Fitness Business 60 ◎ May-June 2012178『イノベーション 5つの原則』『「事業計画書」のつくり方』『こうすれば顧客満足を越える店になる』Recommend Books ヒントになる本Text by Takenori Furuyaカーティス・R・カールソン、ウィリアム・W・ウィルモット共著ダイヤモンド社刊本体2,400円+税原 尚美著日本実業出版社刊本体1,600円+税渋谷行秀著商業界刊本体1,428円+税成熟化が進み膠着した状態にある現在のフィットネス市場を再び成長させるために必要なのは、基本を押さえたマーケティングと、一気に潜在ニーズを換気し、捉えるイノベーションだろう。後者の実現はとりわけ難しい。どうしたらイノベーションを起こせるのだろうか? これに対してヒントを提供する書籍が最近何冊か出版されている。クレイトン・クリステンセン他著『イノベーションのDNA』(翔泳社刊)では斬新な発想をするためには、①関連づける力、②質問力、③観察力、④ネットワーク力、⑤実験力の5つが必要と説いている。また、フィリップ・コトラー他著『コトラーのイノベーション・マーケティング』(同社刊)では、組織がイノベーションを実現するには7つの役割をもつ人材が必要として、アクティベータからファシリテータまでで構成されるA-Fモデルを提示している。こうした数々の類書のなかで最もわかりやすく実践的と思われるのが本書である。世界最高峰の研究機関SRIが組織的イノベーションを実現するために生み出した5つの原則とは、すなわち①真の顧客ニーズの発見、②価値の創出、③リーダーの出現、④チームの構築、⑤組織力の方向付けであるが、このなかの②の項目で提示しているフレームワークのNABCがとりわけ役に立つ。このNABCを知るためだけでも本書を読む価値はある。フィットネス業界にあって、これからの時代に間違いなく今以上に重要視されるもののひとつに「指導力」がある。お客さまが望む成果を確実に提供できる指導力を備えたトレーナー・インストラクターは、それを強みにした商品・サービスを開発し、独自のビジネスモデルを構築することで、独立起業できる可能性が拡がるだろう。では、独立、起業する際に、最初に必要となるビジネス力とは何か。アイデアがあるのなら、それを事業企画書としてまとめる力だろう。起業家本人の頭のなかで、なんとなく整理されているものを口頭だけで伝えようとしても、金融関係者や建物オーナーなど多くの利害関係者の支持を十分に得ることはできにくい。本書は事業計画書をスムースにつくるためのガイドラインとして最良の一冊といえる。税理士である著者はクライアントの事業計画書の作成を何度もサポートするなかでつかんだ手法と、そのポイントについて詳しく解説している。著者は、事業計画書は、①企画、②事業コンセプト、③ピープル、④事業戦略、⑤事業戦術、⑥ロードマップ、⑦アクションプランの順で出来上がっているという。このプロセスに添って全部で51の質問に次々と答えていくことで、まとまりのある事業計画書をつくることができるとしている。社内起業家や企画を仕事にする者にとっても役立つ書籍となろう。企業が継続して成長していくためには、明確なビジョンと、戦略ビジネスモデルがあることが前提となるが、さらに重要な条件として、実行力があることが求められる。とりわけ低成長経済のもと、市場が成熟化する一方、統合が激化していくこれからの時代にあって、生き残り、成長していくためには、これまで以上に、市場最前線での高い実行力が求められる。フィットネスクラブでの場合の実行力とは主に、お客さまが望める期待を越える満足、感動を提供する力と言い換えることができよう。本書は長年、フィットネスクラブを含む各種サービス業のミステリーショッピングリサーチや、その結果に基づいたコンサルティング活動をしてきた業界最大手のMS&コンサルティング常務取締役、渋谷行秀氏が「こうすれば顧客満足を越える店になれる」実践ノウハウをまとめた書籍である。顧客満足を実現する以上に、顧客感動の実現を目指すこと、それをすべてのスタッフが顧客目線をもって主体的に目指せるようになること、それにはまず店長が理念を理解すること、その浸透をミーティングなどを通じてスタッフが自ら考えるように導くことなど、実行力が最大に発揮される仕組みとそのポイントを実例を挙げてさらにわかりやすく解説してくれている。間違いなくフィットネスクラブ経営を成功に導くテキストの一冊になろう。
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https://fitnessclub.jp/business/e-book/fb60/index.html#178