May-June 2012 ◎ Fitness Business 60171発想の転換(他業種から学ぶ点)暖かい日が多くなり、着々と夏に向かっていることを感じます。この季節の変わりめは、体力を消耗しやすい時期ですからきちんと休養をとり、栄養もしっかりとりましょう。前号では町の電気店を例に挙げお話ししましたが、このような話は、業種は違えど私たちも参考になることが多かったのではないでしょうか。旧態依然のスタイルから脱出し、自店の特徴を顧客に目に見えるかたちで訴求することを無視してしまえば、衰退に向かうのは誰もが想像つくことでしょう。ちなみに皆さんは、きちんと自クラブの特徴について即答できるでしょうか? もしできなければ、顧客アンケートをすぐ実施し、統計をとることをお勧めします。それでは、今回のテーマに入りましょう。ある飲食店についてのお話です。この店は、毎日イベントを行っています。例えば、月曜日は午後7〜8時までは飲み物が半額、火曜日は女性の方のみデザートサービス、水曜日は銀行員の方であれば、合計金額から1,000円引きなど、毎日何がしらかのイベントを行っているのです。さらに、その内容を月ごとに変えており、月末になると翌月の予定を記載した紙をお客さまに手渡ししています。そのお店は大繁盛しています。なぜでしょうか? お得だから? 料理がおいしいから? それとも店の雰囲気がよいからでしょうか? 私の思うに、そのイベントが、多くのよく似た店がある中でも、「一度来店してみようかな」と思わせる仕掛けとなっているからだと思います。看板だけでは店の味はわかりません。しかし「なにか面白そうだな」「あっ今日は水曜だから行こう」など、人を惹きつけるサービスがあれば、自然とお客さまは集まります。そして、行ってみたら味も雰囲気もよいとなれば、継続して通ってくれる可能性も高まります。ただ安売りをするのではなく、曜日や時間帯で新しいサービスを提供するなど、積極的に行っていくことが、お店の特徴づくりには必要な要素でしょう。また、そのお店の方が、来店された方にお店のサービスなどについてアンケートに答えていただき、その結果を実際のサービスに反映させている点も見逃せません。店を来店者とともに創造していっているのです。自身の意見がサービスに反映されたお客さまは、ほかの顧客よりもロイヤルティの高い位置に引き上げられたような気がして、嬉しく感じるはずです。飲食店で「食事が美味しい」ということは、ある意味当然のことですが、そこにさらになにかお得感や楽しみがあると、そのお店自体の存在感を惹き立てます。ぜひ皆さまも参考にしてみてください。さて、フィットネスクラブ業界は、どのようなサービスをお客さまに提供しているでしょうか? いろいろ行っていると思いますが、基本的には施設提供および指導提供が基本になるはずです。そして、お客さまにさまざまなマシン、プログラムに参加していただくということが基本サービスかと思います。そのなかで、マシンは基本的に常に同じであり、もちろん週や月などで変わることはありません。プログラムは、輸入されたものから分化したものまでありますが、昨今においては、出尽くした感があります。クラブにおいて、最も魅力があり参加率が高いのは断然スタジオです。それだけお客さまの期待が高く、お客さまにとってクラブの魅力のひとつになっているのだと思います。フィットクラブの利用者の平均年齢は年々上昇し、若年層の入会率は逆に低下しています。中高年層の参加者を、この流れに沿って伸ばそうとすることに力を注ぎ、若年層の参加者を伸ばそうとする努力を怠れば、クラブの活性化は難しくなります。テニスクラブなどにおいては、20代クラス、30代クラスなど、年代によるクラスをもうけ、ほかと差別化して運営を継続しているクラブもあります。同年代が集うことで会話もはずみ、参加することによって新しい友だちが増えることなども魅力になるのでしょう。すでに同様のことを行っているクラブもあるかもしれませんね。男性のみのクラスや、女性のみのクラスなどを設定してみるのも面白いと思いますが、実行することがなかなか困難であれば、まずはイベントで行ってみることをお勧めいたします。これからの時代、必然的に健康維持や増進ということに即反応する中高年の方の参加は見込めますが、若年層への取り組みを怠れば、クラブの活性化はないと思います。ターゲットを絞ってアピールすることは大事ですが、そのほかをまったく度外視してしまっては、悪循環をまねきターゲットすら伸ばせないということにもなりかねません。ぜひ柔軟な発想を若い世代から収集してみてください。KSCタナベスポーツアカデミーの吉鶴明氏による連載。今号では、ある飲食店でのサービスを参考に、クラブでも積極的に新しいサービスを提案することの大切さを述べる。KSCタナベスポーツアカデミー 所長 吉鶴 明 Sketch連載16 ◆ 素描
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https://fitnessclub.jp/business/e-book/fb60/index.html#171