Fitness Business 60 ◎ May-June 201248フィットネス業界の未来Feature特 集後は病院では対応できなくなります。それは、医療機関には受け皿がないからです。民間のフィットネスクラブがこのような方たちの受け皿となり、一定の成果が出せる商品を提供できるようにならないといけないと思っています。フルサービスの運営形態を模索私の理想とするフィットネスクラブは、自社でスタッフを揃え、プログラムをすべて内製化したフルサービスの運営形態です。これは、他社との大きな差別化になると考えています。現行のフィットネスクラブの構成は、会費内のサービスとして、施設提供、施設利用、初期指導、スタジオ・プールなどのレッスンプログラムなどがあり、会費外はパーソナルトレーニングやスクールがあります。将来構想としては、パーソナルの一部やスクールのメリットを会費内サービスとして取り込めないか研究しています。会費の値上げが必要になりますが、これは一考する価値があると思っています。具体的には、ジムにおける基本マニュアルのほかに、一定の指導パターンや事例の多いものを「ジム版のプレコリオ化」することを考えています。例えば、スモールグループエクササイズとして、1.筋肉づくり推奨メニュー「メリハリボディを手に入れよう」、2.「自重で行うエクササイズ」などを、年4回、シーズンごとに新しいプログラムを開発、イベント導入し、成果を考察のうえ経験値を蓄積し、「指導マニュアル」として基本マニュアルと合わせてパッケージ商品化を進めています。スタッフにとっても新プログラムを開発することで様々なことが勉強できると思います。通常業務のみでは、必要性がないとマンネリ化して勉強にも身が入らないと思いますので、これらの活動をスタッフの育成にも役立てたいです。プログラム別に商品化を図るこの新しいかたちのプログラムで、実績づくりと評判づくりを行い、成果を出す仕組みづくりを確立したいと思います。そして、今実施しているアテインヨガ、ピラティスに加え、このジム版プレコリオプログラムを商品化し、外販できるまでに充実させ、将来的にはここから利益を生み出せる仕組みを完成したいと考えています。商品開発と品質管理を積極的に行い、各商品で80%のお客さまが一定の成果を感じてもらえることを目標にしたいと思います。また自己満足に終始するのではなく、エビデンスも必要と考え、大学関係との連携をとることでお墨付きを得ることも重要だと思っています。今後、フィットネス事業に携わる企業としては、人材を育成し、商品化に力を入れていく会社か、指導を外部に委託し、ソフトを他社から購入し続けて運営する会社か、大きく2つに分かれていくのではないでしょうか。指導者の社会的地位の向上私には、フロントやジムで「いらっしゃいませ」「お疲れさまでした」と言っているだけでは、スタッフは満足が得られないのではないかという懸念があります。サービス業としての「おもてなしの心」に加え、お客さまへの運動指導などを通して一定の成果が出ることにより、お客さまに心から「ありがとう」と言ってもらえるような状態をつくらなければいけないと考えています。そのためには、指導現場で活躍するための「武器」をもたせる必要があります。スタッフには他社と明確に差別化できるいくつもの「武器」をもたせ、お客さまに明確な成果を提供できるよう目指すべきだと思っています。今のまま放っておくと、フィットネス業界に(経営・運営・職人)人材はいなくなってしまうのではないでしょうか。会費や利用料金が多少高くても利益の出せる事業にし、その対価としてお客さまに納得してもらえるソフトの商品開発が、業界の行く末を左右するように感じています。また、私は医療との連携は難しいと思っていますが、医療関係者に一定部分を認めていただけるよう努力する必要があると思っています。今、フィットネス業界にとって最も必要なのは、資格の認定です。それは、医師も認める資格でないといけないと思います。この点、今ある日本のフィットネス資格はまだ未完成であると思います。健康運動指導士やアスレティックトレーナーは国家資格ではないこともあり、日本の医療機関では認められていません。アメリカでは準医療資格となっているATCも、日本の医療機関では何の役にも立たない現状があります。ここを皆で何とか変えていただきたいと考えています。スポーツ・フィットネス関係のインストラクター、トレーナー、コーチは、体力面、技術面(職人的経験値)も兼ね備えていなければなりません。その地位や報酬もより向上していくようなキャリアパスをつくり、残していく必要があるのではないでしょうか。私の最終的な望みは、5年後、10年後における「フィットネス業界と指導者の社会的地位の向上」といえるでしょう。
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