Fitness Business 60 ◎ May-June 2012144団塊(だんかい)の世代新聞紙上をにぎわせているニュースのなかで、必ず出てくる言葉に“団塊の世代”がある。団塊の世代とは、昭和22年から24年までの3年間に生まれた806万人の戦後世代を指す。還暦を過ぎた今も670万人以上が存在し、社会的に大きな影響を与えている。堺屋太一氏が「団塊の世代」(文春文庫刊)を発表したのが1980年。その巻頭には次のように書かれている。「(前略)この“団塊の世代”は、過去においてそうであったように、将来においても数数の流行と需要をつくり、過当競争と過剰施設とを残しつつ、年老いて行くことであろう」これ以降、私を含めたこの世代はことあるごとに厄介者扱いされてきた。最近では、年金受給開始とともに「’12年問題」といわれている。今後急速に高まる高齢化社会には多くの問題が起こる。誰の目にも日本の財政や社会保障制度の行詰りは間近に見えている。人口減少日本の総人口は’05年をピークとして、減少へとシフトしている。’55年に8,927万人であった人口は、’05年には1億2,777万人にまで急増した。しかし、団塊世代がいなくなる2055年には8,993万人まで減少する見込みである(人口問題研究所推計より)。すなわち、’55年から100年の間に約3,800万人増え、ほぼ同じ数減るのである。一般的に人口増加は経済の発展をもたらすが、人口減少は国全体に衰退をもたらす。しかし、現実は100年かけて元に戻っただけであり、団塊世代が通過したに過ぎない。日本の国土は狭い。378千k㎡の国土はドイツよりやや広い程度であるが、’05年の人口密度は336人/k㎡とインド並であり、2055年で238人/ k㎡とようやくドイツ並みになる。しかし、山林が66%を占める日本は、実質の2055年平地人口密度は700人/k㎡と依然過密だ。日本の人口は高福祉政策の先進国である北欧に比べると、全国民を賄うには人口があまりにも多く、利用できる国土があまりにも狭い。若者民主主義から老年民主主義人口の高齢化が進むと、民主主義が機能不全に陥る。これを、一橋大学教授小塩隆士氏は「民主主義の生物学的限界」と呼んでいる。(日本評論社刊「効率と公平を問う」より)その著書から抜粋すると、民主主義は人口が増加していると若い世代が意思決定権をもつので、現在の世代の選択は将来世代の利害と一致する。しかし、人口が減少に転ずると、高齢者が意思決定権をもつので、将来世代が不利になる政策がとられる。つまり「将来世代の利益を考慮した制度改革を、民主主義の意思決定ルールが阻止する」のだ。実際、日本では若年層より高齢層の政治的な力のほうが強くなっている。年齢層を若年層(20〜39歳)、中年層(40〜59歳)、高齢層(60歳以上)の3つに分け、年代別に検証してみる。’09年を見ると、有権者の人口はほぼ1/3ずつで拮抗している。ところが、年齢が若いほど投票率が低くなるので、政治的なパワーの分布は異なる。若年層の比率は有権者数では33.9%であったのに、投票者数では26.9%まで低下している。そのEssence利他の基準スポーツビジネスアドバイザー◆さくらい・やすおスポーツビジネス アドバイザー、フィットネスビジネス編集部関西支局員、前・グンゼスポーツ株式会社社長。大学ではスポーツ社会学を専攻、グンゼ株式会社では人事、教育、営業を経験。スポーツマネジメント、経営戦略、店舗開発に多くの実績をもつ。E-mail:sakurai.840@aol.jp profileスポーツビジネスアドバイザー櫻井康夫氏による連載。今回は、これから高齢化していく日本社会において懸念される問題を挙げ、それらの解決にフィットネスが果たす役割の重要性を述べる。事業の本質連 載 15櫻井康夫
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