May-June 2012 ◎ Fitness Business 60133Specila Interview事に活かせるのは幸せなことです。―これまでの経験や生まれつきの感性などを活かして、将来はどんなことを展開していこうと考えているのですか?江本:人材育成です。人を楽しませる・人に喜んでいただくことの素晴らしさを現場の皆さんにお伝えできればと思います。接客やコミュニケーション、顧客満足やサービスの研修が中心となると思いますが、ホスピタリティを本当に大切にしたいと考えている企業さまとともに、採用から教育研修、人事評価までトータルにサポートさせていただけたらと思っています。研修・教育も必要ですが、社内環境はもっと重要です。人が育つ・人を育てる仕組みを創らなければ、現場最前線のサービス品質を一定レベルに維持することはできないと思います。ましてやお客さまが感動するようなホスピタリティの提供は望むべくもないでしょう。―現状のフィットネスクラブに経営・運営面上の問題点があるとすれば、それはどんなところだと思いますか。江本:企業さまやクラブによって事情は異なると思いますが、最前線のスタッフが頑張っているのに報われないと感じる、または、何を頑張れば成果につながるのかわからない、という構造ではないでしょうか。これは、根本的にビジネスモデルの問題もあるかもしれませんが、リーダーシップという点で問題があるケースも見受けられます。例えば、部下が素晴らしい顧客対応をしたときに、上司や会社が認め賞賛するといったモチベーション管理ができていないなどのケースです。こうしたことが続くと、ホスピタリティ精神の高い優秀なスタッフほど離職していきます。それを補うためにまた求人を出し、採用・教育をし、また早期退職、求人…とマイナスのスパイラルにはまってしまう。これでは顧客価値を高めることもできません。―では、どうすればこうした問題点を解決していけると思いますか?江本:お客さまから「ありがとう」というお言葉をスタッフがたくさんいただける仕組み、仕かけをもっとつくっていくことが必要になると思います。本来、この職業の醍醐味はここにあるはずです。お客さまや上司から「認められている」「必要とされている」「信頼されている」という実感がモチベーションを高め、現場がいきいきと仕事をしていけるようになると思います。これにはもちろん上司のリーダーの気づき、スタッフへの教育も重要になります。―お客さまの「ありがとう」というその言葉に、トレーナーやインストラクターはものすごいやりがいを感じますよね。江本:そうなのです。これまで泳げなかった方が泳げるようになる。ずっと悩まされた肩や腰の痛みがよくなった。こうしたお客さまはたくさんいらっしゃいます。先日は、心臓手術を受け、普通の生活ができないと思っていた70歳代の男性のお客さまに会いました。この方は術後、スポーツクラブに毎日のように通われて、トレーナーのサポートを受けながら運動して元気になりました。今では「こうして動けて、おいしいものも食べられて幸せだ」とおっしゃられていました。こうした会員さまの感謝の声が直接トレーナー・インストラクターに届くことで、この仕事の必要性ややりがいを感じ、よりモチベーション高く働くことができるようになるのです。―人的な問題点以外で、これからフィットネスクラブの課題となるだろう点として意識しているところはありますか?江本:高齢化と混雑化です。高齢化という面では安全性の確保は当然ですが、利便性の向上ということをもっと考えることが必要です。混雑化という面では、お客さまに来館しなくても、何らかのかたちで“クラブとつながっている”と実感していただけるような取り組みも必要ですね。例えば、自宅や出張先でもクラブのサポートを受けられるシステムや、クラブ外でのコミュニティやイベントへの参加などでしょうか。―サービスやホスピタリティの改革は一朝一夕ではいきそうもないですね。江本:そうですね。もちろん一朝一夕とはいきません。しかし、目先の事柄だけに捉われず、しっかりした軸をもって、地道な取り組みを積み重ねることで可能となるはずです。―これから5〜10年後のフィットネス業界がどうなっていくか、予想してもらえますか?江本:クラブは二極化していくと思います。大きく分けると、低価格で施設提供型のタイプと、そこそこの料金を設定してコンセプチュアルでサービス志向の高い価値提供型のタイプとの2つに分かれていくと思います。―今後の抱負や決意をお聞かせいただけますか?江本:提供するサービスにブレない軸をもつこと。現場のスタッフが仕事に誇りをもつこと。お客さまの心に寄り添うコミュニケーション・サービスを実践する人財を育てること。それらによって、お客さまから「ありがとう」という言葉がたくさんいただけるスタッフ、心から感謝されるクラブ創りに力を注いで参ります。―これからますますのご活躍を期待しています。陰ながら、精一杯応援させていただきます。特別インタビュー
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