Fitness Business 60 ◎ May-June 201252フィットネス業界の未来Feature特 集ます。ならば多少の減免を主張するのは突飛なことではないと思います。実際にプール一杯分に相当する水道代をもらった会社もあると聞いています。業界団体はこういう情報を集め、加盟会社に当局での理論的な説明の方法とともに伝えることも役割のひとつと思います。マーケティング3.0これからの時代のクラブ運営にあたって、重要となる課題のひとつに、利用率を一定レベルに維持しつつ売り上げを落とさないようにするにはどうしたらよいかがあります。利用率が30%以上になり、利用しようと思うお客さまが利用しにくいと感じる状態が出てきていることもあり、一定回数以上利用するお客さまには相応のご負担をいただくことも考えています。また、集客手法についても今後見直す必要があることは論を待たないでしょう。折込みチラシの効率が低減しているからといって、安直に中小規模のチェーンがインターネット広告に注力したとしてもコストパフォーマンスは必ずしもよいとはいえないと思います。地域の企業や商店、生活者に向けてリアルに営業することをもっと強化することが大切になるのではないでしょうか。クラブが認知されていると思っているのはクラブ側だけで、地域の方はそれほど認知していません。例えば、休館日に特定の既存の会員さまの知人、友人を招いてイベントをするなどして認知を高め、会員さまを介して紹介入会を促すことができるマーケティング3.0的な集客手法を採り入れていきたいと考えています。人材教育の重要性組織活性化についてもリアルなコむしろ、きめ細かい対応や高度な指導技術などで海外進出することもできるかもしれません。淘汰される要因は自らの内にある今後淘汰されていく企業、クラブは自らの内に淘汰される要因が潜んでいるのだと思います。繰り返しになりますが、問題点を課題化したり、広い視野から解決策を探したりして、イノベーションにより顧客創造を果たそうとし続けることが大切だと思います。例えば、総合型クラブでプールの稼働率が悪いことが原因であるとするなら、トレーニングウェアのまま泳いでも濡れず、しかも可動域がきちんと確保できるウェットスーツを開発するのもひとつのアイデアだと思います。そうすれば、プールを利用するお客さまも今以上に増えるでしょうし、またジムやスタジオの利用者もウォームアップしてプールを使うことで、主流となっているジム・スタジオからプールへ、という流れをある程度は逆転させることもできるのではないでしょうか。水道代などの減免要求を業界団体として最も取り組むべきことは、水道料金や電気料金の減免ではないでしょうか。スイミングスクール系の業界団体のほうが、フィットネスクラブ系の団体よりもこれらの問題に積極的に取り組んでいるように思います。あるスイミングスクール系の企業のひとつは、当局が汚水を流すため下水料金の徴収をすると法律でうたっていることに対して、「プールの水は汚水ではない」と主張し、下水料金の減免を受けていると聞きました。また自治体から地域の防災用水として協力要請をうけているクラブもあるかと思い組み合わせを決めることはもはやアートに近いといえましょう。直営で経営する複数の業態のフィットネスクラブ、スイミングスクールに加え、指定管理や介護予防など、いくつかの事業を適切に組み合わせていくことが大切です。さまざまな業務にトライすることは資源の横展開にもなりますし、それぞれの事業間にシナジーが働き、そこから何かしらイノベイティブな事業が創造できるかもしれません。何より企業として売り上げを高め、成長していくことができます。売り上げこそ企業がまず成長するために必要なのです。売り上げは、すなわち顧客の支持でもあります。そうした観点から、これからポートフォリオに組み入れていきたいと考えているのがスポーツです。テニス、ゴルフ、フットサル、ランニングなど、アウトドアで楽しめるスポーツはまさにその楽しさゆえ、生活者にこれからもっと支持されていくと思います。きめ細やかな対応を強みにこれからは圧倒的な勝ち組は現れないかもしれません。負けない戦いをすることが求められるのではないでしょうか。既述したポートフォリオ経営を押し進めていくなどして負けない戦いを展開していけば、単一事業で一時期成長している企業が過適応によって淘汰されていくため、その先で生き残ることができるだろうと考えることもできます。先に、「文化」で勝負していく企業やクラブが生き残るといいましたが、対象顧客に対するきめ細かい対応はもともと日本のお家芸でもあり、海外企業のような合理的な経営・運営をするクラブが進出してきたとしても、ビジネスモデルさえきちんとしていれば十分対応可能だと思います。
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