Fitness Business 60 ◎ May-June 201262フィットネス業界の未来Feature特 集例えば、定期的なミーティングの際にクレドに相応しい具体的な行動についてスタッフに話をしてもらったり、また同僚スタッフが行った素晴らしい行動を賞賛する意味で「サンキューカード」に記し、優秀者を表彰したりといった活動をしています。その成果のひとつとして、こんなエピソードを聞きました。ある店舗で、お客さまがチェックイン時に借りたレンタルシューズが足に合わずに、恐る恐るサイズ変更をフロントスタッフに申し出たところ、フロントスタッフが「靴ずれはしていませんか? 大丈夫ですか?」と、お客さまを気遣う言葉がけをしたのです。お客さまは感激され、感謝のメールを会社宛てに送ってくださいました。このようなスタッフの対応はもちろん接客マニュアルには含まれていませんが、こうした行動が自然に出るということは素晴らしいことだと思います。些細なことかもしれませんが、すべてのスタッフがこのスタッフと同じような気持ちで行動できたら、ティップネスはもっともっとお客さまに評価されるクラブになれると思います。こうした地道な取り組みをこれからも大切にしていきたいと考えています。さらに、クレドの浸透を通じ、スタッフが「誇りをもって働ける会社」にしていきたいと考えています。これにも通じることですが、当社は経営者人材育成のために、’10年より執行役員制度を導入し、将来の成長に備えています。今年度も社員のなかから2名が新たに執行役員となりました。ICTを活用した顧客サポートマーケティングに関しては、ICTを活用した基盤の再整備に注力しています。これまでの「MY TIPNESS」という会員専用サイトの機能を拡張し、今年から「iTIPNESS」という新たなwebサービスに乗り出しました。具体的には会員さまへのお知らせの自動配信、パーソナルトレーニングのweb予約、ホームエクササイズのための動画配信などです。モバイル専用機へのリンクも充実しています。現在取り組んでいるのが、CRM、顧客サポートシステムの整備です。来館状況、対応履歴、効果測定などの情報を一元化することで対応のレベルとCSの向上につなげていきたいと考えています。とはいえ、データばかりを集めても有効に使えないと意味がないと思いますので、例えば入会後の一定期間をトラッキングして必要なタイミングで相応しい対応をするなど、店舗での実際のオペレーションに活きるようにしたいと考えています。リアルな取り組みとしては、地域深耕にも従来通り注力していきます。行政や自治体と連携し、イベントの企画や共同参画などをしていきます。継続率アップと退会抑制を志向潜在需要を掘り起こしていくための入会キャンペーンは不可欠だと考えていますが、過度な割引は必ず経営を圧迫します。将来に向けて会費システムが形骸化し生活者に見放されていくだけでなく、キャンペーンで大量集客したお客さまに対してもフォローがきちんとできずに不満を募らせてしまい、結果的に早期退会を促すことにもなりかねません。今後目指すべきは、お客さまの継続率アップと退会抑制にウエイトを置いた経営でしょう。収益のベースとなる在籍数は入会から退会を引いたものなので、まず、入会後のカウンセリング強化やサービスレベル向上を図り、継続率を高めて退会率を通常活動時の入会率に近づけることを目指します。サービス向上という点では、今年から在籍2年以上および5年以上のお客さまを対象に特別会員証を発行し、様々な特典を提供する「ティップネス・ライフタイム・パートナー・プログラム」を導入しました。会員さまはこうした対応をとても喜んでくださいます。次に、入会率を高い水準で標準化するため、見学、体験、紹介などの通常活動での入会獲得率を高めていきたいと考えています。単なるディスカウントではなく、お客さまのトライアルやチャレンジを後押しするエントリーキャンペーンや、体験キャンペーンといった低コストで確実な市場刺激策で在籍増を図りたいと考えています。またweb入会の比率も年々高まってきていますので、従来型の販促手法を見直し、より効率的で世の中のトレンドにあった会員集客方法を探索していきたいと考えています。総合業態再生はソフト力向上が鍵今後の戦略ですが、既述した通り、既存の総合クラブについては「総合」に着目し、自らの強みとするところで価値や魅力を高め、きちんと訴求していくことがまず大事と考えています。ここ数年間で女性専用小規模サーキットトレーニングジムやスタジオ、各種ホームフィットネスなどの市場が拡大しましたが、総合型業態のクラブも工夫次第でその需要のうちのいくらかは吸収できたはずです。どこに問題があったのでしょうか? 例えばシニア層の健康への関心が高まるなか、これまで店舗で私たちが提供していたサービスが本当にお客さまのニーズを満たし
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