May-June 2012 ◎ Fitness Business 60141参加率をデータ化するということはあまり行っていません。その点、当社はたくさんの類似施設の生データを分析し、そこから当該地で営業した場合、フリー遊泳者数で年間何人、スクール催行で最大何人という積み上げで来場者数を算出して、正確な予測値として提案書に記載しています。当然のことですが収入も来場者数に単価を乗じたものを最大値として算出しているわけです。他社がほとんど目の子勘定で年間○○万人来場と提示しているのに対して、当社は葛飾区や印西市、横浜市などで導入したポイントカードにより、年間の利用頻度がわかるため、参加率×利用回数で来場者数が簡単に予測できます。加えて、自社で開発した「予約システム:すぐトレ.com」による申し込みデータを地図にプロットすることで、参加率を瞬時に表示するシステムを開発し活用しています。こうしたデータの収集力と分析力、応用力があるからこそ、来場者数の予測が正確にできるのです。特に利用者は頭数ではなく、純粋なリピーター数と考えるのが民間的な考え方ですが、まだ総人数で数える方式が自治体では一般的であることを考慮すると、来場総人数と来場回数、そしてリピーター数という指標が有効な事業提案の根拠となることがおわかりいただけると思います。結果、他社の提案に対して大きな優位性をもつこととなります。来場者数の基礎数値や地域性はいかに優秀なコンサルタントといえども算出するのは難しいと思います。このように当社は主要予測に大きなこだわりをもって提案書に記載しています。信頼増す、感度分析を加えた提案感度分析という言葉を聞いたことがあるでしょうか? 感度分析とは、ある指標の変化が最終結果にどのように影響を与えるかを明らかにすることです。例えば、スクールの集客率が何パーセントを切ったときに対策を講じるのかなど、どの指標で判断するかを論理的に説明するものです。結果、経営の安定性という面で高い得点が期待できます。例えば、売り上げ、費用、利益を考える際に、費用のなかでも固定費が5%上がった場合の利益、変動費が10%下がった場合の利益などを明らかにすることが感度分析の好例です。感度分析をすることで、環境変化により充足率や来場率などの指標が変化したことで、全体収益でどの程度の損失となるのか、提案した収支計画の乖離や利益ダウンを被るのか、あるいは予想外の利益がどの程度生まれるのかを定量化することが可能となります。これによって、不確実な売上計画に対し、具体的指標を提示し、下回った場合の対応策まで明示することができます。感度分析の一例として、売上高、固定費、変動費が変化した場合、利益にどのような影響を与えるか見てみましょう(数値は仮置きのものです)。まず、標準ケースとして売上高を2,000万円、固定費を300万円、変動費を1,200万円(売上高の60%)とします。この場合、利益は500万円です。ここで、各要素が-20%〜+20%の間で変動したとすると、利益はそれぞれ表のようになります。この感度分析からは、変動費の変化が最も利益を大きく左右し、固定費の変動による利益への影響が最も小さいことがわかります。スパイダーチャートによる 「見える化」提案書上で感度分析を視覚化して図にする場合の手段は、大きく2つあります。いずれも図を用いた分析法です。ひとつはスパイダーチャート、もうひとつはトルネードチャートです。次に、そのそれぞれについてご説明しましょう。1.スパイダーチャートスパイダーチャートとは、横軸に各要素の変動率、縦軸に影響をみたい結果をとったグラフのことです。要素をいくつか分析すると、くもの巣のようなグラフになることからスパイダーチャートと呼ばれています。グラフにすると一目瞭然で変動費の影響が大きいことがわかります。通常、スパイダーチャートでは、上下の変動率を20%としてグラフ化することが多いです。2.トルネードチャートトルネードチャートは、各要素の値を80%の確率で起こり得る範囲にした場合の最終結果に与える影響をみるためのグラフといえます。変動幅の大きいものから順に上から並べていくので、あたかも竜巻のようなグラフになることからトルネードチャートと呼ばれています。このように需要予測は、各社の実力を現すとともに、自治体への提案書に大きな影響を与えます。既存の運営業者が、限界まで集客をしているのか、それともまだ伸ばす余地があるのか、理論的に証明することができます。このような指標をもっているのが直営店舗や受託施設を多数運営している強みであり、店舗や施設をもたない企業の弱みといえます。エビデンス主義の大切さ指定管理者制度も具体的なエビデンスを求められるように高度な戦いを強いられるようになりました。これから応募しようとする企業は、事業計画が達成できる根拠の提示も大切なことですが、達成できなかったときにはどのような対策を講じるかも表現できなければ、勝利が遠のく状況になっています。いずれにしても、弛まぬ研究と実践が必要なことは直営、指定管理を問わずいえることです。今回は、需要予測の大切さと提案書に占める大切さについて述べました。就業管理システムの開発と 新分野への挑戦次回は、新たに開発した就業管理システムの概要とスポーツ施設以外にも応募しようと目論む住友不動産エスフォルタの新たな挑戦について記したいと思っています。どうぞご期待ください。指定管理実務
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