135May-June 2012 ◎ Fitness Business 60Leadershipの理念は、自分たちの仕事によってクライアント、お客さま、モニターに貢献することです。従業員が、自分の仕事が役立っていると感じることができるような経営に変えていきました。すると、自然と事業がうまくいくようになったのです。―なぜマネジメント方針を切り替えることができたのですか。どん底まで落ちたからではないでしょうか。会社のなかでも一番離職率が高く、過酷な部署でした。そして業績もなかなかよくなりません。ただ、事業立ち上げからのメンバーだったのでなんとかかたちにしたいという使命感はありました。必死で勉強するうちに、これではいけないと気づき、従業員の働き甲斐を中心とした経営にするにはどうしたらよいかを追求していきました。そして、自発的に動けるように任せるマネジメントにすることにしたのです。―任せることに不安はありませんでしたか。もちろん最初はありました。うまくいくようになるまでは時間もかかりましたし、たいへんなこともありました。でも、社員がどんどんやる気になっていく様子がわかるのです。人が育っていくんですね。組織は変わるのだということを、身をもって感じました。今はクライアント、ミステリーショッパーにご協力いただいているモニターの方々のために行動してくれる社員がたくさんいます。「自ら考えて行動するように」とはいつも伝えています。このときの経験があるから、「従業員感動満足度が上がらないと顧客感動満足度が上がらない」ということをクライアントに自信をもって言えるのです。いい会社は、従業員の表情がいきいきしているんですね。―どうしたら自発的に行動できる社員を育てることができるのですか。私たちは、主役は常に部下の立場の者としています。がんばっている社員を信じて、彼らが舞台の上で輝けるように、その舞台をつくるのがリーダーの役目だと考えているのです。会議の場でも、常に議論の中心には部下がいるようにしています。部下は部下で、自ら行動を起こさなければ仕事がこないので、主体性をもてる風土になります。大切なのは、信頼することですね。その基盤として、経営理念をしっかり教育することが重要です。その理念に沿って行動していれば間違っていないだろうというスタンスです。―今後のビジョンはどのように考えていますか。私たちは「精神的に豊かな社会の創造」を理念として掲げています。精神的に豊かな社会をつくることで、日本のサービス業界発展をサポートしていきたいと思っています。サービス業で働く人たちの働き甲斐が向上して、それによってお客さまも幸せになるといった好循環が生まれる企業を増やしていきたいです。また、日本のサービス業はこれからどんどん海外進出もしていくでしょう。海外のモニターによる調査も進めていきたいですね。これらを実現するためには、私たち自身が強靭化していかなければいけません。企業として生産性を高め、安価でサービスを提供できるようにすることが今期の目標です。―最後に、フィットネス業界のミステリーショッパーを行っていて、今後の可能性についてどう思われますか。フィットネス業界を見て最初に思ったのは、すばらしい業界だということです。フィットネス業界で働いている従業員の方は皆、「お客さまの健康、体力づくりの役に立ちたい」と、明確な目的をもって働いています。これは、ほかのサービス業とは大きく異なる点です。彼らのやる気を惹き出す経営をすることが課題だと思います。業界が伸びていないのは、現場と経営、それぞれに理由があると思います。現場は、次の3つがそろうとよくなります。1つ目は従業員がお客さま思いであること、2つ目はチームワークがよいこと、3つ目は信頼できる上司がいることです。まずはこの3つができるように現場の従業員が努力し、このような環境が整いやすい仕組みや教育制度をつくることです。この3つができていても業績が伸びない場合は、経営戦略を見直す必要があるでしょう。健康に興味がある人は確実に増えているので、それでも事業が伸びないのであれば、業態そのものがニーズに対応できていないということです。その場合は、よりニーズを捉えられる業態にするためのイノベーションを起こしていくことが必要だと思います。ホスピタリティによる従業員感動満足、顧客感動満足の実現法をやさしく解説した1冊。お客さまの声をどう経営に取り入れるかについて、10年以上にわたり培ってきたノウハウや考え方を公開。商業界刊/1,500円「こうすれば顧客満足を超える店になる」
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