Fitness Business 60 ◎ May-June 201274フィットネス業界の未来Feature特 集業の「フィットネスプロジェクト」に招かれれば、該当クラブの隣に「それ以上」のクラブを簡単につくることができます。もっとも、土地がなければ出店できませんから、この立地が参入障壁になっていることは事実です。しかし、逆から見れば、この立地に甘えてきたのがフィットネス業界の現状です。だから、ビジネスの心臓部である「ソフト」と「人」が育たないのです。人を育てるのは5〜10年の仕事です。だから、早く始めた企業が勝ちます。最も、これが面倒だから「明日から役立つ」的な軽くて薄いハウツーが受けるのでしょうが、このマインドからはいい加減に卒業したほうがよいと思います。実行すべき人と技術の育成これら外的要因をブロックし、経営を安定させるには「信念の経営」を高いレベルで実行すること以外にありません。「使命感」と置き換えていただいてもよいと思います。この「信念」や「使命感」のレベルの高さが、外的要因などへの障壁の高さとなるのです。「くだらない精神論をいっている」と思う方は、5年後も10年後もそういっていればいいと思います。他業種を見れば、成長を続ける企業は経営者が「高い志」を掲げ、イノベーションを続けながら、マーケットに必要とされる商品を開発していることは明らかです。すべては「信念に基づいて、長期の時間軸で持続的な取り組みができるかどうか」にかかっています。株式会社ファーストリテイリングが花開くSPA業態を作り上げるのに何年かかったのか、株式会社平成建設が多能工化、全社員化、内製化を作り上げるのに何年かかったのか、同じように旭山動物園が「未来のスに進出したらどうなるでしょう。既存プレイヤーに敵うはずがありません。フィットネス業界における「新業態論」がうまくいかないのも、これと同じ理由です。それにも関わらず、自分勝手な言い訳をつけて自己の取り組みを正当化しているのが多くの現状だと思います。はっきりいえば、「新業態」などお金とアイデアさえあれば誰にでもできるのです。多店舗展開も誰にでもできます。なぜなら、私はその状況に身を置いたことがあるからです。他企業でドロップアウトした中途採用者をマネージャーにし、素人同然のスタッフにトレーナーを任せても、新規出店およびFC展開もできるし、他企業と大差ない運営レベルも維持できます。しかし、このことに疑問を抱けないから、真の成長を遂げられないのです。外的要因の影響このようなフィットネス業界の実情に対し、少子高齢化社会や消費税アップは否が応でもやってきます。さらに他業種でシュリンクした企業が「健康ニーズ」に目を付けて新規参入してきます。例えば、居酒屋市場などはこの20年間で約4,500億円もの売り上げを減じています。これはフィットネス産業全体の売り上げより大きいものです。このような企業が参入してくる可能性は大です。既存のフィットネス企業はこのような外的影響を間違いなく受け、その影響はボディブローのように効いてくると思います。なぜなら、前述のように誰でもできるような運営しかしていないからです。その大きな原因になっているのが「信念」です。「信念」に差がなければ、同じ土俵での勝負になります。仮に私が居酒屋産・「健康産業」という響きに、何となく社会的な意義を感じて参入している・親会社から期限付きの出向で参入している・不動産などを所有しており、その投資(利益)として参入しているそれぞれに個別の事情がありますから、その正当性の如何は何ら問題ではありません。しかし、ここには最も大切なことが抜け落ちています。それは「お客さまの健康」です。もちろん、上記のなかにもフィットネス事業に対して「夢と志を有した経営者」がいらっしゃることを私は知っています。しかし、全体でみれば、このことを真剣に考えている経営者があまりにも少ないと思います。「お客さまの健康」を考えないから、どう見ても売り上げのためにやっているとしか思えない営業施策がまかり通る。「お客さまの健康」を考えないから、都合のいい「経営理念」を毎朝唱和することで満足する。本来、これに異を唱えるべき若者たちも、怖いのか疑問を感じないのか、権力に盲従する。この部分にメスを入れない限り、フィットネス業界の未来を論じることに意味はないと思います。不毛な新業態論フィットネス業界で盛んに行われている「新業態論」も不毛だと思います。「新業態」というのは、現在の商品の「強み」となる基幹商品があってこそ、それを縦方向に掘り下げたり、横方向に展開することで可能になるものです。例えばですが、多彩なメニューを展開するも「強み」をもたないファミリーレストランが、「現在もメニューとして扱っているから」という理由で、ハンバーガーショップ
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