Fitness Business 60 ◎ May-June 2012162「どうすればスタッフの接客力・コミュニケーション力がアップするのか」というご質問やご相談をいただくことがあります。多くの場合、その原因はスタッフの「情報を引き出す力」「質問力」が弱いという点です。「話す力」は当人がもともともっている話題の広さや深さによりますが、接客におけるコミュニケーションには、「話す」ことより「質問する」ことが一番のポイントです。質問ができるということは、「どれだけお客さまに興味をもっているか」ということです。興味がなければ「質問・疑問・聞きたいこと」はなかなか思い浮かびません。そうなると、ワンパターンで表面的な質問で終わってしまい、会話も断片的・マニュアル的な接客となってしまいます。通り一遍、ありきたりな質問ではお客さまの心の琴線に触れることもできません。例えば「なぜ、スポーツクラブに来ようと思ったんだろう?」という素朴な疑問からスタートします。それを質問という会話にしてお客さまの情報・ニーズとウォンツを引き出していくことで、お客さまの心に寄り添う接客が可能になるのです。質問力・会話力のレベルアップということでいえば、ロールプレイング(以下、ロープレ)の継続実践でかなりの向上が認められるケースがほとんどです。私の研修では講義で習得してほしいこと・気づいてほしいことを伝え、そのあとで「では実際にやってみよう」とロープレを取り入れています。ロープレに必要な3つの設定質問力・会話力のレベルアップには経験・パターン認識が有効です。数々の接客場面を想定し、シナリオを体験することで実体験に近い状況を作り出すのがロープレです。お客さまとの会話をスムースに進めるには、事前の練習が欠かせません。ロープレで疑似体験することにより経験不足を補うことができます。また、真剣な疑似体験は必ずリアルな経験の糧になります。だからこそ、何を意図してロープレをするのか、そこから何に気づいてほしいのかなど、ロープレの設定をしっかり行うことが重要です。①状況設定「状況設定」は特に重要です。何を主眼にしているのか? 目的は何なのか?などを明確に、それに合った「状況設定」をしなければ、研修そのものに意味がなくなる可能性もありますので注意しましょう。例えば、見学に来られた40代の女性のお客さまがいたとします。スポーツクラブは初めてで、もともと運動は苦手。ダイエットしたいけれど続けられるか不安だと思っている。今回の目的は「お客さまの不安を取り除き入会に導く」といった設定を具体的にします。そして、それを皆で共有してロープレを開始します。ぶっつけ本番のロープレでも臨機応変な対応力を判断するのには使えますが、ロープレが有効に機能するためにはしっかりとした状況設定をすることが大切です。②役割設定メンバーの役割を決定します。最低でも次の4つの役割があります。進行係…ロープレ全体の進行(通常は研修担当者・インストラクター)お客さま役…状況設定に則ったお客さまになりきるスタッフ役…いつもの自分なりの接客ではなく、クラブとして求められるスReception研修技法 ロールプレイングを考える②◆ えもと・きよみ元株式会社ミズ・アビリティ代表取締役。日本産業カウンセラー。人材育成コンサルタント。スポーツクラブを中心にサービス業の「現場で活かすスキル」「自律型人材の育成」「コミュニケーション能力向上」「リーダー育成」「メンタルヘルス」「クレーム対応」「CS」などに関する研修・講演活動を展開。また顧客最前線のパート・アルバイトや一般社員の採用・面談・OJTも手がける。とくに受講者参加型の研修には定評がある。TEL:090-3160-9485E-mail:emoto@ms-ability.co.jpprofile元株式会社ミズ・アビリティの代表取締役であり、今春独立した接客のプロ、江本紀代美氏による連載。前号に引き続き、スタッフの接客方法の向上に効果的な研修のひとつ、ロールプレイングについて紹介する。正しく行わなければその効果は半減してしまう。ロールプレイングを成功させるためのポイントを述べる。フロント改革連 載 42江本紀代美
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