May-June 2012 ◎ Fitness Business 60163タッフとなる観察者…演技を観察する役割(演技者以外の全員が観察者となるのが通常)③評価設定観察者が何を重点的に見るのかも重要なポイントです。例えば、以下のようなものがあります。・会話の内容そのものや業務の技術的側面・話し方や態度といったコミュニケーションスキル以上の2点はどんな職種においても重要ですが、ロープレはこの2点を同時にチェック・訓練できる優秀な手法です。そのときのテーマによって評価すべきポイントを具体的に設定し、観察シートを準備しましょう。観察者(およびお客さま役)は、スタッフ役の、マニュアルに沿ったスキルや商品知識の有無などを見るだけではなく、話している最中の視線や話の聞き方、立ち方・座り方、身振り手振り、間のとり方、お客さまとの距離のとり方など、あらゆるコミュニケーションスキルをチェックすることができます。ロープレを成功させる5ポイント①照れずになりきる普段、一緒に仕事をしているほかのスタッフと行うロープレは何となく気恥ずかしいものです。ここは、研修担当者が事前の説明によって、どれだけ「その気」にさせることができるかが肝心です。それでも、照れや遠慮からか、実際には有り得ないようないい加減なやりとりになってしまうのはよくある光景です。しかしそれでは意味がありません。そして、重要なのはお客さまの役割です。スタッフ役がそのロープレに心から入り込み、その結果、本当の姿や実力が露出するかどうか、つまり課題を発見できるかどうかは、お客さま役がどれくらい上手に演じるかにかかっています。上手にというのは、単に演技力ではなく「真剣さ」です。②お客さまの心理状態を体験するスタッフ役の人の会話やスキルの向上だけがロープレの効果ではありません。普段、接客をしているスタッフがお客さまの役を演じてみて、「お客さまがどんな心理状態になるのか」を体験できるのもロープレの大きな利点です。「お客さまの立場になって」という言葉はよく使われますが、本当の意味でのお客さまの立場にはなかなかなれないものです。お客さま役を何度か体験することで、お客さまが「何を考えているか」「スタッフのどんな態度や言葉が気になるのか」ということが、徐々にわかるようになります。擬似体験ではありますが、スタッフの営業トークや態度・動作を見聞きしたときにどんな気持ちになるのか、どんな印象をうけたのか、「もっとこんなことを聞いてほしかった」と感じることなどを体験することが重要です。③客観的に分析するお客さま役は「自分の説明の仕方と、この人(スタッフ役)の仕方の違い」を比較分析するのではなく、「自分がお客さまで、この人が見学対応をしてくれたら入会するだろうか?」ということを感じとることです。観察者役は設定された評価項目のシートを手元に、メモをとりながら観察します。観察者は研修を受ける当事者ではないような感覚になりがちです。客観的に見ていたからこそ気づきがたくさんあるはずですが、経験の不足しているスタッフや意識の低いスタッフは、その気づきが少ないのです。気づきがなければ接客の改善向上も望めません。問題点を発見し、それをどう改善したらよいかを体験から自分で気づくことができるのがロープレ研修ですし、「気づかない」自分に気づくことも研修効果のひとつでしょう。④率直なフィードバック観察者はメモしたことをもとにスタッフ役にフィードバックを行います。気づいたこと、感じたことを細かなことでも本人に伝えます。お客さま役は「お客さまの立場として」スタッフ役の人に、会話や動作、視線や雰囲気、そのほかから自分がどんなことを感じたかを率直に伝えます。遠慮して「よかったと思います」というフィードバックでは、そこからは何の発展もなく研修の意味を成しません。上司・先輩からの上から目線の評価も問題外です。「弱点を指摘することでもっと成長してもらいたい」という観点からフィードバックし、それを受ける側も素直な心で受けとめましょう。また、問題・改善点だけでなくよかった点、見習いたい点を伝えることも大切です。可能ならビデオ撮影したものをリプレイしながらのフィードバックはさらに効果があるでしょう。⑤真剣さと繰り返し繰り返し経験を積むことで上達することもありますが、ただ「繰り返す」「続ける」ことが目的になってしまい、本当の狙いや目的が忘れ去られてしまうケースが少なくありません。スタッフ役とお客さま役の2人で、だらだらと話しているだけのロープレは時間の無駄です。なぜロープレをやるのか、何を目的にやるのか、それをしっかり確認したうえで真剣に準備し、真剣にロープレ・フィードバックすることで効果が出ます。長時間では集中力もなくなり心身ともに疲れてしまいますから、「短時間に集中」して実施すると効果的です。内容やスタッフのレベルにもよりますが、1グループを5名、1回のロープレを5〜10分、フィードバックや討議を10分〜15分、全体で90分から120分くらいのセッション。それを、毎月テーマを変えて繰り返すことが効果的です。お客さまからのよい反応が得られないと、スタッフはどこがどのように悪いのかがわからず落ち込んだり悩んだりします。ロープレをすることにより、第三者の意見を聞くことで修正個所を早期に発見できたり、改善の方向性が見えやすくなり、取り組むポイントも絞れるため、試行錯誤する時間も短縮できます。ロープレはとくに経験の少ない新人に効果的です。また、集合研修などの場だけでなく、オフィスや休憩時間などを利用して、上司や先輩、後輩など職場の仲間に協力してもらえば数分という短時間で実施可能です。ロープレをうまく活用して接客力・コミュニケーション力、そしてスタッフの自信を高めてください。フロント改革
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