May-June 2012 ◎ Fitness Business 6043フィットネス業界の未来特 集Feature資格取得を目指すスタッフや学生もやや安易な面があります。医学や管理栄養士を志す人は、学問的にも経済的にも相応の覚悟をして挑みますが、スポーツ関係の資格取得希望者は安易な気がします。「スポーツが好き」や「指導がしたい」、「一般の人より運動能力があるから資格を取ってみよう」「スポーツ関係しか進めない」などが多いのではないでしょうか。実際に挑戦してみると医学関係の知識も必要であり、心理学、経営学など、運動実技とかけ離れた科目もあり、途中で挫折する人も多くいます。また、近年は合格率も厳しくなっていますから、何回挑戦しても合格できない状況になっています。片手間ではできないのが現状で、最初から大きな志と覚悟が必要だとの認識をもつことが必要でしょう。今後のスタッフの在り方私は、スタッフ構成の在り方としては、専門は外部スタッフを導入したほうがよいと思います。トレーナーを目指す人は専門職になるので、ある年齢に達すると進路の選択を求められます。社員の多くは、総合職としてマネジメントや経営への道しかないのが現状です。しかし、誰もが経営者を希望するものでもなく、現場を回せるスタッフや全店の指導技術レベルをマネジメントするスタッフも必要であると思います。今後は、社員でもパーソナルをすると歩合を受けとることができるような新しい仕組みが必要となるでしょう。また、会社に何らかの魅力がないと、独立心の強い人は自分でやる志向が強くなるでしょう。一方、所属したほうが力を発揮できるタイプの人もいます。独立を覚悟し外部に委託する運営手法をとるか、会社に所属するメリットをつくって独立を防いでいくか、経営者には難しい課題があると思います。所属意識があり、能力や技術力が高い人には、高い報酬が必要とされるでしょう。自分の経験から、所属契約し、かつ自由度が高いと居心地がよいことを知っています。私が契約している専門学校では、「これだけ渡すからあとは自由に動いてくださいよ、しかし最低これだけはやってくださいね」と言われています。このように言われると、かえって責任が重くなります。自分のなかに「最低ここまでやらないといけない」という基準をもち、自分で守れる信条があることが大切になります。それが崩れ、「学校は何もわからないだろう」と、手を抜き出したら最後です。経営者の望むレベル、仕事内容、本人の満足度などが合致しないとうまくいきません。トレーニングの目指すべき方向近年、トレーニングは初動負荷理論や加圧トレーニングなど、様々なかたちで進歩しています。しかし、安易にいろいろなものに飛びつくのは要注意です。気を付けないとトレーナーが踊らされてしまいます。私は、体力には基礎体力、応用体力、機能体力があり、ピラミッド状になっていると考えています。ベースに基礎体力があって、その上に応用体力があり、トップが機能体力です。5〜10年後のスポーツ界を制するのは、機能体力でしょう。基礎体力で劣る日本選手が世界で勝ち残るには、機能体力をどれだけ有効に使えるかにかかってきます。パフォーマンスをするのに必要なスタミナは、年齢を重ねるごとに減るのが普通です。したがって、省エネで最高のパフォーマンスをどのように出すか、どのように動けばもっている機能を最高に使えるかを知ることが大切だと思います。今までフィジカルトレーナーは「筋肉が強くなる」や「柔軟性が高まる」などのトレーニングばかりに注力していた気がします。今、人間の見方は進化してきて、骨の動きをどうコントロールするか、身体の軸のブレはどうなるのかなどの領域に入ってきています。プロテニスプレーヤーのクルム・伊達公子さんがすごいのは、 (選手としては)高齢にも関わらず、体格や体力で勝る外国選手に対し、相手の力を活用して自分の力を引き出し、堂々と勝っているからです。しかも、一度は引退した選手ながら、カムバックしてメジャー大会で活躍する姿に世界中が注目しています。伊達選手は26歳で世界の頂点近くまで上り詰めた後、惜しまれつつ引退しました。それから結婚後の37歳でカムバックするまでは、12年間ブランクがあります。この間、本格的なテニスやトレーニングはしていませんでしたが、ピラティスは行っていました。指導員の資格を取得するほど熱心でした。その効果があり、自分の身体をコントロールできるようになったのです。今まで、テニスの練習では筋力をつけたり、一生懸命脚力をつけたりしていましたが、足を速くするためにダッシュを繰り返しても、それでボールを打てるようになるわけではありません。トレーニング担当のトレーナーは筋肉の付け方のみを考えがちですが、テニスコート上で相手のボールに反応し、省エネで最大のパフォーマンスを発揮することができ、小さくても大きく使えてロスを減らすことができるように改善するトレーニングが、機能体力トレーニングです。一
元のページ
https://fitnessclub.jp/business/e-book/fb60/index.html#43