May-June 2012 ◎ Fitness Business 60139指定管理者制度盛り込んだチラシを作成し、近隣の公の施設に置かしてもらうとともに、施設周辺の住民に個別配布するとよいであろう。また、ポスターについては、駅や近隣施設など、人の集まる場所に掲示すると効果的である。(4)コミュニティ紙の作成最近はインターネットが浸透し、紙媒体はweb媒体に押され気味のご時勢であるが、施設の利用者はもとより、施設で働く職員・スタッフの紹介や関連する様々な記事を掲載していくことは、双方向のコミュニケーションを生み出すとともに、職員・スタッフのモチベーションの向上にもつながるであろう。(5)パブリシティパブリシティとは、各種メディアに情報を提供し記事として取り上げてもらう活動を意味する。施設で行われる競技会や大会、イベントなどの情報を、地域の新聞社、テレビ、ラジオなどの各種メディアに対し、積極的に提供していくことで、地域住民への情報発信につなげるとよい。AIDMAモデルの考え方を 取り入れた仕組みづくりAIDMA(アイドマ)とは、「注目(Attention)」→「興味(Interest)」→「欲求(Desire)」→「記憶(Memory)」→「行動(Action)」という5つのプロセスの頭文字を取ったもので、米国で提唱された広告宣伝に対する消費者の購買心理プロセスを表したものである。AIDMAモデルでは、大きくは「注目」が“認知段階”、「興味・欲求・記憶」が“感情段階”、「行動」が“行動段階”の3つに分かれ、それぞれのプロセスに合った利用者とのコミュニケーションを重視してマーケティング戦略を立てるために活用される。なお、近年では、AIDMAモデル以外にも、プロモーション戦略に活用されているものとして、「AIDA(アイダ)モデル」「AIDCA(アイドカ)モデル」「AIDAS(アイダス)モデル」なども提唱されている。P138図3にAIDMAモデルの考え方を取り入れたプロモーション活動のプロセスを示す。公の施設においても、継続的で一貫性のある広報・宣伝・PR活動を戦略的かつ効果的に展開していく必要がある。(1)注目(Attention)まず、対象となる施設のことを知らない地域住民に、チラシやポスターなどを通じて施設の存在を知ってもらい、注目を得る必要がある。(2)興味(Interest)どんな施設なのか、どのようなことをしているのか、施設の特徴や内容、利用方法などを、リーフレットを作成・配布し、教室事業やイベントなどの紹介を通じて、興味や関心をもってもらう。(3)欲求(Desire)地域住民が、行ってみたい、やってみたいと思った際に、すぐに情報が入手できるような独自のホームページを制作して情報を公開しておく。(4)記憶(Memory)施設イメージや利用内容を記憶にとどめてもらうため、ホームページはリアルタイムで更新し、常に新鮮な情報を提供する。(5)行動(Action)実際に行動を起こした利用者に対し、相談コーナーの設置や体験型プログラムなどを提供することにより、利用者にとっての価値の創造と満足度の向上を図る。公の施設のもつハブ機能と 施設の有効活用マーケティングの権威であるアメリカのフィリップ・コトラーは、顧客がなぜ商品やサービスを買うのかについて、「便益の束」という概念を提唱している。「便益の束」とは、顧客がある商品やサービスを買う目的は、サービスそのものだけとは限らず、商品やサービスがもたらす様々な価値を「一つの束」として買うのであり、総括的に捉えていこうとする考え方である。マーケティング学者のセオドア・レビットは「顧客はドリルが欲しくて買いに来たのではなく、『穴』が空けたいのだ」と言っている。資生堂名誉会長の福原義春氏も、「お客さまは化粧品を買うのではなく『きれいになること』を買うのだ」と、同様のことを言っている。さらに、最近では、アップルのCEO(最高経営責任者)であったスティーブ・ジョブズ氏も、「製品を売るな。夢を売れ」という有名な言葉を残している。すなわち、顧客は商品やサービスそのものを買いたいというよりも、その先にある価値を求めているとする考え方である。弊社では、この「便益の束」の考え方を踏まえ、長年にわたって、公の施設には、いわば人と人、人と地域をつなぐ“ハブ”のような機能があり、施設本来の設置目的を果たしていくとともに、地域の様々な課題解決に向けたまちづくりの拠点としての有効活用を図っていく必要があると唱えてきた。すなわち、図4に示すように、公共スポーツ施設において、利用者はスポーツを実践しに来ただけでなく、交流・情報・相談・人材・場所などの機能も望んでいると捉えている。そして、施設を中心に、「人と人」、「人と地域」をつなぎ結びつける「ハブ」のような機能を発揮することで、地域の様々な課題解決に向けた、まちづくりの拠点となるような管理運営が求められていくのではないだろうか。◆図4 公共施設が備える機能
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