May-June 2012 ◎ Fitness Business 60167クラブの存在価値があると思うのです。それはCS調査といった、短期的・感覚的な消費者満足という要因に偏りがちな尺度のみで判断できないのではないでしょうか。食生活の本質が、単なる動物的食本能の充足だけではなく、正しい栄養摂取という知的行為こそが大事であるように、フィットネスという行為やフィットスクラブの存在意義(価値)の根底には、「フィットネス効果の実現」という目標が厳然と存在していると思うわけです。無論、オリコンのCS調査10項目(1.手続きの容易さ、2.スタッフの指導能力、3.会員プランの豊富さ、4.適正なスタッフ数、5.コストパーフォーマンス、6.スタッフの対応のよさ、7.施設の清潔度、8.駐車場・駐輪場の充実度、9.通い易さ、10.施設の充実度、など)が、クラブの価値を評価する尺度としてまったく不適当といっているわけではありません。ただ、この10項目では仮にどのように項目別採点基準を加重したにしても「真に価値あるクラブとは?」の問いに答えるには不十分であると思うのです。例えば、「手続きの容易さ」や「駐車場の充実」は、クラブの価値まで左右するとは思えませんし、「会員プランの豊富さ」「施設の清潔度」「適正なスタッフの数」といった諸項目も、「真に価値あるクラブ」について考えたとき、どれほどウエイトをもって評価に加われるか、疑問があります。どうやらこれらはフィットネスクラブ固有の項目ではなく、お客さまの「そうであったらよいな」の願望をただ羅列しているだけであり、そのままスーパー銭湯やホテルにあてはめてもよさそうな項目のように感じます。そもそも、好景気ならともかく、不況の真っ只中にある消費者は、必需品に対しては「やむを得ない」から買いますが、「あったらいいな」的なものに対しては財布の紐が固いものです。「あれもこれもあるけれど、高いですよ」といったもの(やこと)には手を出さず「必要な機能や求める効果だけはしっかりと盛り込んでいるけれど、余計なものは一切省いていますので、お手頃価格ですよ」というものを求めているはずです。そういえば、先般ボストンに旅行し、ついでにひなびた郊外住宅地にあるゴールドジムを訪問しました。建物・設備など、どこを見てもややみすぼらしくそっけない感じでしたが、近くに住んでいると思われる会員さんたちが、真面目にトレーニングに励み、結構繁盛しているようでした。その光景を見て、クラブは本質的な欲求にさえしっかり応えていればほかはどうでもよいのかなと考えさせられました。いつぞや「映画館がいくら立派だって、肝心の映画がつまらなければ誰も見に来やしないよ」と書いたことがあります。極端な比喩ですが、そういったことと一脈相通ずるものがあるのではないでしょうか。私が四半世紀を超える会員体験のなかで3,000回以上のクラブ通いを重ねた結果から、何が最も自分にとってのクラブの「価値」だったかと問われれば、喜寿(77歳)を過ぎた後期高齢者にも関わらず、多くの方々が「お若いですね。60歳代ですか」と言ってくださるように、心と身体の両面での老化現象を幾分なりともクラブ通いが止めてくれているらしい、という事実です。そのうえの付随的な価値として、その瞬間・瞬間を楽しい時間として過ごし(若い女性インストラクターやメンバーさんと一緒に踊る、ということが楽しくないという変人はいないでしょう。ZUMBAは老人にとっても十分楽しい踊りです)、技能・体力のささやかな維持と向上に達成感・生きがいを見出し、友人を得て、結果として美味しい食事・お酒・交友をエンジョイできた、ということなどが挙げられるでしょう。こういってしまうと、どうやらクラブの価値はクラブが具体的に用意したものよりは、私的で内発的な、個々人の取り組み方に左右されるものであり、そこにどのようにクラブが介在できるかにかかっているような気がしてなりません。ここまで、突然問題を私的なレベルで矮小化してしまい、申し訳ありません。もしかすると、クラブの価値というものは、人によって個々に違いがあるのかもしれません。問題をCS調査に引き戻すと、スタッフの指導能力や対応の良否、コストパフォーマンス、施設の充実度などは、クラブの価値と何らかのつながりがありそうに見えます。とはいえ、これら施設のハードやスタッフたちとの関わりとしてのソフトはさほどの意味なく、結果としてのフィットネス効果を個々人がどこに見出し、動機付けし、いかにそこに近づくかに協力(介在)できるか、にクラブの価値があるような気がします。そうであれば、その肝心の「フィットネス効果」とは何でしょうか。フィトネスという言葉は、何かに対しフィット(適合)するということにその語源があり、要するに、個々人に適したよい健康状態をつくることでしょう。例えば、ある種のスポーツ競技をしているアスリートにとってはその競技力の向上に寄与する身体づくりであり、モデルさんにとってはモデルとして観賞するに値する体型をつくることでしょう。心身を目標とする姿に変えていく、そこに向けた変化を結果として出していく、それがフィットネスの本来の価値でしょう。とすると、それは個々人によって異なって当然でしょうし、だからこそクラブの価値の内容は人によって変わってくるのでしょう。そう考えたとき、私は突然のようにゴールドジムの世界共通スローガンを思い浮かべるのです。SERIOUS FITNESS FOR EVERYBODY、RESULT FOR EVERYBODY、CHANGE YOUR BODY、CHANGE YOUR LIFEの3つです。私は、この3つ目のスローガンにはCHANGE YOUR MINDを付け加えたいと思っているところです。View見 解
元のページ
https://fitnessclub.jp/business/e-book/fb60/index.html#167