンピュータ・シュミレーションモデル」。これらは絆と収益の関係性の整理や未来や危機の予測に役立つ。マーケティングを見直そうとする際のよきガイドとなろう。本書は『イノベーションのジレンマ』などの著書で知られるハーバード・ビジネススクール教授 クレイトン・M・クリステンセンが、2010年に自分のクラスの学生に向けて万感の思いを込めて「幸せな人生を送るためにはどう考えてどう働いたらよいか」を伝えた最終講義の抄録である。著者は、心臓発作やガン、さらに脳卒中などを患い、この講義のときには化学療法の副作用で髪の毛がほとんど抜け落ちた状態で教壇に立っていた。彼は学生時代に優秀といわれた同期の仲間の何人もが、年が経つにつれて不幸に見舞われてしまうという事実を踏まえ、これまでMBAの授業で取り上げてきた経営理論が、学生たちのこれからの私生活に起こる様々な問題にも光明を投げかけることを示している。本書が取り上げる主なテーマは大きく次の3つだ。どうすれば幸せで成功するキャリアを歩めるだろう? どうすれば伴侶や家族、親族、親しい友人たちとの関係を揺るぎない幸せの拠りどころにできるだろう?どうすれば誠実な人生を送り、罪人にならずにいられるだろう? これらに対して、複数の企業のケースや検証された経営理論を背景に、生き方や子育てなどの問題にいくつもの示唆を与えていく。真摯で敬虔深く、高潔な人間性をもつクリステンセン教授らしさに溢れるメッセージが豊富に綴られている。

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