Fitness Business 60 ◎ May-June 201242フィットネス業界の未来Feature特 集しかし、現実的には多くのフィットネスクラブの社員には、サービススタッフやマネジャーはいても、本物のトレーナーとして活躍できる人はほとんどいません。私が入社したころの25年以上前には、中型クラブにも10〜15人の社員がいましたが、時代の変遷で今は4〜5人ほどでしょうか。結局専門的な指導はパーソナルトレーナーや外部のインストラクターに任せる運営形態をとっています。今後この傾向はますます強まるでしょう。そこに私たちが行っているトレーナー派遣業の生きる道もあると思っています。トレーナーの国家資格の必要性先に述べましたように、本物のトレーナーはそう多くはいないと思います。一部高額な報酬を得ることができるカリスマトレーナーがいるようですが、まだまだ社会的にも経済的にも地位は低いと思います。その低い理由は、社会が認める国家資格がないからです。医師は別格としても、看護師、理学療法士、管理栄養士や整体師などと比較し、アスレティックトレーナーや健康運動指導士などの資格としての地位は絶対的に低位にあります。また、文部科学省、厚生労働省、経済産業省などスポーツ・フィットネス業界を取り巻く省庁の縦割り行政や主導権争いに翻弄されています。アメリカでは準医療資格であるATC(NATA)も、日本では認定されていないのが現状です。らしく活動できる生き方をするための方策として、フィットネス・スポーツ業界の生きる道は永遠にあると思います。これからますます高齢化社会が進むと、運動機能の低下、肥満、リハビリなどにより、運動を取り入れざるを得なくなるでしょう。それらを行う場所としては、安全面、衛生面、サービス面を考えるとフィットネスクラブが最適だと思います。しかし、今のお客さまは様々な施設を経験し、多くの知識をもっています。したがって、中途半端なスタッフでは理論的にも技術的にも対抗できなくなっています。当たり前のことですが、フィットネスクラブのなかには常に本物のトレーナーが必要なのです。例えば、競技スポーツの世界では、肩甲骨がどうか、骨盤がどうか、筋肉がどこからどこについて、それをどのように合理的に使うかなど、人間がもつ資源をスポーツにどうやってうまく取り入れるか常に考えています。また、何を鍛えて、どんなふうに関節が動くか、どのように使うとエネルギーを消耗せずにうまく活用できるかなども常に研究しています。それらは中高年の方たちにも同じように考えることができるわけで、これらの知識をフィットネスクラブにも取り入れ、「人間の身体はこのように動かすと健康にいいですよ」と、理論的に理解しやすい話ができるトレーナーがいれば、かなり有効ではないでしょうか。本物のトレーナーフィットネス業界の未来は、これからの10年で大きく変わっていくと思います。その大きな背景要因には、人間社会や生活の変化があります。私はグンゼスポーツ株式会社の社員としてフィットネスクラブの現場で16年間運営に携わりました。そして、独立後にインストラクター、トレーナーの派遣業を始めて11年になります。この間、一般の会員さまのほかに、世界的なトップアスリート、プロ選手、企業や大学の運動チーム、障害者の機能回復、専門学校の講師など、多くの方のトレーニングや研修に携わってきました。また近年は、JOC認定日本代表強化スタッフや日本ソフトテニス連盟男子ナショナルチームトレーナーとして、アジア大会をはじめ国際大会に関与しています。したがって、主としてトレーナー・コーチの立場からの意見・見解が中心になりますがご了承願いたいと思います。今私たち人間は、モータリゼーション、自動化、省力化などにより、ますます動かなくても生活できるようになっています。しかし、人間は動物であり、動物は動く生物ですから、動くことに逆行した生活環境の変化に伴い、必ず運動不足という反動が生じます。一方、医療の進歩により寿命そのものは伸びてきていますが、ここでの延命は動物としての人間らしい生き方とはいえないと思います。人間高度な指導スキルを強みに、イノベイティブな事業展開で成長スポーツインテリジェンス株式会社 代表取締役社長 川上晃司氏Future 4
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