Fitness Business 60 ◎ May-June 201236フィットネス業界の未来Feature特 集れランニングコストを変動費化させながら、顧客が相応の価値を得られるようにするためには外部のパーソナルトレーナーの存在が欠かせなくなります。実力を備えたパーソナルトレーナーが、プロフェッショナルとして対等な立場でフィットネスクラブなどと協業してビジネスを進めていく時代に本格的に入っていく予感がします。パーソナルトレーナーとしては、これまではある程度所得に余裕のあるお客さまを対象にして成り立っていましたが、これからはもっと広く生活者全般をカバーする役割を果たすようになっていくと思います。オーストラリアに「Jetts」というアメリカの「Snap Fitness」に似たバジェットクラブがあり急成長していますが、ここではパーソナルトレーナーがクラブに月額10万円ほどのお金を支払って仕事をする権利を得、お客さまにパーソナルトレーニングを提供しています。そして、その売り上げのすべてを収入にしています。パーソナルトレーナーは新規入会者を自分のお客さまにしたいために、一人ひとりの入会者に対し丁寧に対応しますから、クラブとしても効率的です。パーソナルトトレーナーを多く配置しているクラブでは7〜8人もいますから、クラブは彼ら彼女らから得る70〜80万円で家賃をカバーすることもできます。一方、既存の大型施設を展開しているプレイヤーについては、今後非常に戦略の取り方が難しくなってくると思います。ひとつのアイデアとしては、温浴・リラクセーション機能を複合した施設として運営することだと思います。ほぼ毎日通ったら確実にスーパー銭湯などに行くより安くなりますし、高品質のプログラムも自由に受けられてお得なわけですから、生活者から選ばれる可能性は高いと思います。さらに、そこに行くと「友だちに会えて楽しい」というコミュニティ機能を備えることができれば、大型施設の魅力をぐんと増すことができるでしょう。また、イベントの告知ボードなどを備えたカフェやスタッフと会話を楽しみながらきれいになれるネイルケアなどのサービスも備えるとよいと思います。意味なき規制の撤廃国や自治体、業界団体に特別に期待することはありませんが、もしあるとすれば、意味のない規制を取り除いてほしいということです。例えば、公衆浴場法は今から50年以上も前の規制がいまだに適用されています。例えば、私どもが温浴施設を、付帯したフィットネスクラブを既存の公衆浴場のある500m圏内につくる場合、1回あたりの利用料金を公衆浴場法で定められた入銭料の5倍以上に設定しなければならないといった規制があるのです。この500m圏内から少しはずれた場所に競合クラブが低価格で出店してきた場合、5倍以上の料金設定をしたそのクラブは果たして競争に勝つことができるでしょうか。ES実現によるQSCの向上既存店のマネジメントについて、今もこれからもずっと大切にしていかなくてはいけないことは、QSC(クオリティ・サービス・クレンリネス)でしょう。これらを一定の水準に保つためには、最前線のスタッフのモチベーションを高めることが大切です。それにはスタッフが仕事を通じて「自分の夢を実現できるんだ」と思えるようにすることが大切になります。当社では、面接や会議などの機能も活用して行っています。また、クラブのビジョンやミッションに添った行動をスタッフが主体的にとれるようにすることも重要ですが、これは今、外部のコンサルタントの方の力も借りて、取り組みを始めようとしているところです。パート・アルバイトスタッフに対して、年1回北海道の温泉に招待し、経営幹部が接待することもしています。また、スタッフらと経営幹部が一緒に富士登山をするなどのインフォーマルなイベントも積極的に行うようにしています。こうした機会を通じて、経営サイドが反省しなければいけない点を確認したり、パート・アルバイトスタッフの悩みを聞いて対応したりしています。コミュニケーションをとることで一体感も醸成されています。機会によって成長を促すリーダーシップについて特に気を付けていることは、スタッフの失敗を許容できる広い心をもつことです。ある仕事をスタッフに任せた場合、どんな結果になるか、経営層はある程度事前に予測できます。しかし、若年スタッフにはたとえ失敗するとしてもやらせてみることが大事だと思うのです。確かに時間もコストもかかりますが、一番学習効果が高いと思います。伸びている会社はこういうことをしていると思うのです。人は機会によって伸びます。そういう意味では常に“出店”という人が成長する最良にして最大の機会をどれだけ会社がつくることができるかが重要になると思います。出店をしていくことで、若いスタッフも「いつか私にもチャンスが来る」という期待感がもて、モチベーションが上がります。また、のれん分けで
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