Fitness Business 60 ◎ May-June 201260フィットネス業界の未来Feature特 集とはいえ、既存の総合型業態をとるクラブが駄目になるかというとそうではなく、戦略を誤らなければ競争力を高めることはできるでしょう。それには、総合型クラブとしての価値や魅力を高めることが第一に必要です。加えて、立地する市場や顧客のニーズに対応したいくつかの業態をきちんと確立して展開していくことも大事になるでしょう。現在、自社の強みを活かしてティップネス丸の内スタイルやティップ.クロス TOKYOを展開していますが、これら以外にも、これまで培ってきたノウハウを活かし、既存の総合型業態のクラブと連携してシナジーが期待できる小規模・低投資の新業態を今、社内で検討しているところです。高いレベルのパーソナルトレーニングが受けられる成果志向型ジムやスタジオ中心の小規模業態などがこれにあたるでしょう。これらは既存の総合型業態のクラブとは必ずしも競合しません。一定年齢以上の入会者の 会費の一部を補助業界団体としての対応も重要だと思います。フィットネスクラブが国民の健康増進に資する事業であることをアピールし、実効が伴うように行政と連携していくことも大事でしょう。そのひとつが、今経済産業省が進めている「医療生活産業の品質認証制度」だと思います。こうした制度は、とかく機能回復や介護を見据えて導入・運用されがちですが、予防という観点をもって導入・運用を進めていくことが大切になると思います。例えば、一定年齢以上の生活者がフィットネスクラブに継続して通う場合、エコポイントのように会費の一部を国が補助するとか、医フィットネスクラブにとって最大の脅威は、生活者のマインドシェアにおいてフィットネスの魅力や価値が失われていき、余暇時間のなかに占めるフィットネスをする時間がほかのものに代替され減少してしまうことです。お客さまは「健康第一」とわかっていても、辛いフィットネスを続けていくのはたいへんです。プレイヤー側には相当の工夫と努力が求められます。当社はフィットネスの魅力や価値を高めるために、今年から「フィットネスが変わった」というメッセージを発信して従来の辛いイメージを払拭し、無理なく成果につなげるファンクショナルトレーニングを提案しています。昨年、リ・ブランティングした渋谷店などは若年層が戻ってきています。今後も様々な面からフィットネスクラブに通う楽しさを提案していこうと考えています。業態の多様化フィットネス市場はプレイヤーの努力と工夫によって、中長期的には年率1〜2%ずつ伸びていくような時代が来てもおかしくはないと思っています。その過程では、今以上に業態もそのプライスラインも多様化していくと思います。高単価でもそれに見合った価値を提供する業態ができる一方、サービスを絞ったり、簡素化した低単価の業態もまた今以上に増えると思います。前者を代表するのは、知名度の高いトレーナー・インストラクターが経営するジムやスタジオ、後者はサーキットトレーニングジムや初心者向けの中型総合クラブです。他業界でいうと、デパートや大型スーパーが苦戦するなか、ブランディングされた専門店やファストファッションの店が繁盛してきているのと同様なイメージです。ことができます。いずれのブームも若い女性層が牽引しました。当業界でも過去大きく市場拡大したときには、エアロビクスやヨガ、ピラティスなどが流行りました。こうした新たなブームをつくり出す必要があるのではないでしょうか。それには個別の企業の努力も大切でしょうが、業界としてできることもあると思います。協力してブームを後押しするようなことを考えてもよさそうです。ボーダレスの戦いの始まり今後は各ビジネス間での余暇時間の争奪戦になるでしょう。高齢者層でいえば、今はゲームセンターがコンペティターのひとつになってきています。1回あたり1,000円を消費し、週2回通って月8,000円を消費すると考えると、ほぼフィットネスクラブと同じです。カラオケの第一興商が実験的に取り組み始めた「DAM倶楽部」のようなサービスも、私たちにとってのコンペティターになるかもしれません。ただ、協働できる可能性もあります。これは音楽、楽器、踊り、運動などの講座を多数揃えたカルチャーセンターのような業態ですが、カラオケのプレイヤーとフィットネスのプレイヤーが組んで、こうした業態を創造的にリモデルしていき、展開していくということも考えられるでしょう。一方、若年層でいえば、スマホやiPadなどのモバイル端末やエステ、ファッションなどがコンペティターになるかもしれません。エクササイズDVDやホームフィットネス機器などの商品・サービスはヒットが出ては消えることを繰り返すことはあれ、今後も一定規模の市場は残ると思います。これらの商品・サービスはフィットネスクラブにとってさほど脅威にはならないでしょう。
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