May-June 2012 ◎ Fitness Business 6027News & Trends注 目 の 動 き美容業界、サービス提供形態が多様化消費者目線がキーワードUBMメディア株式会社 月刊ダイエット&ビューティ 編集長 江渕 敦氏消費者の多くは「健康に美しくなりたい」と思っているだろう。フィットネスクラブがこれに応える能動的サービスを提供しているのに対し、同じ目的をもちながら受動的なサービスを提供しているのが、エステやマッサージなどを中心とした美容業界である。その現状について美容業界に詳しい『月刊 ダイエット&ビューティ』編集長江渕敦氏に話を訊いた。サービス受給者の高齢化 介護、医療との連携が必須エステ、スパ、リラクセーション、ヘアケアなど美容業界の市場規模は約3兆円。この数年間ほぼ横ばいである。「ライフスタイルや生活者の意識の変化に対して、サービスが適応しきれていないのが現状」と江渕氏は話す。市場にはどのような変化が起こっているのだろうか。そのひとつが高齢化である。ネイルサロンに通うのは、数年前までは20〜30代の女性がメインだったが、現在は高齢者が増えるとともに男性客も少なくなくなっている。しかし、市場が広がっている一方で、ブームによって単独店が乱立し、ホームケア用品も充実してきているため店舗間の競争が激化している。顧客層の広がりに対応するのが、スパやエステ、フィットネスクラブ内での展開だ。「賃料も安く、ほかのサービスを受けるために来館するお客さまが施術を受ける機会を得られます。成分が改良されて匂いがなくなったことで、複合施設で展開しやすくなりました。今後さらに増えていくでしょう」と、江渕氏は今後の展開を予想する。アロマ関連のサービスも、医療や介護の分野と連携した高齢者への提供が進んでいる。アロマによる心理的作用は以前から実証されているが、それが介護や終末医療における緩和ケアとして利用され始めている。今後は美容の分野以上に医療、介護の分野で利用されていくことが想定される。低価格化で裾野を広げ 人口減少に対応低価格のエステティックサロンの登場も、新しい流れだ。30分2,980円の「NAS エステティック」や10分1,000円の「BeautiQ」など、高級なイメージのあったエステティックサロンに低価格のサービスが増えている。これらは、従来の施術のなかのメイン部分だけを提供するもので、カウンセリングやクールダウンなどをオプションとして追加することができる。エステ離れしている若年層を中心に底辺拡大を目的としている。忙しい人が短時間で希望するサービスのみを受けられることも、受け入れられている要因のひとつだ。客単価の低下が懸念されるが、「施術時間の延長やオプションメニューの追加をする方も多いですから、単価としてはそれほど落ちないと思います。それ以上に裾野が広がることのメリットのほうが大きいのではないしょうか」と江渕氏は言う。ライフスタイルや志向を尊重 求められるサービスの変化ライフスタイルや個人の志向を重視する傾向も出てきている。その流れのなかで伸びているのがホームケア用品である。通信販売による美容、健康グッズの売り上げは年々増加。オーガニックシャンプーやスカルプケアなど高価格のヘアケア用品の売り上げが高まる一方で、ヘアサロンの客単価は下がっている。「ライフスタイルが多様化するとともに、自分のスタイルを大切にする人が増えています。美容商品の質が高まり、自宅のケアでも十分な効果が得られるようになっていることも、サロンからホームケアに移行している要因だと思います。今後もこの流れは加速していくでしょう」また、個人の志向に応えるサービスとして江渕氏が注目しているのが、「イセタン ミラー」である。今年3月、三越伊勢丹が、百貨店でしか買えなかった高級ブランドを扱うコスメセレクトショップを駅ビル内にオープンしたのだ。百貨店の売り上げが伸び悩むなか、若年層獲得のためにとった施策である。ここではビューティーコンサルタントがブランド横断のカウンセリングに対応し、お客さまに合った提案をする。「ネイルサロンのテナント化やイセタン ミラーの例のように、消費者の視点に立った施設やサービスの提供が今後ますます求められていくでしょう」と江渕氏は言う。「今までのような提供者側の都合でなく、利用者が欲しいサービスや商品を望む方法で手に入れる時代です。このような施設では、消費者はそれぞれに合った方法で目的を果たすことができます」総合フィットネスクラブの施設規模であれば、このように消費者に合ったサービスを提供することも可能である。「健康で美しくありたい」。多くの人が求めるニーズに応えるべく、美容、フィットネス、医療が連携をとりながら消費者の需要に合わせて提供することが求められていくだろう。
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