May-June 2012 ◎ Fitness Business 60145将来世代へ<利他の4項目>高齢者世代は、雇用の若者への禅譲、年金の減額、医療費の負担増額など、ありとあらゆる策で将来世代への利他を実現しなければ、その責任は果たせないと考える。1.雇用の若者への禅譲若者の失業率が高い。35〜44歳のフリーターは’11年平均で50万人を超える。大学卒就職内定率も80.5%と依然低い。無能な上司がポジションに居座り、次世代の邪魔をしているケースが多い。会社でも協会でも組織の管理職は、一刻も早く退き若返ることである。技術や能力のある人のみ別途再雇用すればよい。若者の職を奪うのは即刻やめよう。2.国の改革と消費税消費税のアップには国会と役所の一体改革が必要だが、政治家も官僚も何もしようとしない。議員数も歳費も半分にカットしてから消費税を上げれば納得しやすいが、身を切る改革はまったくやる気がない。政党間の争いも、実態は議員数の削減を引き伸ばしごまかすための時間稼ぎに過ぎない。国民はそんなことはお見通しだが、政治家のお粗末さはもう語る価値もない。3.社会保障改革社会保障改革の柱は、何といっても年金と医療費だ。年金は共済年金、厚生年金、国民年金を統合し、早期に共通年金にすることである。官僚や公務員は反対するだろうが、強引にでも早期に実行する必要がある。また、受給年齢の引き下げと金額の減額も避けて通れない。将来世代のことを考えたら、高齢者世代は利他の心をもって、我慢しなければならない。医療費負担は制限を設けなければ、青天井で増えていく。医療技術の進歩と高齢化によるコスト増加が、医療費の減額をますます許さない。長寿と命の尊厳は高額医療を果てしなく続けることになり、医療費はいくらあっても不足する。これを止めるには、受益者負担を増やすしかない。すべての健康保険で自己負担割合を50%まで増やすことを提案したい。高齢者に高額な一方で、高齢者のそれは31.6%から37.1%へと上昇している。こうした構図はエスカレートし、50年後には高齢者の相対的なパワーはさらに強まる。有権者数、投票者数のいずれにおいても過半数を超え、若年層の投票率が少しくらい向上しても情勢にはほとんど影響しない。50年前は若年層の人口は過半数に達し、高齢者は少数派だった。若年層の投票率も高く、若年層が実質的に政治を支配する「若者民主主義」の時代だった。つまりこの100年間は、日本の民主主義が若者から「老年民主主義」に移行する過渡期にあったといえる。利己主義から利他主義へ年齢構成が逆ピラミッド型になった生物は絶滅する運命にあるといわれる。では、この危機的状況から抜け出す方法はないものだろうか。小塩教授はこう述べている。「最も直接的な方法は、人々に将来世代に対する利他的な思いを強めてもらい、自らの利益の追求を弱めてもらうことである。つまり、人々の考えを政策によって利己主義から利他主義に転換してもらうことである」と。しかし、そう簡単な問題ではなく、実現性については自信がないともいっている。「現在の高齢世代の受取額のかなりの部分は、現在の若年世代が負担しているのではなく、将来世代に先送りされている。それは、バブル崩壊以降、高齢者向け社会保障給付の増加分を、税や社会保険料といった負担増で賄うことを総じて拒否し、赤字国債の発行に委ねるという選択をしてきたから」と小塩教授は重ねて指摘している。若者世代は年金裕福世代に対し憤っているのではないだろうか。高度成長時代を無為無策に過ごし、先のことを考えないでことごとく消費してしまった無責任世代だと。これからの高齢者世代は「利他主義」に徹しなければならないと思う。大切なのは、将来の若年層であり、未来の子どもたちである。自分たちの世代だけがよい思いをする「利己主義」を排さなければならない。医療を施すのは、将来世代に高額なツケを回すだけにほかならない。自分の命と子孫の命のどちらが大切か、高齢者は治療をすることが自分の家の借金を増やすことだと考えれば、どこまでが限度か的確な判断が下せるだろう。4.長寿と医療長野県は寿命日本一だが、医療費も日本一少ない。山紫水明、空気も水も景色もきれいで住むには最適だ。普段から地域密着の予防医療と、健康への関心の高さ、医療機関の献身的努力は長野モデルとして有名だが、昔から清貧で多少のことでは病院に行かず我慢強い県民性もある。有名なPPK(ピンピンコロリ)の提唱者である北澤豊治氏は、地域住民の日常の取り組みのなかからこの運動を考案したと聞く。「予防は治療に勝る」ことを証明している。将来世代への貢献百歳を超えて元気な方が多い。「百歳万歳」などの番組を見ていると、健康で自立した生活をしている方の生き方に感動する。日本は100歳以上の高齢者が’10年で4万4千人に達した。百歳の生存率が男性1.645%、女性7.037%のデータ(厚生労働省平成19年簡易生命表)からすると、団塊世代が百歳になる見込みは年間10万人にも達することになる。非常におめでたいことだが、我々が100歳になったとき、若者世代から真に祝福してもらえるだろうか。私には自信がない。また、私はいつも疑問に思うことがある。フィットネスクラブなどに通い、自ら投資して健康な身体づくりを心がけ医療費削減に努力する人と、高額医療をふんだんに使う人とどちらが社会や将来世代に貢献しているのだろうか。予防医療への取り組みは医療費削減に多大な貢献が期待できる。フィットネスクラブへの入会や継続に対し、その貢献度に応じ保険料など医療費負担の低減を図るべきであり、業界全体で強く働きかけるべきだと思う。将来世代のことを考えたとき、我々スポーツ・フィットネス業界の貢献こそ、利他の本質であると気づくべきであろう。事業の本質
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