May-June 2012 ◎ Fitness Business 60151りもはるかに多くいることでしょう。あるクラブさまで調査したところ、年間総退会者数の7割前後が利用開始1年以内の会員でした。このことからも、利用開始1年目の継続率を高めることがどれほど重要なのかがわかります。このように、退会者数や退会率については、「月間退会者数・退会率」のみの把握ではなく、「年間退会者数・退会率」と「年間退会者数に占める利用開始1年以内の退会者数・退会率」についても管理することが大切です。おわりに本稿の最後に、国内外の様々なクラブにおける会員継続率の高いクラブが取り組んでいる特徴をまとめましたので参考にしていただければ幸いです。■会員継続率の高いクラブの特徴・経営理念の浸透とオーナー・マネ ジャーのリーダーシップと高いマネジメント力がある・会員継続の重要性を数字と状態とで理解して取り組んでいる・基本(QSC)が徹底されている・運動などの的確なサポート、初期定着&個別対応がなされている・スタッフと会員とのコミュニケーションと、会員同士の仲間づくりに熱心に取り組んでいる・人や設備などへ適切な投資を実施している・会員継続を前提とした入会促進への取り組みを行っている・変化に対応し続けている(常に未完成というコンセプト)「点の発想」から「線の発想」へ継続率の進捗管理を行うことで、クラブの現場スタッフの意識や行動がどう変わるのかといえば、「毎月の退会者や退会率を下げるにはどうすればいいか」という「点の発想」から、「どうなれば入会者に1年以上続けていただけるのか」という「線の発想」で運営を再構築(すなわち会員継続取り組み)していくようになります。「莫大な利益は『会員継続』から生まれる」ものです。真の意味で「継続を前提とした入会促進」「継続を前提とした運営」にシフトすることが今の時代の正しいあり方だと私は思います。その意味で、「点の発想」から「線の発想」へ意識と行動を変化させるとともに、羅針盤である継続率(と在籍期間の長さ)をいかに高めるかに注目していただきたいと思います。退会者数と退会率さて、会員継続視点で会員平均在籍月数や生涯価値、1年目の継続率に続いて重要な管理数値は、退会者数と退会率です。「いわれなくても管理しています」と思われているかもしれません。では、「1年間の退会者総数に占める、利用開始1年以内の退会者数とその割合はいくらですか?」という質問にあなたは即答できますか?ここは重要な点ですのでよくお聞きください。実際に算出すればすぐに実感できると思いますが、利用開始1年以内の退会者はあなたが思っているよれます。ちなみに、この数値管理を始めただけで意識と行動が変わり、継続率が上がった(退会率が下がった)クラブもあるほど重要な管理数値ですので、まだ実施していないクラブさまは直ちに実施されることをお薦めします。なお、1年目の継続率の算出方法は、「1年目終了時点の在籍者数÷利用開始者数×100」。例えば、2011年5月からの利用開始者が100名いて、’12年4月末時点の在籍者が50名だった場合、「50名÷100名×100」で1年目の継続率は50%となります。1年目の継続率管理が重要なわけでは、なぜ1年目の継続率が重要なのかをご説明します。まずは複数のクラブさまで調査検証済みのデータから、以下の重要な気づきをご紹介します。1.利用開始1年目の継続率よりも、利用開始13ヶ月から2年(24ヶ月)目の1年間の継続率のほうが高くなる。すなわち、1年継続してくれた会員は、そのあとの継続率は最初の1年目よりも高くなるということがわかる(この場合、2年間以上の継続率管理が必要)。よって、1年目の継続率を高めようという意識と行動意欲が生まれる。2.入会特典を強化する一方、在籍期間に3〜6ヶ月間ほどのしばり(途中退会の場合ペナルティ有)をつけて入会した人は、しばり明け後に退会が急増し、1年後の継続率はしばりをつけていなかった場合に比べて継続率が低くなりやすい(継続率の把握を3〜6ヶ月で終えると見えませんので、少なくとも1年間は継続管理が必要です)。3.(ある意味これが一番重要なポイントなのですが)会員継続率管理を始めたクラブの継続率は高まる(退会率が下がる)。マーケティング◆図 フィットネスクラブマーケティングの3つの領域◆表 継続期間と生涯価値継続期間生涯価値Aさん12か月12万円Bさん24か月24万円※月会費はともに1万円とする
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https://fitnessclub.jp/business/e-book/fb60/index.html#151